やはり俺とこのダンジョンは間違っている   作:ばーたるゃん

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極光

 

「さて。」

 今からやるべきことは......階層主のところへ行くことだ。

 この世界で、いや。この迷宮で迷うことは死に直結する。なら、ここでは最善の方法を取るべきだ。

 飽くまで、生きるのに最善の方法だ。ここまで積極的に生きようなどとは、昔なら思えるはずもなかった。

 ともかく、今は情報が必要だ。ならば...現地に赴くほかない。

 

「......」

 周りに集まったモンスターから隠れつつ、木々の合間を縫い、階層主の下へ。

「ひっ...ひぃぃっ!?」

「ッ...」

 闇の中から出て一撃。再び闇の中へ。

 潜むように消えるのは、俺の得意技のうちの一つだ。 ステルスヒッキー、実用性高い!...とか冗談を言っている暇はない。

 少し開けた場所に出る。

「...っ。」

 この、威圧感は――間違いない、階層主だ。

「! ハチマン様! 一体どこへ行っていたんですか!!」

「...すまんリリルカ。」

 どういう状況かは...把握済み、なはずだ。

「それで、俺にできることはなんだ。お前の意見を聞きたい。」

「では、雑魚の処理を! リリも手伝います!」

「分かった。」

 弾かれるように跳び、近くのモンスターへ後ろからとびかかる。

「フっ!!」

 短剣を縦に振り抜き、脳天から裂く。

 死にかける度に戦闘能力を増していく。ハチマンマジサイヤ。

 事実、動きが鮮明に見える。体が軽い。

 モンスターの体が灰になるより前に蹴り、木の枝の上へ。

「――。」

 ヒットアンドアウェイで次々に倒していく。

 震えるぞハート、燃え尽きるほどニート!

「はぁぁッ!!」

 とどめを刺す。

「...」

 狭い範囲の雑魚モンスターを一掃した。

「...ハチマン様、本当にいったい何をなさっていたんですか?」

「フッ、男には語れぬ事情ってのが――...話してる場合じゃねぇな。」

 揺れが起こる――だけではない。木々が折れて、こちらに何かが飛んでくる。

「リリルカっ!」

 手を引いて、ソレをかわす。

「――、ベル様ッ!?」

「何ッ!?」

 今、飛んで行ったのはベル、なのか?

 確認はできなかった、だが、ベルだというなら。

「...あの、怪物がやったのか。」

 ベルが吹き飛ばされたことによりできた道の先、巨人がいた。

「......」

 アレが、階層主か。

「ベル様ッ!」

「...っ、ベル...」

 ベルだけではなく、助けに来ていた男もいた。

「ベル様っ、ベル様ッ!」

「桜花ッ!!」

「...」

 魔法は使えない。...

「ハチマン君!」

「! ヘスティアさん...」

「時間を、稼いでくれ! ベル君は必ず立ち上がる!」

「...分かりました。」

 あの怪物は確かに、こちらを狙っている。 ...ベルが、よほど気に障ったようだ。

 

 歩いて向かう。時間を稼ぐなら、急ぐ必要はなさそうだ。

 前方で、様々な攻撃を受けて、動きが止まっている。

「火月ィィィィィィィッッ!!!」

 ヴェルフの声が。それと同時に灼熱が怪物を襲う。

「――、ハァァァッ!!」

 落ちていた剣を投擲する。

『オオオオオオオオッッ!!』

「こっちを見ろ、化け物。」

『オオ...ッ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 咆哮がこちらへ放たれる。

 回避、回避、回避回避回避回避回避。

「ッ、ッ!?」

 巨腕の叩きつけを紙一重で回避し、その腕を切りつける。

『オオオッ!!』

 そこへ咆哮が。これも再び紙一重で回避する。

「...っ、ハッ! どうした、一発もあてっられないのかよ、ウスノロ!!」

 言葉が通じるとは思わないが――

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 撤回、案外伝わるのかもしれない。

 挑発にかかった巨人が、今までにないほどの咆哮を放とうと、反る。

 ふと気づくと、大鐘楼の音が。

「――。」

 大きく、いや、近づいてくる。

「――――行け...ベル・クラネル!!」

「はぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 極光が、その場を支配した。

 

「......消し、飛ばした...ってのか?」

 そこには、上半身を失った巨人がたたずんでいた。

「おい、ベル!」

 倒れる前に支える。

「......」

 気絶している。それも当然か。

 歓声が湧き上がってきた。

 異常事態を、切り抜けた。

 

 


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