あるとりあくせられーた日記   作:疾走する人

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アルトリアが王になった後の話です。

後少しシリアスパートが続くかも。


雇用

◯月▽日

 

曇り

 

気分:悪

 

私は立派な大人になったので、大人らしく、これからは日記に一日の気分を書き込むことにしました。

 

いきなりですが、現在私の気分は悪いです。

 

 

理由は、マーリンとか、マーリンとか、いくつかありますが、その中でもキツイのは、戦場に出たことです。

 

昨日私が選定の剣を抜いて王になった後、各地にいた前王ウーサーの部下とか友達とかが、一斉に反乱を起こしました。

 

マーリンからそうなるだろうと言うことは聞かされていましたが、たくさんの人が私に反発して反乱を起こした、という事実は、結構私のメンタルにクるものがあります。

 

まあ、そこまではまだいいんです。

 

でも、あろうことかマーリンは、

「戦場で一人だと、君も寂しいだろう?」

なんて事を言って、アクセラレータとケイ兄さんまで戦場に駆り出したんです。

 

何をするのか、と問い詰めて見ましたが、マーリンは「別にいいじゃないか。初めての戦場でたった一人というのは辛いだろう?」とかいうことをヘラヘラ笑いながら口にしてました。

 

「それに、きっと彼らも君の事を近くで見守っていてやりたいと思っているだろうさ。」

 

流石にその言葉にはキレそうになりましたが、かろうじてその気持ちを抑える事ができました。

 

褒めてもらいたいものです。

 

 

まあ、そういうこともありましたが、私は少したかをくくっていたのかも知れません。

 

戦場なんてただのうるさい場所だ、と。

 

 

それがいけなかったのでしょうか。

 

最初、戦場に出た時、私は地獄を見ました。

 

あちこちに人の死骸が落ちていて、味方も敵も死骸を踏みながら戦っている。

 

のどかなただの村でのんびりと過ごしていた私には、その光景はまさしく地獄のように見えました。

 

あまりにもショッキングなところを見て私が動きを固まらせてしまったときに、いきなり敵が襲って来ました。

 

私は思わず目をつぶってしまいましたが、刀に切られたような痛みはありませんでした。

 

目を開けてみるとそこには、皮膚のあちこちが裂けて血まみれになっている敵とーーその血を浴びて真っ赤に染まっているアクセラレータがいました。

 

私が固まっている間にも、アクセラレータは敵の方向に向かってものすごい速さで走って行って、殴る。相手の腹を貫く。蹴る。相手の体中から血が吹き出る。殴られる。逆に相手の腕が曲がる。蹴りつける。相手の体が吹っ飛んでいく。

殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る。

腕が曲がる、足が曲がる、恐怖で顔が歪む、腹を貫かれる、吹っ飛ばされる、全身から血が吹き出る、気絶する、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ。

 

地獄が、そこにありました。

 

ただ、自分が殴って、どんどんと敵が死んでいくのを見ているアクセラレータの目は、とても悲しげでした。

 

私がどんな表情をしていたのかはわかりませんが、おそらく彼を傷つけてしまうような表情をしていたのでしょう。

 

彼は私の顔をチラッと見たあと、一瞬だけとても悲しそうな顔をしたあと、また敵の中に突っ込んで行きました。

 

そんな彼の様子を見て、マーリンが言いました。

 

「彼は良い駒になりそうだね。一人で何人も殺せるし、躊躇うこともしない。まるで冷たい機械のようだ。君もそう思わないかい?アルトリア?」

 

マーリンが笑いかけながら私に問いかけたその質問に、私は違うと言いたくて、でも、戦場を駆け回る彼の後姿が見えて、私はその質問に答えることが出来ませんでした。

 

アクセラレータの介入や援軍の到着によってどんどんと相手を押して行って、ついに相手が全滅しても、私はなぜか喜ぶ事が出来ませんでした。

 

アクセラレータに人殺しをさせる為のようにアクセラレータを戦場につれてきたマーリンが許せなくて、それを見て何も言わないケイ兄さんが許せなくて。

 

それよりも、アクセラレータの事を少しでも怖いと思ってしまった自分が一番、許せませんでした。

 

 

アクセラレータは戦いが終わると、ただ一言「帰る」とだけケイ兄さんに告げて、私と目を合わせないで姿を消してしまいました。

 

宮廷のご飯はいつもみたいにマズくて、アクセラレータの悲しそうな目が頭から離れなくて。今日の私は、初めてご飯を残しました。

 

