将来の夢はマダオ。   作:ら!

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第六話 人生はベルトコンベアのように流れる

3月某日。世の小学生、中学生、高校生。彼らのための春休み《楽園》が始まるまで、あと数日。

 

先日のガン⚪ム事件が落ち着き、時間が流れた。これ以来、春日と藤咲なでしこの両者のあいだには、なんとも言えない居心地の悪い空気が流れ、両者のクラスメイトのみならず、全校生徒の間で彼らのことは暗黙の了解として事件はパンドラの箱へとしまわれた。

 

当の春日と言えば、

 

「......やっぱ、エヴァンゲ⚪オンの方がよかったかなぁ」

 

と、思った程度で、反省する方向性がズレていた。

 

「広島弁といったら、ワン⚪ースの赤犬が話してるよな」

 

「あぁ。あれ、長谷川さんが声の担当してるぞ」

 

「.........え?」

 

銀時の大人の裏事情という爆弾が投下され、思考が止まった。マダオの声と赤犬の声が同じだなんて、キャラが違いすぎてビビる。方や、ホームレス。方や、海軍元帥。...やっぱりビビる。

 

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春休みを控えた聖夜学園小、四年星組の教室に件のガーディアンQチェア、藤咲なでしこがやって来た。

 

彼女は一直線に日奈森あむのもとへ向かい、ロイヤルガーデンという名のお茶会に招待した。

 

去り際に春日と藤咲なでしこの視線が交わる。藤咲なでしこの背後にスタンドが見えるのは、春日や銀時だけでないはず。だが、それも一瞬のことで、春日はそれほど注意深く思っていなかった。

 

その翌日、日奈森あむがガーディアン入りを断ったというニュースや家庭科室に不審者が侵入したという噂が流れても、春日はやっぱり通常運転だった。

 

それから担任教師の〔よいこの春休みの過ごし方〕というプリントが配られ、ホームルームがおわり、四年星組は解散となった。

 

今年の〔よいこの春休みの過ごし方〕には、ひとつ項目が加えられていた。これは毎年使い回しのプリントが配られ、〔夜の外出は控えなさい〕やら、〔釣りは大人同伴でいきましょう〕やら耳にたこができるまできいたよいこの模範行為が記されていた。そして、今年もこの使い回しが使用されるはずだった。なにも起こらなければ。つまり、書き加えられていたということは起こってしまったのである。

 

 

ぽわんぽわんぽわん【回想】

 

昨年の春休みのことである。夜の学校のグラウンドに春日はいた。その横には、ライン引きがあった。ライン引きというのは、石灰で白線を引く道具のことだ。ここまでの流れで察しのついた方はいるのではないだろうか。

 

 

 

そう、春日は夜のグラウンドに巨大な機動戦士の地上絵をライン引きを使い、描いたのである。

 

どんだけガン⚪ムが好きなのか。

 

 

 

ちなみに機種はRX-0 ユニコーン。ご丁寧にデストロイモードまで再現されていた。

 

そもそも春日がこのような奇行に走ったのには理由がある。自分の二度目の人生は何かのアニメ、漫画の世界なのではないかと考えたからである。

 

ここで注目するのは自身の名前、久我春日。ひらがなで読むと、〔くが はるひ〕。

 

はるひといえば、あのハルヒだ。宇宙人、未来人、超能力者のSF学園ファンタジーだ。

 

そして、春日はその主人公、涼宮ハルヒのように夜の校舎に忍び込み、例の地上絵を描いた。春休み明けに、春日の描いた地上絵は聖夜学園中の人間の知ることになり、以来、七不思議のひとつになっている。

 

まぁ、それから春日も事態の大きさに気付き、自分がやったと名乗り出た。

 

 

 

〔認めたくないものだな。自分自身の若さゆえの過ちというものを〕

 

以上が春日の反省文の書き出しである。いつから赤い彗星となったのか。

 

現在の心境としては「今にして思えば、あのときの自分はどうかしてた。」と、春日のなかで黒歴史となっている。

 

ぽわんぽわんぽわん【回想終了】

 

改めて、〔春休みのよいこの過ごし方〕をよむ。

 

 

〔グラウンドにはエヴァンゲ⚪オンを描こう!

 

 

ちなみに理事長は初号機を希望します〕

 

 

上記の「エヴァンゲ⚪オンの方がよかったかなぁ」という発言はここからきていたり、いなかったり。

 

 

 

 


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