やはり俺とこのダンジョンは間違っている 作:ばーたるゃん
「「戦争遊戯だ。」」
その声と同時に、会場が沸き上がった。
「...」
絶望に目の色を変える八幡が、そこで立ち尽くしている。
「八幡。」
「......ベル。」
「必ず、勝つ。」
「...ハ、ハハ。無理言うなよ、おい。 中堅と弱小だぞ! ファミリアで最強のお前がまず、あの男に及ばない! 俺を、犠牲に......して、くれれば............いや、そうだよな、お前らには、無理な話だ。」
若干つかみかかりそうになったその手を落とし、崩れる。
「......いいのか、ベル。」
「あぁ。それに、僕の今後もかかってるし。」
「......そうか、それを言われたら...俺も、やるしかねぇ。 自分のやったことだ。」
「最後まで付き合うよ。」
「...おう。」
――と。体が、床に。
「......八幡?」
八幡が、倒れた。
「...ッ、八幡ッ!!」
「ベル君!こっちだ!」
「! はいッ!」
その力の抜けた体を背負って、ヘルメス様のほうへついていく。
「はぁっ、はぁっ...! ...いやー、大変なことになったもんだ。」
「...はい。」
「ベル君、少なくとも僕にもわかる。八幡君は、いつもと――」
「はい、違います。」
様子が明らかにおかしかった、と、いうことは...
「多分、操られてる。 そういう魔法は...ないことにもないだろうけど...これは多分...酔わされている。」
「...お酒、ですか?」
「俺はその酒を探る。アスフィ。」
「はい。」
と、アスフィさんが神様を会場から連れ出してきていた。
「っ、八幡君は!?」
「操られてたんだろう。八幡君本人が、事件を起こしたと思い込まされている。」
「...やっぱりそうか、ありえないと思ったんだ。 ...だけど、もう決まった。」
「あぁ。もう変えようはない。」
「覚悟は、決めた。ベル君。」
「...はい。僕もです。」
「二人とも。」
「...あぁ。俺もヘルメス様からアイツの状況は聞いた。今は?」
「まだ。」
「そうか。」
「......嵌められましたね。八幡様を狙ったのは...あの厄介さに気付いている証拠です。」
「...となると、限られてくるな。」
「えぇ。...少し場所を移して話しましょう。」
「......どう、なって......。 ...あ? なんでお前ら...」
「おい、何があったか覚えてるか、特に昨日。」
「...昨日だ? ...確か......迷宮で......そうだ、ザニスとかいう男に...いや、それはもう少し――。」
「ここか? リリルカ・アーデ。」
「...ッ!!」
「来ると思ってたぞ。」
その男は――、ザニス。あの、ファミリアの団長だ。
「ッ...ザニス...様...」
「おおっと、抵抗するな。 ...それはお門違いだろう? 大事な仲間だろう?」
「――ッ。」
「まぁ、その仲間がお前のことを教えてくれたんだがな。」
「...何の、つもりですか。」
「戻って来い、アーデ。そうすれば俺たちはこれ以上の関与はしない。」
神ヘスティア、愛しの少年、鍛冶師。そして...後ろで、ザニスをにらむ、腐れ目の男を見て――。逆らうことは、できなかった。
「...わかりました。」
この男のことだ、逆らえば、確実につぶしに来るだろう。
一度、振り返る。...そこでは、腐れ目が、3人を手で制し、こちらを見据えていた。
「...」
「行くぞ。」
「...はい。」
「――八幡ッ!」
「...今のは、見逃すべきだった。」
「ッ、お前...!」
胸ぐらを、つかまれる。
意識がはっきりしてきて、何があったのかも思い出した。
「...戦争遊戯......だろ。...奴らのでっち上げに嵌められた。 ......おい、離せ。 話すのもだりぃ。」
「...お、おう。」
「...悪い。俺の不注意と不手際だ。付け入るスキを与えた。」
「そんな、八幡のせいじゃ――」
「...神酒を使われた。もともとこの件に、ソーマファミリアも絡んでた...と、見ていいはずだ。」
酔わされていた、ということだろう。...今は、なんともないが...その酒を、目の当たりにしたときどうなるかはわからない。
「計画されてたことだ。おそらく最初はあの酒場で。失敗して、行方が分かりやすい俺を狙ったんだろう。」
今回の条件の、ベルの改宗...これが一貫した目的だ。では、そうさせないためには...まぁ、勝てばいいわけだ。
「...ベル、ロキファミリアへ行け。これ以上言わなくても、わかるな? ...あぁ、あとそれと。そのナイフ、貸してくれ。」
「わかった。」
ベルが、飛び出していった。これで...断られるようなら、また別の手を探すしかないが。
「...んで、お前は魔剣だ。」
こちらの都合を押し付ける。この場にいる時点で、それを引き受けないのは...まず、ありえない。
「あぁ、だろうとは思ったが。」
「作れるだけ作ってくれ、リリルカの件は、俺と、ヘスティアさんで何とかする。」
「...あぁ、任せたからな? この魔剣代はツケにしといてやる。」
「はっはっは、...まけてくれ。」
ヴェルフが出ていく。
「...ふぅ。」
とっさに出たのはこの二つだ。あの二人の力を活用するならば、この二つが絶対に、役に立つ。
「ヘスティアさん、この状況で協力してくれそうなところに心当たりは。」
「タケのところにミアハ...ヘファイストスは...難しいか...」
「じゃあ、依頼をお願いします。目的は――」
「俺達の仲だろう、ヘスティア。」
「そのとおりだ。俺もできる限りの協力をしよう。それで...作戦は。」
ミアハとタケに協力を頼んで、まず、第一段階は成功した。
「ありがとう! 戦力はできるだけ多い方がいい。作戦だけど、説明はウチでするよ。八幡君が練ってくれている。」
「作戦決行は明日、協力してもらってる身で悪いが、粉骨砕身手伝ってもらう。断ってもらって構わない。その分全体に仕事が増えるが。」
無かった手札を無理やりとってきて増やし、使用する。
「場所は、ソーマファミリアの酒蔵だ。調べた結果、そこにアイツはいる。」
アイツの力が必要だ。それがなければ、この戦争遊戯に勝利することはかなわない。
「お前らには正面から攻めてもらう。...アフターケア、その後のソーマファミリアとのわだかまりは完全に解消する。」
主神は、男神ソーマ。...直接、交渉する。そのためにも俺は...勝たなければならない。 あの誘惑に。そして、アフターケアについては、必ず行うことになるだろう。
「...」
そればっかりは、アドリブだが。
「...頼む。」
土下座する。極東の奴らならば、このすさまじさがわかるだろう。俺の、この、ポーズの。
...ただのポーズだ。これで何か変わるなら、躊躇はいらない。
ヘスティアファミリアの勝利、それが...俺の勝利だ。
「...わかった。だが比企谷。...戦争遊戯、勝率はあるんだろうな。」
「あぁ。それについては...まだ、やれることがある。」
次回、明日19:00
『準備期間②』