将来の夢はマダオ。 作:ら!
きょうもきょうとて、春日は学校へ向かう。当たり前だ、今の春日は小学生なのだから。そして、コンビニに立ち寄り、ジャ⚪プとマガ⚪ンを購入する。もはやこの少年雑誌は春日の聖書という名のバイブルになっていた。
「春日、今週のワンパークみるからジャ⚪プよこせ。」
「...それが、人にものを頼む態度か」
「すんませんしたぁぁぁぁ!!」
春日は銀時のあつかいがうまくなっていた。
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「では、みなさんペアを組んで、お互いの似顔絵を描いてください」
いまは美術の時間である。先生のパンパンという手拍子を合図におのおのペアを組み始めた。この授業は合同授業で、星組だけでなく、月組も参加していた。
ここでひとつ言っておくが、春日はいわゆる一匹狼だ。だから、当然誰も誘えず孤立していた。
(......まぁ、余りもの同士で組むか、先生の顔描くことになるだろうなぁ)
ひとり、教室のすみに座り、マガ⚪ンを手に取り読み始める。実は、以前別の教師から注意を受けたのだが......
ぽわんぽわんぽわん【回想】
「久我くん、それは何かね?」
「ぼくの道徳の教科書です、先生」
「......ワシの目には少年マガ⚪ンとかかれてるように見えるのだが」
「道徳の教科書です、先生」
「......きみが開いているページにダ⚪ヤのエースというタイトルが見えるのだが」
「道徳の教科書です、先生」
「.........そうか。今度からサ⚪デーのmixを読むように」
ぽわんぽわんぽわん【回想終了】
あのときは先生が野球漫画に理解があって良かった。なにを言っても春日は怯むどころか、軽くかわされるので教師の間ではもはや注意するものはいない。おまけに成績優秀者という肩書きで、教師としてもやりづらく、頭がまわるからこそ結局口で負かされるのであった。
だが、先ほどから美術の教師が春日をみて涙ぐむ視線を向けており、春日はそれに気づいていた。この美術の教師は新米であるため、初々しく、春日にしてはめずらしくなんとも言えない罪悪感が芽生えた。
(......教師イビリしてるわけじゃないんだが)
そうは思っても春日のこの授業態度は授業妨害に値するかもしれない。
春日は鞄からえんぴつとスケッチブックを取り出し、ちょうどそのタイミングで声をかけてきた別のクラスの子とペアを組んだ。
「かきおわったらお互いに交換してくださいねー」
先生のその合図でおのおの交換していく。
「...はい、久我くん、描けたわ」
「...うん、ぼくもちょうど終わった」
ペアの相手から自分の似顔絵を受け取る。その絵はたしかに春日の特徴をよくつかんでいた。艶のある黒髪ストレート。無表情。一見整った顔立ちだが、やる気のない瞳は誰が見ても春日だとわかる。
一方、ペアの相手は顔をひきつらせていた。
「...こ、これが、わたし?」
そう、彼女が手にしているスケッチブックには、かの有名な機動戦士、別名、白い悪魔が描かれていた。
かろうじて目の部分にモザイク線をひいているが、明らかにモビ⚪スーツだった。ちなみにRX-78-2 型だ。
決してふざけていたわけではない。春日は人物画よりもガン⚪ムを描きたかったという気まぐれな理由で描いただけだ。
「...あー、藤咲さん?
〔アムロ、行きまーす〕っていってみなよ!大丈夫!困ったときは〔オヤジにもぶたれたことないのに...!〕って言えばいいよ」
春日なりの謝罪とフォローのつもりだった。
ガーディアンQチェア、藤咲なでしこのキャラチェンジが暴走し、普段の彼女からかけ離れた広島弁が降臨したのは言うまでもない。