「お姉様、こんにちは。」
「こんにちは、モエギちゃん。」
私がお姉様と呼んだフワフワとした金髪の美女は、私の方を向いて優しげに微笑んだ。
お姉様との出会いは一年前。
路地裏に引き込まれて暴行を受けていた私をお姉様が助けてくれた事がキッカケだ。
お姉様は、忍をしていたが引退して商店を営んでいると教えてくれた。
私が人柱力だろうと、普通に接してくれる貴重な存在である。
「お姉様、お醤油と味醂を下さい。」
「お醤油と味醂ね?…合計600両よ。」
お金を渡し、商品を受け取って家に戻っていくと、視線を感じる。
「…出てきたら?」
「やっぱりバレました…さすが、学年一位の天使様…」
「なんで…周りの反応…見たでしょ?」
私は、商店街を歩き続けてきた。
道は開き、蔑まれ、陰口、悪口は当たり前。
そんな周りの状況が見えないはずはないのだ。
「周りが何を言おうと、モエギ様は僕達の天使様ですから。」
「モエギ様がなんと言おうと、俺達は貴女を追いかけます。」
「…私は人柱力よ?八尾の人柱力…人間では太刀打ち出来ない尾獣が封印されてるの。だから、避けられる。人間は弱いから。
私に近づけば同じように扱われるわよ。」
「モエギ様が僕達を助けてくれた…その時から、モエギ様に付いていくと決めています。」
「俺もですよ。
尾獣と人柱力を一緒にして白い目で見る輩よりも、モエギ様の方が100倍も信頼出来る。」
「もう…付いてこないで。」
2人を拒絶するような言葉に、2人の表情は歪む。
「後ろをちょろちょろ付いてこられると気が散るのよ。歩くなら堂々と隣を歩きなさい。」
それだけ言い、私は立ち去った。
その横を付いていく2人の影は、モエギの影の近くに伸びていた。
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庭で木遁でミカンを作り、収穫し終わった頃、見知ったチャクラを感知した。
「やぐらさん、ウタカタさんっ!」
ボフッと効果音が付きそうな程勢いよくやぐらさんに飛び込んだ私を、やぐらさんはよろけずに受け止めて、困ったような顔をする。
「なんでいつも飛び付いて来るかな…」
そう言いつつも、頭を撫でてくれる。
大人しく頭を撫でられていると、牛鬼から声がかかる。
『お前ら、なんか用事か?家に来るなんて珍しいじゃねぇか。』
「おじさんに頼まれてね。娘がちゃんと帰っているか確かめてほしいって。」
「報酬は庭の果物を好きなだけって言われた。」
『あ、そう…庭ならあっちだ。モエギ、適当に果物作れ。』
「ん。」