「お父さんは今日任務だっけ…」
『帰ってくるまでに修行と畑の収穫と餌の準備を終わらせないとな。』
「そうだね。」
庭に出て、長い棒のような物─修行用の薙刀を取り出して基本の型を繰り出す。
薙ぎ払い、突き、振り回し…演武はのように薙刀を使いこなせるのは、父親の姿を見てきたからだろう。
薙刀使いとして有名な忍であるハクレンは、家ではのほほんとした1人の父親である。
一通り薙刀の練習が終わり体が温まると、右の手のひらに刻まれている薙刀の印に触れる。
その瞬間、モエギの手には薙刀─刃が付いた、実践用の薙刀が現れた。
収納の印は、うずまき一族の秘伝技とも言える。
手に持った薙刀は、父の薙刀の様な特別な何かがある訳でもない護身用に持たされた無名の薙刀。
だが、正真正銘初めて持った薙刀で思い入れはある。
木遁で木の人形を作り、切れ味を確かめ、一通り薙刀を振り回した後は体術の修行に入る。
拳にチャクラを溜めて、地面を叩けばマンガのように地面は壊れていく。
所謂、桜花衝と呼ばれる術である。
自分で言うのもなんだが…ゴリラ化している気がする。
地面は土遁で整え、部分尾獣化─牛鬼の腕と尻尾を出し、演武を披露していく。
修行は、父が帰ってくる前に終了した。
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「木遁・実作りの術!」
ピーマン、モヤシ、人参、アスパラなど無秩序に野菜が現れる。
自分でやっておきながら…現実感が無い図である。
「木遁・収穫の術!」
野菜から手足が生えたかと思うと、自分で歩いて籠の中へ入っていき、手足は消える。
やはり、現実感が無い図である。
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「野菜炒めの完成。」
「「『いただきます。』」」
白いご飯とお味噌汁、野菜炒めと質素ではあるがかなり豪華な物だ。
米も野菜も全部木遁で補っているため、材料費も安上がりで、私のチャクラが濃いためかなり美味しく出来上がっている。
あっという間に食べ終わって、のんびり過ごす時間。
父親のハクレンが、話しかけてきた。
「モエギ、明日はアカデミーは休みだろう?
どこか出るのか?」
「はい、調味料が残り少ないため、買いに行こうかと。」
「…気を付けてね。危ない事があれば木遁飛雷神ですぐに逃げる事。」
「はい、分かってます。」
『俺もいるから大丈夫だ。』
「…そう…だね。」
父が買い出しだけでこんなにも心配するのは、親馬鹿だから…でもあるが、人柱力にとって避けられない宿命である、迫害や暴行、誘拐の危険性がある為だ。
赤い髪というのは、かなり目立つ。
うずまき一族が各地に離散して、隠れて生きている人間もいる。
ある意味、外見的特徴で特定されやすい人柱力だ。
私も7年間生きてきて、迫害の洗礼を受けた。
精神的には大人であった為、少ししんどいな…位であったが、普通の子供であれば…グレる。
いや、グレるだけであればマシだ。闇堕ちしてもおかしくない。
転生して、原作ナルトを心から尊敬した。
今でこそ、普通に接してくれる商人さんは見つかったが…その店以外では商品は売ってくれない。
道を歩けば避けられ、蔑まれる。
同年代の子供も、大人の真似をして似たような表情を浮かべる。
だが、生まれてきた事を後悔なんてしていない。母の分まで一生懸命生きると決めている。
明日買いに行くものをメモに書き出して、ベッドへと入った。