やはり俺とこのダンジョンは間違っている   作:ばーたるゃん

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準備期間②

 

 

「...」

 作戦が始まった。

「......よし。」

 裏手から、ヘスティアさんを背負って侵入する。

「...」

 別に、やましいことなど考えてない。考えてない...考えない、よし。

 落ち着いて、目的の場所へ。

 格子がはめ込まれた穴を見つけた。

「んじゃ、頼みます。」

「あぁ。 ――サポーター君!」

「! ヘ、ヘスティア...様...?」

 ここで当たりだったようだ。

「僕らには、君が必要だ! だから!」

 その声に、誰かが駆けつけるより先に、地面を踏みぬいた。

「――、...?」

 落ちた先に、団員は...当たり前だが、そこにいた。

「...離れた隙に逃げられたみたいだな。」

「!」

 魔法の効果中にリリルカを回収し、ヘスティアさんの元へ戻り、小脇に抱える。

「――、ッ!」

 地面を蹴って、塔の窓へ。

「ッ、がぁ...っ!?」

 届かない、あと...数M...!

 とっさの判断で、二人を投げ込んだ。...後は信じるしかない。ザニスさえ抑えれば、問題ないだろう。

「―――――――――。」

 ...まぁ、そもそも、だ。神に手出しできる者はいない。なら、そちらは任せていい。 俺の直接交渉すら、必要なくなった。 あいつが、自力で行う。

 そう信じて、地面へ視線を向けた。

 

 

「...ッ!」

 女神とともに、階段を駆け上がる。

 必要だと、この神に言われた。そして――。

『裏切るなよ。』

 信頼、されたのだ。だからこそ、その言葉だ。裏切られてきた、裏切ってきた自分に、それは突き刺さる。突き刺してきた。

 背中を押すのに使う言葉がそれだとは、なんともまぁ、彼らしいじゃないか。あとで笑い飛ばしてやろう。自分のこれまでとともに。

 

 

「ッ、貴様...!」

「あきらめたとでも、思ったのかよ。」

 嫌われることに関しては誰よりも得意だという自信がある、だから、目いっぱい言葉を発する。

「酒の飲みすぎで頭も発行してんじゃねぇのか? あぁいや、聞いてもわからねぇよな。」

 剣を取り出し、襲い掛かってきた。

「ッ!」

 回避する。そして、その匂いが鼻孔に届いた。

「――ぁ、ぐ...っ!」

 距離をとる。

「クッ...ハッハッハハッハハハハハ!」

「はッ...はぁっ...!」

 一瞬、その匂いを嗅いだだけでもすさまじい効力だ。だが――。

「...ふぅ。」

 踏み込む。

「な――、馬鹿、なッ!?」

 神酒をちらつかせ、勝利を確信していたその男、ザニスに驚愕が走る。

 ――対策に、俺は...常に黒歴史を思い出している。嫌な思い出というものは忘れないもので、まぁ、これが聞いた。

 高揚感は無かった。それに気づいて、もう効かないと確信した。

 寸前にまで迫った敵の足を払う。 以前...人を相手にしたときは、この世界の生について、今いち理解ができてなかったが、今ならわかる。

 払って浮いた体を一振りで吹き飛ばす。

「......」

 終わった。 ...追いかけて、上に行くとしよう。

 

 

「...おお。」

 その状況と、外の喧騒が止んだのを聞いて、状況は大体理解した。

「八幡様。」

「...なんだよ。」

「カッコつけて言った言葉がアレとは...やっぱり、素直じゃありませんね! ええ! 絶対に! 裏切りませんよ!」

 飛び切りの笑顔で、俺にそう言った。――そして、しまった、と。

 急いでいると、そんなことを口走ってしまう......いや、マジやめて、ニマニマしないで!

「...お、おう...」

 達成感よりも、羞恥心が強くてたまらなかった。

 ...ミスった...

 




 次回、明日19:00
   『準備期間③』

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