やはり俺とこのダンジョンは間違っている   作:ばーたるゃん

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帰還とその後

 

「...」

 体の疲労が取れた気がする。案外効果はあった...ってことだな。温泉ってスゲー。

 本来ならこんな早く効果は出ないんだろうが、ここは迷宮。何があってもおかしくない。...おかしくないのは困るわー。

 中層ももうすぐ終わる。

「18階層......そんな深くまで行ってたんだな。」

 ヴェルフが話しかけてきた。

「なんだ藪から棒に。」

「ヤブカラボウニ? なんだそれ。」

「あー...極東のことわざだ。いきなりって意味だな。 で、何だよ。」

「いや、ただ単に、次の目標ができたなって話だ。」

「......まさか。」

「あぁ。次は...18階層まで、俺等の力だけでたどり着いて帰ってくるってことだ。」

「...ハぁ、馬鹿も休み休み言え。普通にあの階層へなんていく訳ねぇだろ。メンドクセェ。」

 十分な金さえ稼げればいいんだ。なら、中層程度で十分稼げる。

「おいおいそういうなよ。」

「行く必要がない。」

 自分から進んでいくとか、マジありえないから。

「ゆっくりステイタスを上げて、暇な時間を作ってな。」

「...夢がねぇな、お前。」

「あるだろ、ニートという夢が。」

「ニート? あぁ、仕事もせず努力もせず...お前、屑かよ。」

「ああそうだ。」

 この世界に来て、人付き合い無しで稼げるものができた。だから自分で稼ぐが...

「ん? ...ならいいのか。」

 人付き合いがないなら、いいかもしれん。

「でかいファミリアになるのは願い下げだな...」

 

 

「ついたぞハチマン君!」

「はぁ、そっすね。」

「もっとテンション上げようぜ!?」

「いやっすよ、ヘスティアさんも無理しなくていいんで。」

「...ハチマン殿。」

「...なんだ。」

 タケミカヅチ・ファミリアの面々がやってきて、頭を下げてきた。

「申し訳ありませんでした。...怪物贈呈も、ここまで、謝罪できなかったことも。」

「...」

 謝罪、ね。いい思い出がないが...

「これからはやめてくれ、そんだけだ。」

 昔からある答え、これからはやめてね、を使えばいいんじゃないのか、いつも通りだ。

 二度目はないということだ、うん。そういうのってあるんだよなぁ、二度目。

 ベル達が許したならもういい、そういうことにしよう。

 俺の意見は、ここじゃどうでもいい。

 

 

「.........なんすか。」

「なんすか、じゃないよね。」

「...昨日ベルが、来たはずですけど。」

「うん、確かに来たよ。それで? 18階層へ?」

「...はい。」

「な~にやってるのかな君達は~~~~ッ!?」

 

 

「...ハァ。」

「やっぱり、怒られちゃった?」

「あぁ。お前の言ってた通りだった。 ......」

 冒険者は、次々下を目指していくものらしい。あのひとには、さらに下について教えると言われた。

「...目標、か。」

 話の中にあったのはそれだ。目標がなければ無理をする必要はない、と。...そのとおりだ。俺には、目標がない。

 ...ともかく迷宮に行くにしても、療養が先だ。体にできた傷などは魔法で完全に治っているが、精神的疲労は癒えない。

 本を積む。この世界にはアニメはないのでこういう本を暇つぶしがてら読むのだ。文字も次第に分かってきた。

 

 

「...んが?」

 目を覚ましたのは深夜。都合上部屋の隅、布団で寝ており、一切邪魔にはならない。

 起こされなかったか。 まぁ、起こされても困るんだが。

「...」

 二度寝するか。

 本を退け、目を閉じる。

 明日はいいことあるといいね、ハチ太郎。 ...へけ!