 

 

 

 

 

◯月△日

 

晴れ

 

気分:良

 

 

 

前回の戦争から一週間が経ちました。

 

やりました。私はついにやり遂げました。

 

戦争が終わったときからの私の目的。そう。アクセラレータとの仲直りがようやくできたんです。

 

まあ、聞いてください。

 

話は、二日前に遡ります。

 

マーリンは、前回の戦争が終わったあとに、ケイ兄さんを騎士にスカウトしたんです。

 

確かにケイ兄さんはアクセラレータと比べると悪いけれども頭は良いし、そこまで弱くもありません。

 

そんなこんなでケイ兄さんが騎士になってキャメロットに来たとき、アクセラレータはケイ兄さんについてきて一緒に騎士になることはなく、ケイ兄さんによれば、一人で農業をやっているようです。

 

当然のことかもしれません。

 

私は、私のために戦ってくれたアクセラレータにお礼を言うことも無く、それどころか怯えたような視線を向けてしまったんですから。

 

そう考えて自分を責めていると、そんな私の様子を見兼ねたのか、ケイ兄さんが私に声をかけて来たんです。

 

「アクセラレータにちゃんと謝って、アイツに宮廷で料理人として働いてもらったらどうだ?」

 

それが、二日前のこと。

 

まあ当然、私は自分にそんな資格はない、と言って断ろうとしましたが、「アクセラレータから逃げるつもりか?」とケイ兄さんに言われて、アクセラレータと仲直りしに行くことになりました。

 

正直気まずいのでケイ兄さんにも付いてきてほしかったのですが、「お前が一人で思いを伝えて来い」と言われたので、結局一人で行きました。

 

村には案外早くついて、私は家のドアの前に立ちました。

 

嫌がられたらどうしよう、という思いもありましたが、永遠に仲直りできない、というのはもっと嫌なので、思い切って家のドアをノックしました。

 

少したってからアクセラレータが出てきました。

 

アクセラレータは、私を見て少し驚いたような顔をしましたが、私が「話したい事があるのですが、いいですか?」と聞くと、家の中に入れてくれました。

 

「要件は手短になァ、なんのようだァ?」

 

ど聞かれたので、私は最初に頭を下げました。

 

「すみませんでした、アクセラレータ。」

 

「あァ?オイオイ、俺はなんか謝られるようなことをしたかァ?」

 

と、戸惑った感じでアクセラレータが聞いてきました。

 

「前回の戦争のとき、私を助ける為に敵をたくさん殺させてしまって、すいませんでした。」

 

「オイオイ、それは俺が勝手にやった事…「それでも、そんな事をしてくれたアクセラレータを私は怖がるような目で見てしまいました。」」

 

私がそういった瞬間、アクセラレータの顔が歪みました。

 

それでも、私は話を続けます。

 

「私はあなたにずっとそばにいてほしいと言っておきながらも、言葉とは逆にあなたを遠ざけるような事ばかりしてきました。

もう離れたくないんです。

だから、王としての命令です。

ずっと私のそばにいてください。

たとえ嫌われても構わないから、ずっとそばにいてください。」

 

その場を沈黙が支配しました。

 

最悪、断られても仕方が無いと思っていたところに、アクセラレータが口を開きました。

 

「ったく、いちいちくだらねェ命令出しやがって…。

まァ、命令だから仕方ねェ。

ついてってやるよ、アーサー王サマ。」

 

そう言ってくれたアクセラレータの口は、少しだけ上向きに曲がっているように見えました。

 

「じゃあ、今日からアクセラレータは、宮廷料理人です!」

 

「オイ、なんで俺が料理人になるゥ?普通は秘書とか、宮廷魔術師だろォ!」

 

「フフーン、いいのです。料理人ゲットォォォォ!」

 

「ゲットって何だ、ゲットってェ!?クソガキィ、テメェは俺をなんだと思ってやがるゥ!?」

 

 

アクセラレータと仲直りはできました。

 

だから、彼との騒がしい日常を続けるために、もっともっと完璧な王になりたいと思います。

 

 

 

 

 

追記:その晩の夜、夕飯を食べた騎士たちは、比喩とかじゃなく、リアルに涙を流してガッツいていました。

 

私も初めて食べたときはこんな感じだったんでしょうか。




喧嘩させて早速仲直りさせていくスタイル。

基本的に、後々まで残るような喧嘩はさせません。

一応日常系の作品だから、暗い話になるのはアウトだと思うんですよ。

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