やはり俺とこのダンジョンは間違っている 作:ばーたるゃん
「...」
作戦が始まった。
「......よし。」
裏手から、ヘスティアさんを背負って侵入する。
「...」
別に、やましいことなど考えてない。考えてない...考えない、よし。
落ち着いて、目的の場所へ。
格子がはめ込まれた穴を見つけた。
「んじゃ、頼みます。」
「あぁ。 ――サポーター君!」
「! ヘ、ヘスティア...様...?」
ここで当たりだったようだ。
「僕らには、君が必要だ! だから!」
その声に、誰かが駆けつけるより先に、地面を踏みぬいた。
「――、...?」
落ちた先に、団員は...当たり前だが、そこにいた。
「...離れた隙に逃げられたみたいだな。」
「!」
魔法の効果中にリリルカを回収し、ヘスティアさんの元へ戻り、小脇に抱える。
「――、ッ!」
地面を蹴って、塔の窓へ。
「ッ、がぁ...っ!?」
届かない、あと...数M...!
とっさの判断で、二人を投げ込んだ。...後は信じるしかない。ザニスさえ抑えれば、問題ないだろう。
「―――――――――。」
...まぁ、そもそも、だ。神に手出しできる者はいない。なら、そちらは任せていい。 俺の直接交渉すら、必要なくなった。 あいつが、自力で行う。
そう信じて、地面へ視線を向けた。
「...ッ!」
女神とともに、階段を駆け上がる。
必要だと、この神に言われた。そして――。
『裏切るなよ。』
信頼、されたのだ。だからこそ、その言葉だ。裏切られてきた、裏切ってきた自分に、それは突き刺さる。突き刺してきた。
背中を押すのに使う言葉がそれだとは、なんともまぁ、彼らしいじゃないか。あとで笑い飛ばしてやろう。自分のこれまでとともに。
「ッ、貴様...!」
「あきらめたとでも、思ったのかよ。」
嫌われることに関しては誰よりも得意だという自信がある、だから、目いっぱい言葉を発する。
「酒の飲みすぎで頭も発行してんじゃねぇのか? あぁいや、聞いてもわからねぇよな。」
剣を取り出し、襲い掛かってきた。
「ッ!」
回避する。そして、その匂いが鼻孔に届いた。
「――ぁ、ぐ...っ!」
距離をとる。
「クッ...ハッハッハハッハハハハハ!」
「はッ...はぁっ...!」
一瞬、その匂いを嗅いだだけでもすさまじい効力だ。だが――。
「...ふぅ。」
踏み込む。
「な――、馬鹿、なッ!?」
神酒をちらつかせ、勝利を確信していたその男、ザニスに驚愕が走る。
――対策に、俺は...常に黒歴史を思い出している。嫌な思い出というものは忘れないもので、まぁ、これが聞いた。
高揚感は無かった。それに気づいて、もう効かないと確信した。
寸前にまで迫った敵の足を払う。 以前...人を相手にしたときは、この世界の生について、今いち理解ができてなかったが、今ならわかる。
払って浮いた体を一振りで吹き飛ばす。
「......」
終わった。 ...追いかけて、上に行くとしよう。
「...おお。」
その状況と、外の喧騒が止んだのを聞いて、状況は大体理解した。
「八幡様。」
「...なんだよ。」
「カッコつけて言った言葉がアレとは...やっぱり、素直じゃありませんね! ええ! 絶対に! 裏切りませんよ!」
飛び切りの笑顔で、俺にそう言った。――そして、しまった、と。
急いでいると、そんなことを口走ってしまう......いや、マジやめて、ニマニマしないで!
「...お、おう...」
達成感よりも、羞恥心が強くてたまらなかった。
...ミスった...
次回、明日19:00
『準備期間③』