「ハチマン君、起きてるのかい?」

「...」

 面倒だな、寝てることにしよう。うん。

「起きてるだろ。」

「...っす。」

「ちょっと付き合ってくれ。」

 

 

「...なんすか。」

 上の廃教会に連れてこられた。

「ステイタスの更新をしてあげよう。」

 ...まぁ、ベルを起こすのは忍びないしな。

「でもなんでいきなり。」

「いやぁ、目がさえちゃっててね。そんなところでキミが起きたってわけさ。」

「...ハァ。」

「日中はできなさそうだしね。ほら、背中を出しな。」

 背をむけて座る。

 そういえば、最後は...18階層へ行く前だったな。

 

 

Lv:2

 

 

力  I 0→E 401

耐久 I 0→F 387

器用 I 0→G 202

俊敏 I 0→H 165

魔力 I 0→H 111

耐異常 I

 

MAGIC:

[インガーンノ]

・速攻魔法

・一日一度使用可能

・30秒間、自身の能力を大幅に上昇

 

SKILL:

 

 

 

[瀕死経験]

・瀕死になるごとに能力が飛躍的に上昇する

・瀕死時、全能力に超補正

 

 

「...さて、と。 ......まぁ夜も遅いし? 大声を出したりはしないさ。」

「あー...いや、このスキルは多分、二度ほど死にかけたんで...」

「...瀕死経験。 つまりはそういう窮地に陥ったってことだ。それも、一度ならず二度までも。...いや、それ以上か?」

「...どうでしょう。」

「ハァ。 ま、いいか。君といいベル君といい......」

「死にかけただけはあるんじゃないすか?」

 と、いうか...フリーザ編のベジータみたいに自分で傷ついて、回復してってできるんじゃね?

「また何か変なこと考えてるなぁ?」

「えっ、いやそんなことないっすよ。」

 今のは、変じゃない。当然だ。

「...そうかい。 うん、ついでだ。ちょっと外に行ってみないかい?」

「...」

 いやだなぁ。

「そんな嫌そうな顔しなくてもいいだろ。ボクのこと嫌いなのかい?」

「いや、ンなことないっすけど...」

 そんなこといわないでもらえますかねぇ!? キュンときちゃいそうじゃん! ...いや、ロリに興味はないですよ、ロリコンじゃないです。

 

「...ふぅ、良い眺めだろう?」

 そこからは、数多の明かりに照らされる大通りが見えた。

「...まぁ。」

「んー...ベル君は喜んでくれたんだが。」

「うわー、すごいデスね、神様! ...ってなもんですかね。」

「ですをカタカナにしないでくれ、何か不愉快だ...」

「?」

「あぁ、分からないだろうとも、ボクもわからない...っと、そうじゃなくて...キミをここまで連れてきたのには理由がある。」

「まぁ、そうでしょうね。理由もなしにこんなとこまで連れ出されてたらキレてましたよ。」

 いや多分キレないけど。これでキレられてたらこんな性格してねぇし。

「できないことをあまり言うもんじゃないよ。」

「...うス。」

「で、理由だ。 ......キミの世界との扉が、迷宮内のどこかにある。」

「...向こうとの...ですか...?」

「あぁ。どうやら、この世界に数人ほどいたみたいでね。それどれもが迷宮からだという。」

「...迷宮...」

「実際にはもっと多くの人が来ていたんだろうけど...おそらく...」

「......なるほど。」

 そのうち調べてみようと思ってたが...居たのか。

「ヒューマンだけじゃなかったみたいだけどね。」

「...」

 別の世界からも来る...そりゃそうか...異世界転生が一つの世界からなんて法則はない...だろうしね。

「...さて、これで、目標は見つかったかい?」

「...知ってたんすか?」

「まぁ、寝ちゃうほどには気にしてなかったみたいだけど。」

 ...説教っていまいち心に響かないよねぇ...しばらくは悩むんだけど。

「元の世界に戻る...これが、目標だと...」

「あぁ。うってつけじゃないかい?」

「............確かに。」

 戻れるのなら...

「ボクはキミが戻れるよう全力でサポートしよう。」

 ......しかし、俺は一度...向こうよりもこちらを選んだ。

「...何、君が納得してからでいいさ。いや......見つけた時に決めてもいい。 そのときにこそ、答えを決めれるだろう。」

「...」

「さぁ、戻ろうかっ。」

 

 




 第5巻、アニメ一期終了。

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