将来の夢はマダオ。 作:ら!
それはある日の休日のこと。
春日は校庭にいた。こんな寒空のなか、わざわざ外に外出することはめずらしい。春日は正真正銘のこたつ族で暖かいこたつに籠るのが常だ。
そんな春日が外にいる理由はズバリ、雪が積もったからである。
マフラー、手ぶくろ、コート、耳当て、ニット帽、ホッカイロ、すべての装備を装着した春日。外見がベイマッ⚪スにみえるのは気のせいだ。
「あ!目が死んでいるおにいちゃんだ!」
トテトテと駆けてくるのは、あむの妹、日奈森あみ。あみはあむといっしょに、雪だるまをつくるために校庭に来ていた。
「あー。覚えてるよ、
ひまわりちゃんだったよね?」
まったく検討違いの答えだ。
「久我くん、それは消しゴムしんちゃんの妹の名前じゃん!この子はあみ!」
「おー。そーだった。悪ィ、悪ィ。」
「いいよ、あみ、許す!それより、いっしょに雪だるさん、つくろ!」
そんなこんなで春日たちは雪だるまをつくることになった。
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ところ変わってロイヤルガーデン。
なぎひこの新J就任がきまり、唯世と、なぎひこ、空海が集まっていた。空海曰く、裏ルールがあるらしい。簡単にいうと、王さま(唯世)のわがままをきくこと。基本的に女の子には紳士的な、なぎひこだが、男には手厳しい。マッサージをさせると、指の力が強く、唯世のリアクションタイムになっていた。そして、話はなぎひこの女装に移り、二人はなぎひこの機敏に触れてしまった。
「そんなに言うなら履いてみる?」
なぎひこにロックオンされたふたりに逃げ場はない。
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そして、校庭では。
「日奈森よォ、お前何?何勘違いしてるのか知らないけどよ。
これ、アレだよ。
ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だよ」
「アームストロング2回言ってんじゃん!あるわけないでしょ、こんな雪だるま!!」
真面目な顔つきで語る春日。どうやら今日のツッコミはあむのようだ。銀時も春日に続けて言う。
「キャラなりキャラなりって最近過敏になりすぎてんだよ。お前は意識しすぎ。
別におれが春日とキャラなりしてないからとか不満におもってねーし?×たまの浄化のオイシイところ持っていかれて悔しいとかおもってねーし?
ったく、最近の小学生は大小の雪の塊が2つできてるのが雪だるまだとか言ってすぐ話をそっちに持っていくんだよ。」
「それは《芸術》をわかってないね。あむちゃんしばらくボクに話かけないで」
ミキまで頭のネジがおかしくなったようだ。
「いや、だって、明らかにおかしいじゃん!じゃあ、一体何なの、それ?」
あむがひとり疑問に思っていると、結木ややが校庭にやって来た。
「あれ、あむちーだ!久我っちも!みんな来てたの?」
「あ、やや!ちょっと、久我くんたち止めてよ」
ややがあむに「任せて!」と、サインをした。そして、例のあれをみた。
「なぁんだ!ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だ!完成度たけーなオイ!!」
「えぇぇぇぇぇ!!なんで知ってんの!?あるの?マジであるの?あたしだけ知らないの!?」
「江戸城の天守閣をぶっとばし江戸を開国させた決戦兵器だよ、あむちー。社会で習ったじゃん!」
「何、こんな格好悪い大砲にやられたの?あたしたちの国は!?そもそも江戸って無血開城じゃなかった!?」
あむのいう江戸と、ややのいう江戸。ふたりの《江戸》違いで会話が噛み合っているようで通じてない。
続けて、真城りまがやって来た。雪像はあみのリクエストですべり台が設置されていた。ソレを視界に入れたりまは思い出したかのように言う。
「アラ?ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃない。完成度たけーなオイ!!」
「もう原型ないのになんでわかるの!?」
「惑星セザーンとキャーシャーンの星間戦争においてセザーン側を勝利に導いたメゾット砲とは裏腹に、ずっと倉庫に入れっぱなしだった悲しき兵器......笑えないわね」
相変わらず笑いに厳しい少女だ。
「どうでもいいし、長い!!
一旦休憩して寒いからロイヤルガーデンで暖まろ、みんな!」
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一行はロイヤルガーデンへ向かう。あむが扉を開けると
何故か女子制服のスカートを履いた唯世と、なぎひこにスカートを履かされている空海の姿があった。
それをみた春日はスマホをかざしながらシャッターをきり、言った。
「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか。完成度たけーなオイ!」
「やあ、あむちゃんたち。バカ面下げて本当にしょうもないアームストロングでしょ?」
目が笑っていない笑顔のなぎひこが軽く挨拶する。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲は周知されているらしい。
「えぇぇぇぇぇーーー!!!!」
あむのツッコミも崩壊した。