あるとりあくせられーた日記   作:疾走する人

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どうしてこうなった……?

ちょっとメインストーリーを進めるのを早めすぎたかもしれない。

あれ…おかしいな…日常系の作品のはずなのに…

シリアスが止まらないよ(錯乱)


かりばーん

◯月☓日

 

晴れ

 

 

わたしが無理矢理王城につれてこられてから、一年が経ちました。

 

今日は、マーリンがわたしにやらせたいことがあると言って、わたしを王城から引っ張り出して来ました。

 

わたしは何か面倒ごとを押し付けられる気がしたので断ったのですが、マーリンに「彼に会えるかもしれないよ?」と言われたので、渋々付いていきました。

 

というか、何故アクセラレータの事をマーリンが知っているのでしょうか。

 

もしかして………。

 

 

 

わたしの日記を読まれた?

 

 

 

ヤバイです。

 

この日記は、ちょっと思い出すだけでも、「アクセラレータと一緒にいたい」とか、「アクセラレータに離れないでいて欲しい」みたいな、恥ずかしいでは済まされないものが……

 

 

そう思ってマーリンにわたしの日記を読んだのか聞いたら、

 

「そうそう。君のあの日記は面白かったねぇ。アクセラレータの不思議な魔術とか、君のアクセラレータに対する思いとか。ああ、安心したまえ、アルトリア。

君は彼の事を大切に思っているみたいだからね。彼を殺すような事はしないさ。

まあ、君が王になる事を拒否したとしても、殺しはしないからね。

殺さないと言っても、腕のニ、三本は僕の八つ当たりの対象になるかもねぇ……」

 

わたしはそれを聞いて、想像をしてしまいました。

 

彼が、アクセラレータが血まみれになりながら、冷たくなっていくところを。

 

わたしの真っ青な顔を見て満足したのか、マーリンは、「まあ、君が王になると約束してくれればそんなことはしないよ。」

と言ってきました。

 

でも、仕方ありません。

 

アクセラレータが傷つくくらいなら、わたしが王になったほうがマシです。

 

アクセラレータに会えなくなるのは辛いですけど。

 

 

そんなこんなでわたしが王になる決意を固めてながら歩いていると、いきなりマーリンが立ち止まりました。

 

どうしたのか、と思って聞いてみると、

 

「アルトリア。君は今日はこの町の宿屋に泊まっておきたまえ。また明日、わたしと合流しよう。待ち合わせ場所は……。そうだね。今、巷で噂の選定の剣があるという丘にしよう。それでは、また明日。」

 

伝えることだけ伝え切ってから、マーリンは転移魔法を使って何処かへ行ってしまいました。

 

全く、何なんでしょうか。

 

 

…あ。

 

 

アクセラレータと会えるかもしれない、とか言ってわたしを王城から引っ張り出してきたのに、会えなかったではないですか。

 

……あのエセ花の魔術師め。

 

わたしが王になったら、仕事を押し付けまくってやる。

 

 

 

 

☓月□日

 

晴れ

 

今日は、マーリンに朝早くから選定の剣があるという丘に来いと言われていたので、朝起きてすぐに選定の丘に行きました。

 

驚いたことに、そこにはマーリンと、ケイ兄さんと、それから……アクセラレータがいました。

 

なるほど。アクセラレータに会える、というのはこういう意味でしたか。

 

何故わたしがこんな所に呼び出されたのか、とわたしがマーリンに問いかけようとしたとき、マーリンがわたしの心を見透かすように言いました。

 

「さあ、アルトリア。君は既に、王になる決意をしたね?ならば王よ、この選定の剣を抜いてみたまえ。この選定の剣を抜いた者こそが真の王。ブリテンをまとめる騎士の王だ。」

 

その言葉に、ケイ兄さんは唇を噛み締め、アクセラレータは自分の手を強く握りしめていました。

 

二人がどんなことを考えているのかはわたしにはわかりませんが、それでもわたしのことを心配してくれている事はわかります。

 

大丈夫だよ。

 

とわたしは二人に笑いかけ、わたしは選定の剣に手を伸ばし、その柄を掴んでーーー

 

 

 

 

 

引き抜きました。

 

 

 

 

 

