第四試合が終わり、第五試合に差し掛かろうとした瞬間…大きな蛇が観客席に現れ、あちこちから悲鳴が上がる。
尻尾で近くにいた忍達を一気になぎ倒し、観客は逃げていく。
「白、長十郎!」
2人にも羽根を出し、一斉に蛇へ飛びかかる。
連携の攻撃により、一瞬で細切れになった蛇。
蛇と言えば…
だが、この世界では大蛇丸は指名手配もされていないしS級犯罪者でもない。
木ノ葉の上忍だ。
ならば、誰が…そう考えていると、突然その場のチャクラの流れが変わる。
「…!五影のいる所に結界が…!」
「モエギ!無事か!?」
「我愛羅…私は大丈夫。五影のいる所に結界が張られた…尾獣の力を借りられないように細工されてる。」
上から見れば、五影と侵入者が戦闘になっている。私はその侵入者の1人、赤髪の男性を見て目を見開いた。
護衛達は…ウタカタ以外全員弾き出されたらしい。
恐らく、中に入ることの出来る人間も指定してあるかなり高度な結界。
外の人間が必死に解こうとしているが…封印術特化の人間が付きっきりでようやく解けるような結界だ。
解けそうもない。
「何が…目的なんだ…!」
我愛羅の父親も中にいるため、心配なのだろう。
焦りが見える。
「恐らく…尾獣、かしら。」
「尾獣?なぜ…」
「波風ナルトは火影の息子、貴方は風影の息子、私は…水影の…まぁ、危機になれば助けに入るような仲ね。
五影を囮に、一尾、三尾、六尾、八尾、九尾の人柱力が一気に手に入る可能性がある。
そうなれば、中忍試験で雲隠れに集まっている残りの人柱力…二尾、四尾、七尾も私達を囮にして奪える。
タダでさえ私達は受験者で体力的には万全では無い。能力に制限を掛けて、弱体化させると…。」
『あの結界の中じゃ、俺も外に出れねぇ。
墨は使えるだろうが、補正は効かねぇから弱体化は避けられん。…どうする?』
「私は行く。…罠でも、やぐらさんを見捨てるくらいなら一緒に…。」
「俺も、父上を助けたい。砂が使えるかは分からないが…」
「使えると思うわよ?多分、その砂は尾獣由来っていうより…まぁ、いいわ。一緒に行きましょ。」
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薙刀で倒れたやぐらさんに切り掛る所だった赤髪の男性─穢土転生された者の特長的な目をした父、ハクレンの薙刀を受け止める。
「モエギ…なんで入ってきた!」
「助けに来たかったから。…お父さん、久しぶりです。」
「モエギ…大きくなったな…。…ごめん、隣の奴に…操られてる。抵抗が出来ない。」
「見れば分かります。だから…私が、助ける。」
「済まない。」
薙刀同士の戦いが始まった。
キン…と鋭い音と共に、火花を散らす。父の猛攻に、封印術を使う暇もない。
隣を見れば、剣を10本以上も浮かせて攻撃する男。
こいつが、術者。
「…ハクレン、止まれ。」
男の命令に、父は私から離れた。
私の方へ向き、話しかけながらも各人へ剣での攻撃は辞めない。
あちらは我愛羅が砂で対処してくれているようだ。
「親子の感動のご対面を邪魔して悪いが…何故水影を…やぐらを助ける。父親の、仇だというのに。
憎いだろう?お前の父親は、やぐらにころ」
「違う。」
「違わない。お前の父はやぐらを庇って死んだ。殺されたんだよ、やぐらに。
俺の所に来れば、また父親と生活できる。…悪い話じゃない。一緒に五大国を乗っ取ってみないか?」
「…父は自分の意思でやぐらさんを助け、人間として死んだんです。
貴方にあやつり人形にされる為に死んだんじゃない!」
「そう…だ。やぐらが無事で良かった…」
「くっ…抵抗を…自我は残せんか。命令だ、やぐらを殺せ。」
「金剛封鎖!」
私から鎖が飛び出すと、父に巻きついて地面に拘束する。
…自我を無くせば弱体化し、封印も可能になった。
「…やぐらさん!」
怪我をして動けないでいるやぐらさんの方へ、全ての剣が向かう。
何本かは弾くが…間に合わない。
お腹が、胸が熱い。
「…モエギっ!」
やぐらさんの焦った声が遠くから聞こえる。
剣が私から引き抜かれ、男が驚いた顔をする。
「何故…そこまでする!致命傷を負ってまで助ける!」
「…私は…やぐらさんが…大好きだから…!」
息が苦しい。
だが、印を結ぶ。
「創造…再生・白毫…の術!」
額から模様が全身に伸びて、みるみるうちに傷を再生していく。
驚きで固まっている男を、思いっきり殴りつければ、ドッカーッンと大きな音を立てて沈みこんでしまった。
そのまま封印術を使用する。
結界もチャクラを溜めて蹴ると壊れ、護衛達が五影に駆け寄る。
「やぐらさん…!」
私もやぐらさんに近づき、治療を開始する。
足を切られて脇腹を刺されていたが、致命傷は避けられていた。
額の白毫は消えたが…1日経てば復活するだろう。
治療を終えると、ドスッと飛び込んで来た人間が2人。
「モエギ様!」
「無事で良かった…!」
気持ち悪い位の泣きようではあるが、私の責任でもあるため諦める。
『二人共…いい加減離れろ、ウザイし暑苦しい。…モエギに嫌われるぞ?』
2人は離れ、私の前へ正座する。
「牛鬼…手懐けたわね。」
『俺は適応力が高いからな。こいつらが何を嫌がるかは大体分かる。モエギ、そろそろ眠いだろ?』
「ん…」
返事をする前に、意識は沈む。
最後に見えたのは、やぐらさんの心配そうで今にも泣きそうな顔であった。
原作の名場面のセリフェ…