アカデミー生2年目の初夏。
7歳になった私は、アカデミー校舎前である事件に巻き込まれる。
「も、もう…やめて…」
「痛い…嫌だっ…」
「ふんっ…男女の癖に俺らに命令してんじゃねぇよっ!」
ドカッバコっと、かなり力をいれて人を殴っている事が分かる。
これは…助けなければ。
「…何してるの?」
「見て分かるだろ?コイツらの調教だよ。」
得意げにリーダー各の男子生徒が見せたのは、殴られてボロボロになっていた─白と長十郎であった。
「…調教が必要なのは、貴方のほうじゃないの?」
「な…」
何か言い返す前に、リーダー各の男子生徒の顔に平手打ちをし、殺気を出す。
「ゴミ虫の分際で人間の真似をしてんじゃ無いわよ。さっさと失せろ。」
「ひ…ヒィッ…」
全員逃げ去っていくのを確認し、殴られていた白と長十郎に医療忍術を使う。
普通の医療忍者よりも回復速度が段違いな私の医療忍術は、スグに2人の傷を治す。
「もう、痛いところは無い?」
「は、はい…ありがとうございますっ!」
「ありがとうございます!貴女の…お名前を…」
「私は、うずまきモエギ。」
私はそれだけ言い残し、立ち去った。
後ろからの熱い視線に気付かぬまま。
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「「おはようございます、モエギ様。」」
「お、おはよう…。」
いつの間にか、白と長十郎の2人が私の下僕の様になっていた。
私をモエギ様と呼び、執事の様に私の身の回りの世話をする。
(どうしてこうなった)
『(昨日助けてから2人の中ではお前は天使様になってる。こうなった人間はどうしようもない。諦めろ。)』
帰る時も護衛と称しストーキングされ、どうやって振り切ろうか悩んでいると校門に見慣れた2人を見つけた。
「やぐらさん、ウタカタさん!」
「ぬおっ!ってモエギ…毎回飛びつくのは辞めろって…ん?あの2人は誰だ?」
やぐらさんの目線の先には、少し離れた所から私達を監視している白と長十郎がいた。
「ストー…んんっ、断っても着いてくるから2人に助けてもらおうと思って。」
『あの2人がいじめられてたのを助けたら信者になった。着いてくるのは護衛だかららしいぞ。』
「そうかそうか…で、いつまで俺に張り付いているつもりだ?」
「…ダメ?」
『しばらくしたら気が済むから自然と剥がれると思うぞ。』
「なら張り付いている間に俺が言ってこよう。」
「…分かったよ。ウタカタ、頼んだ。」
やぐらさんは仕方ないなとばかりに私の頭を撫でる。完全に妹を見る目ではあるが、頭を撫でられるのは気持ちいい。
「モエギ…なんでいつも俺に張り付くんだ…」
「張り付きがいがあるから。」
「張り付きがいってなんだよ!?何基準だ?」
「…体温と匂い。暖かいしいい匂いだし…」
『お前…前世猫だったりしない?』
「に、人間だったはずだもん…多分。」
気が済んでやぐらさんから離れると、やぐらさんの顔が少し赤い事に気付く。
「やぐらさん…どうしたの?」
「…何でもない…ぞ?」
『モエギが可愛すぎるから照れてるんだな、分かるぞ。』
「な…確かに可愛いけど…そういう意味では…妹みたいなものだし…。」
『俺、〝モエギが可愛すぎるから照れている〟としか言ってねぇぞ?そういう意味ってどういうこどだ?ん?』
「牛鬼、からかわないの。」
他愛もない話をしていると、疲れた様子のウタカタさんが戻ってきた。
「アイツら…話が通じない。信者怖ぇ…。
ストーカーは辞めるように言ったが…信者状態を解くのは無理だった。」
「「…。」」
いつもクールなウタカタさんがこの様子である。
…信者の力ってスゲー!