やはり俺とこのダンジョンは間違っている   作:ばーたるゃん

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酔いと神の宴

 

「へぇ、そんなことが...主神はともかく子供はまともみたいだね、アポロンのところは。」

 ベルと帰り際にギルドへ寄って、ヒュアキントスという名を調べてもらった。アポロンファミリア団長、Lv.3の第二級冒険者。

「知ってるん...あぁ。」

 確かオリュンポス12神とかいったか、それに入っていたはずだ。さすがにそれ以上は知らないが。

「...なんかあったんすか。」

「あぁいや、実は昔求婚されたりして...もちろん断ってやったけどね!」

「...ほー...」

 向こうとこちらの神話は共通している。例えば美の女神がイシュタルだったり。となると向こうでもそうなのだろう...と考えるとすげぇなこの人...

「...な、なんだい?」

 じろじろ見てると引かれた。いやん、八幡傷つくわぁ...。 まぁ、たいてい女子のほうが傷ついてて俺のほうが悪いまである。俺が気になってたのは紐のことで、べ、別に胸に目なんていってないんだからね!

「...いや、別に。なんもないっすけど。」

 甘ったるいコーヒーをすする。

「そうだ、明日も調査へ行くんだろう?」

「あ、じゃあ僕も行くよ、八幡。」

「...んー、いや、あんなこと言ったばっかなんだが......しばらく、一人でできるとこまではやりきる。とりあえず明日はいいわ。」

「...わかった、じゃあ、必要なら。」

「あぁ、声は、かける。」

 ......さて、寝るか。

 

 

 

「...。...?」

 足音が、まっすぐこちらへ向かってくる。

「...」

 息をひそめ、角へ。

「このあたりにいるって話だけど。いねぇ...」

「...大方、誤情報をつかまされたか。」

 ...ヒュアキントス? ...第二級が、なぜ...

「あの腐れ目玉どこにいやがる...っ!」

 ...俺か。...何故探す?

 ここにいるという情報自体は下級冒険者なら知っていることである。だから...確実に、探してきた。

「...」

 自分を探す2人にすべての集中を向ける。それがまずかった。

「――っ。」

 背後から迫るその一撃によって、俺の意識は闇の中へ落ちた。

 

 

 目を覚ますと、どこかの牢獄だった。

「...目が覚めたか。」

「......誰だ。」

 アポロンファミリア...では、なさそうだ。盃...?

「...口の利き方に気をつけろよ、ガキ。」

「――っ、ガッ...は...!」

「さぁ、飲め。」

「――。」

 口を開けさせられ、中に何か。

「...ッ! ――――――――。」

 意識が、はじけた。

「...ぁ......」

 どういうことか、わからない。何を何がいかにどうしてなにゆえに――、何が、わからない。

「............」

「これが、神の酒だ。」

「......」

「いいか、お前は――。」

 

 

 

「...ッ、俺は、何、を――。」

 そこには、ボコボコになった...小人族の男が。

「...貴様、よくも...ッ!」

 ヒュアキントスが、鬼のような形相で剣をこちらに向けた。

「――、ち、ちがうッ...!」

「よくもそれが言えたものだなッ!」

 やってない、やってない、ハズだ! だから、手に何かを殴ったときの痛みや、血がついていたりなんてするはずがない。

 逃げた。逃げた、逃げた。――その先は、ホームではない、でもなぜか、そこへ行かなければいけないのだ。

「ちがう、違う、違う!」

 あぁ、ありえない! それをする必要がない!

 その思考こそが間違いだと気づけずに、俺は――。

 

 

 

「...確かに、八幡君の字だけど。」

「...神の宴、ですか。」

 招待状が、ギルドに向かった僕らのもとに差し出された。

 そこには、八幡の書いた字でアポロンファミリアにいるという旨の手紙と明日の夜開かれるという神の宴への招待状がついていた。

「...行かない訳には、行かないな。 ま、八幡君がこう書くなら大丈夫だろう。 ...皆で行こうか!」

 

 

 

「...」

 なぜ、ここにいたのか...思い出せない。

「...」

 コイツから、逃げていたはずだ。だというのに、なぜ今は、何もしない。

 夢の中にいるような感覚だ。おかしいことには気づいているのに...それを、突き通す。

「...」

 気づけ、気づけ、気づけ。狂うな。

 

 

「うわぁ...!」

「よう、来たか。」

「! 八幡!」

「おう。 ...まず、謝っておく必要があります、ヘスティアさん。」

「――。なんだい。」

「...俺のせいで、まずいことになりました。」

「まずい...?」

「来たかヘスティア! 早く! 大変なことになってる!」

「っ、ヘルメス!?」

「事情は入ればわかる! ベル君、八幡君も」

「ッ、はい!」

「...」

 まずいこと? 何が、起こって――

 扉を開けた先には、神が。道を開けていた。

「来たかヘスティア! それじゃあ諸君! 事の成り行きを説明しよう!」

 すでに、沸き立っていたはずの会場に、静けさが広まる。

「ヘスティアの眷属、比企谷八幡が俺のかわいい子供たちを傷つけた! ...証人は。ほかでもない――その容疑者だ!」

「......はち、まん...?」

 会場にできた空間の中へ、彼が。

「......すみません。」

 そう、ぽつりと言った一言は、どこか、空虚で。

「神よ! 確かに俺は――、アポロンファミリアの団員を個人的な感情から、叩きのめした!」

 彼に、そんな大きな声で話せたのかという驚きと、その、言った言葉への困惑の波が襲い掛かってきた。

「......八幡、君...」

 神様が、悔しそうに目を伏せる。

「俺個人にいくら罰を与えてもかまわない! だから、二人には!」

「――、そういうわけには、いかないな。 ...ヘスティア、戦争遊戯だ。賭けるのは――。 そうだな。 こちらが勝ったなら、ベル・クラネルを我がファミリアへ改宗させろ。」

「――、なん...だって...!?」

「...なんだその目は、ヘスティア。 まさか、自分の子に優劣をつける気か?」

「――ッ、そんなわけないッ! 八幡君がそんなことをするはずがないッ!」

「証拠は。」

「...ぐっ。」

「そもそも、本人が嘘をついてない時点で気づいてるんだろう、なら、飲み込むよりほかにないだろう。」

「.........神、様。」

「......ベル君。」

「...僕も、八幡はそんなことをするような人じゃないって、思います! ...証明、したいです!」

「よし、じゃあ決まりだな。 ――じゃあ、俺からは。 ...もしヘスティア、君が勝ったら君のすべての望みを受け入れよう!」

 二つの視線が、交差した。

「「戦争遊戯だ。」」

 

 

 




 次回は明日、19:00。
   『準備期間①』













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