やはり俺とこのダンジョンは間違っている   作:ばーたるゃん

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準備期間①

「「戦争遊戯だ。」」

 

 その声と同時に、会場が沸き上がった。

「...」

 絶望に目の色を変える八幡が、そこで立ち尽くしている。

「八幡。」

「......ベル。」

「必ず、勝つ。」

「...ハ、ハハ。無理言うなよ、おい。 中堅と弱小だぞ! ファミリアで最強のお前がまず、あの男に及ばない! 俺を、犠牲に......して、くれれば............いや、そうだよな、お前らには、無理な話だ。」

 若干つかみかかりそうになったその手を落とし、崩れる。

「......いいのか、ベル。」

「あぁ。それに、僕の今後もかかってるし。」

「......そうか、それを言われたら...俺も、やるしかねぇ。 自分のやったことだ。」

「最後まで付き合うよ。」

「...おう。」

 ――と。体が、床に。

「......八幡?」

 八幡が、倒れた。

「...ッ、八幡ッ!!」

「ベル君!こっちだ!」

「! はいッ!」

 その力の抜けた体を背負って、ヘルメス様のほうへついていく。

「はぁっ、はぁっ...! ...いやー、大変なことになったもんだ。」

「...はい。」

「ベル君、少なくとも僕にもわかる。八幡君は、いつもと――」

「はい、違います。」

 様子が明らかにおかしかった、と、いうことは...

「多分、操られてる。 そういう魔法は...ないことにもないだろうけど...これは多分...酔わされている。」

「...お酒、ですか?」

「俺はその酒を探る。アスフィ。」

「はい。」

 と、アスフィさんが神様を会場から連れ出してきていた。

「っ、八幡君は!?」

「操られてたんだろう。八幡君本人が、事件を起こしたと思い込まされている。」

「...やっぱりそうか、ありえないと思ったんだ。 ...だけど、もう決まった。」

「あぁ。もう変えようはない。」

「覚悟は、決めた。ベル君。」

「...はい。僕もです。」

 

 

 

「二人とも。」

「...あぁ。俺もヘルメス様からアイツの状況は聞いた。今は?」

「まだ。」

「そうか。」

「......嵌められましたね。八幡様を狙ったのは...あの厄介さに気付いている証拠です。」

「...となると、限られてくるな。」

「えぇ。...少し場所を移して話しましょう。」

 

 

「......どう、なって......。 ...あ? なんでお前ら...」

「おい、何があったか覚えてるか、特に昨日。」

「...昨日だ? ...確か......迷宮で......そうだ、ザニスとかいう男に...いや、それはもう少し――。」

「ここか? リリルカ・アーデ。」

「...ッ!!」

「来ると思ってたぞ。」

 その男は――、ザニス。あの、ファミリアの団長だ。

「ッ...ザニス...様...」

「おおっと、抵抗するな。 ...それはお門違いだろう? 大事な仲間だろう?」

「――ッ。」

「まぁ、その仲間がお前のことを教えてくれたんだがな。」

「...何の、つもりですか。」

「戻って来い、アーデ。そうすれば俺たちはこれ以上の関与はしない。」

 神ヘスティア、愛しの少年、鍛冶師。そして...後ろで、ザニスをにらむ、腐れ目の男を見て――。逆らうことは、できなかった。

「...わかりました。」

 この男のことだ、逆らえば、確実につぶしに来るだろう。

 一度、振り返る。...そこでは、腐れ目が、3人を手で制し、こちらを見据えていた。

「...」

「行くぞ。」

「...はい。」

 

 

「――八幡ッ!」

「...今のは、見逃すべきだった。」

「ッ、お前...!」

 胸ぐらを、つかまれる。

 意識がはっきりしてきて、何があったのかも思い出した。

「...戦争遊戯......だろ。...奴らのでっち上げに嵌められた。 ......おい、離せ。 話すのもだりぃ。」

「...お、おう。」

「...悪い。俺の不注意と不手際だ。付け入るスキを与えた。」

「そんな、八幡のせいじゃ――」

「...神酒を使われた。もともとこの件に、ソーマファミリアも絡んでた...と、見ていいはずだ。」

 酔わされていた、ということだろう。...今は、なんともないが...その酒を、目の当たりにしたときどうなるかはわからない。

「計画されてたことだ。おそらく最初はあの酒場で。失敗して、行方が分かりやすい俺を狙ったんだろう。」

 今回の条件の、ベルの改宗...これが一貫した目的だ。では、そうさせないためには...まぁ、勝てばいいわけだ。

「...ベル、ロキファミリアへ行け。これ以上言わなくても、わかるな? ...あぁ、あとそれと。そのナイフ、貸してくれ。」

「わかった。」

 ベルが、飛び出していった。これで...断られるようなら、また別の手を探すしかないが。

「...んで、お前は魔剣だ。」

 こちらの都合を押し付ける。この場にいる時点で、それを引き受けないのは...まず、ありえない。

「あぁ、だろうとは思ったが。」

「作れるだけ作ってくれ、リリルカの件は、俺と、ヘスティアさんで何とかする。」

「...あぁ、任せたからな? この魔剣代はツケにしといてやる。」

「はっはっは、...まけてくれ。」

 ヴェルフが出ていく。

「...ふぅ。」

 とっさに出たのはこの二つだ。あの二人の力を活用するならば、この二つが絶対に、役に立つ。

「ヘスティアさん、この状況で協力してくれそうなところに心当たりは。」

「タケのところにミアハ...ヘファイストスは...難しいか...」

「じゃあ、依頼をお願いします。目的は――」

 

 

「俺達の仲だろう、ヘスティア。」

「そのとおりだ。俺もできる限りの協力をしよう。それで...作戦は。」

 ミアハとタケに協力を頼んで、まず、第一段階は成功した。

「ありがとう! 戦力はできるだけ多い方がいい。作戦だけど、説明はウチでするよ。八幡君が練ってくれている。」

 

 

「作戦決行は明日、協力してもらってる身で悪いが、粉骨砕身手伝ってもらう。断ってもらって構わない。その分全体に仕事が増えるが。」

 無かった手札を無理やりとってきて増やし、使用する。

「場所は、ソーマファミリアの酒蔵だ。調べた結果、そこにアイツはいる。」

 アイツの力が必要だ。それがなければ、この戦争遊戯に勝利することはかなわない。

「お前らには正面から攻めてもらう。...アフターケア、その後のソーマファミリアとのわだかまりは完全に解消する。」

 主神は、男神ソーマ。...直接、交渉する。そのためにも俺は...勝たなければならない。 あの誘惑に。そして、アフターケアについては、必ず行うことになるだろう。

「...」

 そればっかりは、アドリブだが。

「...頼む。」

 土下座する。極東の奴らならば、このすさまじさがわかるだろう。俺の、この、ポーズの。

 ...ただのポーズだ。これで何か変わるなら、躊躇はいらない。

 ヘスティアファミリアの勝利、それが...俺の勝利だ。

「...わかった。だが比企谷。...戦争遊戯、勝率はあるんだろうな。」

「あぁ。それについては...まだ、やれることがある。」

 

【挿絵表示】

 

 




 次回、明日19:00
    『準備期間②』

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