やはり俺とこのダンジョンは間違っている 作:ばーたるゃん
「...ここは...」
見慣れた部屋、見慣れた景色。
「あら、ようやく目が覚めたのね、居眠り谷君。」
「ん...は?」
「...どうしたのかしら? その目は。」
「......あ、いや、何でも。」
久しぶりな気がする。おかしい。ここに来るのは1日ぶりの筈なのだが、どういうわけか――懐かしい。
「――なんだっけ。」
「...」
「...」
「......俺は...」
「...気づいてないのかしら?」
「? 何にだ。」
「...さぁ? それなら、いいわ。」
「...?」
何だ。雪ノ下が無意味にこんな言葉をかけてくることはありえないはず...で、あれば...
...俺が知るもの、そして、雪ノ下が知るもの。
「...」
俺が部室で居眠りをする...まぁ可能性としてはありえるが、雪ノ下がソレを許すか...というか、その隙を許すか。
「...雪ノ下。」
「何? まだ目が覚めて居ないのかしら、その目は。」
「...あぁ。どうもそうらしい...が、一つ、聞きたいことがある。 ......俺と、友達に――」
「ごめんなさい、ソレは無理。」
「...」
決まりだ。
あの時と、全く同じ構図、由比ガ浜も居ない。
「――」
俺は、確実にここには居なかった。 どこか、別の――
「...ッ!?」
背中に、熱が。
「......そうだ。」
俺は、ここじゃない場所へ居た。それは確実だ。そして――
「戻る場所は――そっちか。」
もとの世界に未練は無い...と、言えるほどではないが...オレは、こちらへ。
迷宮都市、オラリオへ戻らなければいけない。
...無駄に、こういう感情がわいてしまったのだ。
「――」
時間が戻っていく。 そして、ソレは...階層主に殺される寸前へと。
「【インガーンノ】」
魔法が、発動した。
もう、死ねない。
自己犠牲――上等だ。しかし、死ぬことは、許されない。
俺は、この世界で生きる。 二度目の生――いや、3度目の生を、無駄にはしない。
できる限りを、最善を。
俺にできうる、最善を。
「――、っ、あああああっ!!」
階層主の攻撃を、回避して、おくの通路へ。
「――...っ。」
魔法は一瞬、回復する暇さえなかった。いや、リソースが全て力へまわされた。
しかし、そこで既に俺の勝利は決定したのだ、何が在ろうと、それは、オレの勝利である。
逃げるが勝ち、その言葉通り――
「...っ。」
激しい頭痛で目を覚ました。
「...?」
「ようやく、目が覚めたか。」
「......ヴェルフ...か。」
焦点が合わない。声も、無数に反響している。
「まぁ、まだ寝てろ。 俺はお前とは違ったからな。 ......助かった、ありがとう。」
「...」
感謝...向こうでは、素直に言われることはほぼ無かった。 いや、むしろ文句ばかりだったなあいつら...
ま、今となってはどうでもいいがな。
「......」
耳鳴りと、頭痛と、めまいと。
「...」
今は、回復に努めるべき、か。
1年ぶりでした。