 

マーリンがわたしを選定の丘に集まって来ていた人々の方に歩かせ、大勢の民衆が見ている前で語りかけました。

 

「さあ、我がブリテンの民たちよ。

ここに新たな王は誕生した。

聞きたいこともあるだろう。

反対したいこともあるだろう。

しかし控えよ。

この方こそが、新たなブリテンの王である。

前王、ウーサー·ペンドラゴンの嫡子、アーサー·ペンドラゴンである。

絶望に満ち溢れた貧しい民よ。

希望に満ち溢れた豊かな民よ。

この輝きを心に刻み、語り継げ。

さあ、」

 

 

 

 

ーー王の話を、始めよう。

 

 

 

 

 

 

その日、一人の貧しい村娘は、偉大なる王になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、「わたし」は「私」になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、わたしはアクセラレータとケイ兄さんが近くの居酒屋に一緒に入って行くのを、というよりもケイ兄さんがアクセラレータを無理矢理居酒屋に引っ張り込んで行くのを見つけました。

 

何か私に秘密で話すことでもあるのかと思って私が居酒屋の窓の前で聞き耳を立てていると、ケイ兄さんの声が聞こえて来ました。

 

「なあ、アクセラレータ。今からでもいい……。

あいつを、アルトリアを嫁に貰ってやってくれないか?」

 

私は、その問いかけを聞いた瞬間、顔が熱くなっていくのを感じました。

 

近くで私が聞いているとも知らずに、ケイ兄さんは言葉を続けます。

 

「おそらくあの野郎は、マーリンはアルトリアを完全な道具にして、国のためだけに動く機会に仕立て上げるつもりだ。

今しかできないんだ。

頼む。アルトリアを、救ってやってくれないか……?」

 

そんなケイ兄さんの必死な懇願を、アクセラレータは、受け入れーー「悪ィが、そりゃァ無理だ」ーーませんでした。

 

ああ、やっぱり私には魅力が足りなかったのかな、とがっかりしている私の耳に、「なんで!?」と問いかけるケイ兄さんの声と、それに答えるアクセラレータの声が入ってきます。

 

「勘のいいお前なら気づいてたんじゃねェかァ?俺はーー」

 

ーーヒトを殺したことがあるってことに。

 

私は耳を疑ってしまいましたが、ケイ兄さんは少し違うようでした。

 

「どことなく不思議な感じはしていたが……そうだったのか…。だがアクセラレータ、今のお前は違うだろう?今のお前は、頭が良くて、見かけがモヤシみたいなただの村人じゃないか。」

 

「確かに、今の俺は、ただ村人だ。人殺しなんてしてねェし、そんなことは考えもしねェ。」

 

「だったら…」

 

「だがなァ。殺してないからといって、恨みを買ってないとは言い切れねェ。ましてや俺は、こんな悪魔みてェな髪と目だ。恐れる奴も少なくねェ。」

 

「そんな俺が近くにいれば、優しいアイツは俺の事ばっか気にかけて、心を痛めてしまう。俺はなァ、アイツのそんな姿は見たくねェし、アイツには笑っていて欲しい。だから、アイツの隣にいるのは、俺には大きすぎる役だ。」

 

ケイ兄さんはそれ以上何かを言う気はないらしく、一言「そうか……」と言った後、黙り込んでしまいました。

 

私は、これ以上は何も聞けないだろうと思い、そのままその場から離れました。

 

 

アクセラレータが過去に人殺しをしていた、という事実は驚きだし、とても悲しいですが、それでも私はアクセラレータにそばにいてほしいと思いました。

 

たとえ人を殺したことがあろうと、アクセラレータはアクセラレータです。

 

周りからどんな目で見られようとも、私にとってアクセラレータは優しくてカッコイイアクセラレータのままなんです。

 

だから、私は絶対にアクセラレータから離れません。

 

アクセラレータが何者だろうと、絶対に。

 

アクセラレータは明日何をしてくれてるのでしょうか。

とは言いません。でも、その代わりに、

今度は私は何をアクセラレータにしてあげましょうか。

 

とても、とても、楽しみです。




何だか最終回みたいになってしまった。

違うからね⁉

最終回じゃないからね!?

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