やはり俺とこのダンジョンは間違っている   作:ばーたるゃん

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『やさしさ』と『自己愛』

「...」

 迷宮のどこにあるかは知らないが...確か、このあたりだったはずだ。

「...信じていいんだろうな...」

 リリルカから預かった地図には、ルートが書かれている。そしてベルからも。

「...さて、と。」

 確かにここは、見覚えがない気もしないでもないというかなんというか

「...いや、わかんねぇな...」

 異世界転生だとかなんだかんだ...神田ぁ! ...と、まぁご機嫌な蝶になるのはさておき。調べるとしよう。

 

 

「神様、そろそろ夕食の準備をしようと思うんですけど、八幡を知りませんか?」

「あー、多分今日は遅くなるんじゃないかな。」

「そうですか。どこに行って――...まさか、ダンジョンですか?」

「ん、あぁ。まぁ、上層だっていうし、戦闘はしないって約束したからね。行くのはやめた方がいいんじゃないかな。すれちがいになるよ。」

「...そうですか。」

「あぁ。帰ってきたら話を聞けばいいじゃないか。」

「......はい。 そうですね!」

 

 

 ここまで働くとかないわー、マジないわー...などと愚痴を言いながら帰路へ。

 簡単に言ってしまえば何も成果を残せなかった。ただいたずらに疲労するのみだ。

「...ハァ。」

 異世界で、チートをもらって...無双かぁ...三国志張りに無双したい。レベルを無視して戦うとかそういう、ないですかね。いやあっても困るんだが。

 ...そんなことを思う理由は一つ。このオラリオでは立場が上がる...上級の冒険者になるほど、そういった秘匿された情報も得れる...だろうと、聞いたからだ。少なくとも深層などについてはある程度の力が必須である。それこそ、ベルのあこがれる『剣姫』ヴァレンシュタインのような。

 そう考えると一番の近道は冒険者として格を上げること...だが。一番面倒なものでもあるだろう。

 ...仕事、と言って差し支えない冒険者業。誰かに養ってもらいたいというのは今でも変わらないが、それはもはや...いや、わかりきっていたことだが、不可能だ。

 ――さて、すべきことは分かったのだ。原作最終巻がでたし、今の俺も逃げられない状態だ。 ――いや。

 逃げようと思えば、どこへなりと逃げられるだろう。今の俺は普通の人間より強い力そしてスタミナがある。問題はコミュニケーションだが...必要最低限あれば、この世界ならば、どうにかなるだろう。

 ある程度の金さえあれば、現在のアビリティを活用して何でもできる。外に存在するモンスターの駆除だとか、まぁ...なんだとしても。そういうことをすれば、生きていけるはずだ。

 それは逃亡だ。現在、俺を取り巻くすべてからの。

 それは裏切だ。現在、俺を取り巻くすべてへの。

 その選択をした場合、生きる限り、その逃亡と裏切の証拠は俺の背から離れることはないだろう。

「悩み事かい。」

「...なんでここに。」

「いやぁ、なんとなくね。」

 考えながら俺が向かった先には、女神がいた。...先日にも話をした場所だ。

「ベルが心配しますよ。」

「それについては、君はボクに強く出れないはずだけど?」

「......あぁ、そうっすね。」

「君なりのやさしさは、『秘密』か。」

「...そんな。 やさしさなんてもんじゃ。」

「いいや。やさしさだよ。それは。」

「...神には、嘘がわかる。 それなら、その答えはおかしいでしょう。」

「ああ、おかしいんだろうね。キミがそれをやさしさだと思わないことぐらい、ボクだって知ってる。」

「なら。」

「だからこそ、それはやさしさなんだよ。」

 だからこそ。...いいや違う。あれは本当に、やさしさなんかではない。

「ただの自己愛ですよ。ほら、俺は顔だけ見ればイケメンですから。」

 俺のことは、俺が一番わかってる。これは、そう。ベルに最後まで協力してもらうための、俺のための行動なのだ。

「あはは、ひねくれてるなぁ。ま、でも...それがキミらしい。...だけど、ね。 言葉にしてようやく、君のその『自己愛(やさしさ)』ってやつは届くんだぜ?」

 ...言葉にして、初めて。そんなことは当然だ、空気を読んだり、言ってないことを察したり。そんなものは無駄でしかない。

「それともなんだ。キミは、ベル君が君の『やさしさ(自己愛)』を、理解できないように映るのかい?」

「......それは、なんともまぁ...」

 

 

 ――卑怯な女神(ひと)だ。

 

 

 

 

 

 

 




 俺ガイルも、最終巻...とはいえ、後日談とかいろいろ出すみたいですけどね。
 私も楽しみに待つ一人なのですが、そうですね...ほんと、ありがとうしか言う言葉が見つかりませんでした。9年間。 ...私の人生を大きく変えてくれた作品です。
 この場で言うのも何なので、本人に伝えるとします。
 ではまた次回、お楽しみに!

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