やはり俺とこのダンジョンは間違っている 作:ばーたるゃん
「......っ...ここは.........」
あぁ、迷宮か。
どうやら死なずに済んだようだ。
「...【インガーンノ】」
発動した。
「......酸のおかげか。」
解けた面が固まって、血があまり出なかったようだ。痛みはおかしすぎてわからないのか、感じていない。
魔法で、体が元に戻っていく。
「......~~~~がぁっ...!!」
治す途中で激痛を伴った。
「......っ...っぅ...」
その痛みもすぐ終わったが、問題は、まだ解決していない。
「元の場所に戻んなきゃいけねぇよな......」
今の今までモンスターに目をつけられていなかったということは幸運だが、ここからそうとは限らない。
「...確か......いや、その前に。」
後ろのほうでぽっかりと空いた穴を見下ろす。
酸が出る壁は無くなった...酸自体もどうやら蒸発したようである。
穴の中へ降りて、骸骨を見る。
あの時は必死だったので何とも思わなかったが、これがあったおかげで、今、俺は生きている。
「...? あぁ、コレか...」
何かぶつかったと思って足元を見ると、とどめを刺した短剣が下に。ってかあぶねぇ、すこし向きが違ったら切れてた...
あの酸の中で、全く溶けずに残っている。
「...」
抜き身の状態で、拾う。
「流石に鞘はないか。」
この短剣だけでも、持ち帰らせてもらおう。
迷宮とは、常に死と隣り合わせの空間である。そんな場所で、俺のように弱い者が生き抜くためには、死を乗り越えなければならない。
他人の死をも、だ。
銘が入っていた。名は...
「【バル】......か。」
文字が見えるほど、ということから全く溶けていないということがわかる。
「......」
上を見る。映るのは、穴の淵、木々、水晶。
ベル達が、俺を探してないといいが。
「...どんだけ続くんだよ...」
森の中を歩いていく。道しるべがないとキツイとも聞くし、正直空腹だ。それがネック。
「......何が食えるかとか、知らねぇし...」
そもそも食えるものがあるのかということも知らない。
「ハァ......」
かなり歩いて、少しひらけた場所へ。
「...着いたか。」
久しぶりに人がいる場所へ来た気がする。
「......偶に見せる豪運ってやつか...俺の今後の運、全部使い果たしただろ、コレ。」
気に寄り掛かって近くに座り込む。
ロキ・ファミリアに関してはもうテントをたたんでいる、この場を後にするのだろう。
......そりゃ、まずくないか?
ベルはどこだ。居ない...しまった、俺のせいか...?
「...ハァ。クソっ。」
疲労はしているが、そうも言ってられない。
俺を置いていくことは、あの神的にありえない、だからこの階層には居るはずだ。
まずは...
「...リヴェラの街、か...」
人が集まる場所へ行けば、多少なりとも聞けるはずだ。この目でも、こちらが最低な話しかけ方でも、まぁ応じる。そこはいい点だ。
「......すまないが、一つ聞いていいか。」
ここでの必要なことは、下手に出すぎないことだ。
「ん? ってうおっ!? なんだお前...」
「何って、冒険者だが...」
「おい、金は持ってるか、持ってるならある程度融通してやるぞ。」
「無い。」
「ケッ、じゃあ無しだ。情報もただじゃねぇ。」
「...そうか。」
それが聞けて良かった。 ここでは、もう情報を得られそうにないということだ。
「! もしかして、ハチマン殿、でしょうかッ!」
「あァ...? ...げ。」
しまった。こいつらがいるんだった...
「大丈夫ですかッ!?」
「あぁ、近づくな。大丈夫だ。それよりもベルはどこだ。」
「し、しかしそんな状態では...っ。」
「知らねぇならいい。俺のことは気にするな。」
「...ですが...っ!」
言葉を最後まで聞かず、街を出る。いつもならそんなことしないだろうが、今は、時間が惜しい。
答えられそうにないというのも含め、一人で探したほうがいい。 となると、まずは...高いところにあがったほうがいいか...
駆けて行く。いつの間にか先ほどのは振り切った。
「...流石に裸足はなかったか。」
ステイタスで強化されたとはいえ、痛いものは痛い。
まぁ、この服装についてはあの人たちと合流してから考えればいいことだ。
俺がここまで熱くなれるのは、命を懸けた空間にいるからかもしれない、いつ死ぬかわからないということを、実感したからかもしれない。
俺は、ここで新たな人生を迎えた。俺という人間の根底は一切変わらないが、ここでは...
馬鹿をするのも、いいかもしれない。黒歴史がいくら増えようが、生きてさえいれば、ここでは――勝利だ。
「...ッ!? なんだ...あれ...」
何かが落ちてきた。黒い――
「......ッ、階層主......?」
18階層...安全階層に? ロキ・ファミリアは、もういないのに?
...い、いや大丈夫だ...階層主なら、この階層にいる奴らが倒せるはずだ。
「ふぅ......」
と、落ち着こうとして――
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!』
「ッ...!?」
身の毛がよだつ、おぞましい巨大な咆哮が、体を撫でていった。
「...っ...」
戦慄が走る。というと正しく伝わるか。
普通ならば、あそこへ向かうはずがない...だが。
あそこへ落ちたということは、あそこに何かがあるということ。人がいるところで、異常事態は起こる。
「......ってことは...」
ベルは、あそこにいるということだろう。
「......断食とかそういうのを考えると、今がベストコンディションってやつかもな。」
今の自分を確認する。 上半身裸、裸足、抜き身の短剣を一本。ってか筋肉ついたわ...だからと言ってこの服装がおかしくないという理由にはならないが。
「...まぁ、いいか。」
それについては今はどうしようもできない。悩むだけ無駄というものだ。
「......さて。」
さぁさあぁ久しぶりの更新となったわけですが、文才などはつかなかったようです。
どこまで更新が続くのでしょうか。