「モエギ…!」
モエギが意識を失い、その場に倒れ込む。
上半身を抱き上げて小さな体を抱き寄せ、ボロボロになって穴だらけの忍装の上から水影のマントを掛けて隠す。
『チャクラの大幅な乱高下による一時的な昏睡。宿で寝かせれば大丈夫だ。
…白、こいつの新しい忍装を買ってきてやれ。』
「はい!」
モエギの服のサイズを知っているのだろうか…いや、知ってそうだ。
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「あの男は雲隠れのS級犯罪者、ヘビロク。
人柱力達が揃ったこの日を狙い、襲撃を掛けた。幸い死者はおらず、怪我人の治療も終了した。
…中忍試験は中止とする。昇級は各里で決めてくれ。」
人柱力と五影が参加する会議の最中、俺はモエギの心配ばかりをしていた。
白毫の術を解放し、創造再生まで使ったモエギは今も寝ている。
幾つもの剣がモエギに刺さった時には、心臓が止まるかと思った。
…寿命を減らしてまで俺を助けたモエギ。
『私は…やぐらさんが…大好きだから…!』
大好き、とは…大好きと言っても色々ある。
親愛、友愛、敬愛…恋愛。
出来れば、最後であって欲しいと思うのは我儘なのかもしれない。
第一試合が終わり、対戦相手の我愛羅を治療したモエギ。そんなモエギに、我愛羅は…頬を染め頭を撫でていた。
気持ち良さそうに目を細めているモエギと頬を染めている我愛羅を見て、黒い感情で心が埋め尽くされた。
あぁ、俺はモエギの事が─。
この時、ハッキリと自覚した。
見て見ぬ振りをしてきた感情に。
好きになってはならないと無意識にストッパーを掛けたが、感情が無くなった訳ではなかったのだ。
嫉妬の権利など、俺には無いのに。
先生が穢土転生された時、動揺し怪我を負った。
ゾンビのようなものだと分かっていても、あの日の負い目から先生に本気になる事が出来なかった。
『…父は
貴方にあやつり人形にされる為に死んだんじゃない!』
『そう…だ。やぐらが無事で良かった…』
その時に、やっとシコリが解された気がした。
「それにしても…うずまきモエギのアレはいったい…模様が現れたと思えば急にスピードもパワーも上がっていた。」
「それに、あれほどの怪我…それも致命傷を一瞬で…俺も医療忍術が使えるから分かる。あれは医療忍術というより、再生能力に近い。
…あれほどの術、リスクも大きいのでは?」
雷影と金髪の側近が口にしたので、答える。
「うずまき一族に伝わっていた白毫の術ですよ。修得には精密なチャクラコントロールが必要で、長い年月…年単位で額にチャクラを溜め、陰封印・解で解放する事でパワーアップ、スピードアップを見込めます。
創造再生・白毫の術はその白毫の術とセットの術で、致命傷を負っても傷ついた細胞を再生する力。…人間の一生で細胞分裂の回数は変わらない為、寿命を減らすことになります。」
「寿命…!」
全員絶句している。
「…うずまきと言えばゴキブリ並の生命力と長寿、封印術に長けた一族…。」
「僕の亡くなった妻も、うずまき一族でしたよ。…出産で弱って九尾を抜かれても、数分は生きていた。」
人柱力は尾獣が抜かれると即死するのは、常識だ。火影の言葉に皆黙り込む。
微妙な空気のまま、その日は解散となった。
明日、試験に参加した人柱力達の結果発表式をすると最後に通達された。
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宿のとある一室に、俺やウタカタ、メイ、モエギと白と長十郎が集まっていた。
水影とその護衛と、中忍試験の本戦出場者だ。
「全員上忍に昇級だ。おめでとう。」
俺がそう言うと、3人ともポカーンとしている。
「ぼ、僕達が上忍!?なぜ…モエギ様だけでは…そもそも僕達は試合も行っていません!」
「モエギ様はともかく…僕達はまだ弱いのに…上忍になって大きな任務が務まるとは思えません!」
「私が上忍?なんで…」
「お前らが倒したあの蛇…雲隠れの上忍が束になっても倒せないような忍蛇だ。
それを連携して一瞬で倒したそうではないか。
それに、第二試験の結果も鑑みた。
…天の巻物7個、地の巻物8個を集めた上史上最速でゴールするやつらのどこが弱いんだ。」
「1人1人が下手な上忍より強い上、連携が上手い。…俺が尾獣化しても3人には勝てないかもしれん。」
「「「…。」」」
今まで自分達の強さを分かっていなかったらしい。呆然としている。
情報を並べてみればどれほど規格外なのか良くわかる。
「モエギ、明日は試験に参加した人柱力達の結果発表の会が朝の10時からある。
全人柱力と五影が参加するお茶会みたいなもの…らしい。宿の部屋に迎えに行くから用意して待っているように。」
「は、はい。」