将来の夢はマダオ。   作:ら!

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六年生篇
第三十八話 男にはカエルに触れて一人前みたいな訳のわからないルールがある


歌唄とガーディアンとの対立、からの和解から数日過ぎたころ。

 

聖夜学園小は冬休みをむかえていた。

 

ガーディアンのJチェアだった、三条海里は故郷の山口へと転校し、Jチェアは空席になった。

 

Kチェアの辺里唯世、ガーディアンOBの相馬空海は新たなJチェアの確保のために奔走していた。

 

だが、なかなか後任は決まらず、二人は理事長からの呼びだしで学園にいた。

 

「お久しぶり、相馬くん」

 

理事長の紹介で出てきたのは、フランスへ留学した藤咲なでしこだった。

 

「な、なでしこ!?どうしてここに?!てか、お前、帰ってたのか!!?」

 

「ふふ、髪が乱れるわ、相馬くん」

 

久々の再会に空海はなでしこの頭をガシガシとなでる。

 

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「お待たせ」

 

「ん?なんで男の格好してんだ?」

 

「ぼくの本当の名前は藤咲なぎひこ。正真正銘の男の子だよ」

 

なぎひこは聖夜学園小の男子生徒の服を着ていた。なでしこの姿を見慣れていると、不自然に感じる。

 

「唯世は、知ってたのか!?」

 

「うん」

 

「だって、相馬くん運動以外ダメそうで。」

 

はぁ、とため息を吐きながらなぎひこは言う。

 

「......お前、なでしことキャラちがくね?(苦笑)」

 

「家訓で、ね。ま、これからもよろしく」

 

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ロイヤルガーデンへ向かう途中、偶然にも三人はあむと遭遇した。

 

「双子なんでしょ!海里がいなくなって寂しいけど、なぎひこがJになるんだったら頼もしいね!!」

 

なぎひこ とあむは面識があるらしい。だが、なぎひこはギクシャクした態度で笑顔がひきつっていた。その場をなんとか乗り切るも、唯世と空海は追い討ちをかけるようになぎひこの外堀を埋めていく。

 

 

「そもそもぼくは一時帰国したんだから、やらないって。ほら、久我くんはどうしたの?」

 

なぎひこはそれでも反論し、その矛先を春日へ向けた。

 

 

「声をかけてみたんだけど」

 

「......しばらくみないあいだにパワーアップしてるぞ、あいつ」

 

空海は疲れきった声で春日を思い出した。

 

 

 

 

ぽわんぽわんぽわん【回想】

 

 

「久我くん、お久しぶり」

 

「よ!相変わらずこの部室は物騒だな。......ん?なんだ、それ」

 

ヘロヘロ状態のふたりは春日に挨拶をかわした。ふと、空海が春日の部長と書かれた机の上にある一点に気づく。

 

「我がものつくり部の技術力を結集したメガネ型ロボット、ソンタくんだ」

 

ポツンと机の上にメガネが置いてある。一見するとただのメガネにみえるが、春日はそれを自信満々に紹介した。

 

 

『春さん、ぼくの名前は新八だって何度言えば分かるんですかァァァ!』

 

ソンタくんこと新八が独特の機械音でツッコミが炸裂する。どうやらこのメガネ型ロボットはAI、人工知能らしい。よくしゃべる。

 

「このロボは、言わずとも人の言うことを推し量ることができる、《忖度》機能を兼ね備えた最新式だ。オプションでツッコミモードも搭載している。さ、新八」

 

『わかりましたよ、春さん。』

 

唯世から用件が書かれた紙を受けとる。

 

メガネ型ロボット新八がフレームを点滅させ、解読する。

 

『......えーと、《新Jチェアを命じる。》だそうですよ、春さん』

 

「面倒だから断っといて新八」

 

『......だそうです。申し訳ないですが、今回はお引き取りください。辺里さん、相馬さん』

 

ぽわんぽわんぽわん【回想終了】

 

 

 

 

 

「圧倒されすぎて、取りつく島もなかったよ」

 

「あぁ。君たちも苦労してるんだね」

 

なぎひこはその場にいなかったが、容易に想像できた。春日が相手だと妙に納得してしまう。なぞの説得力をあたえる、それが久我春日だ。

 

「と、いうわけで」ポン

 

「なぎひこ」ポン

 

唯世と空海がなぎひこの肩にそれぞれ手を置く。

 

「Jチェアになってよ!」

 

にかりと、某インキュベータみたく勧誘する。

 

「んなっ!ぼくはまだ了承したわけじゃ......」

 

「日奈森、すげー楽しみにしてたし、久我もある意味喜ぶんじゃね?」

 

 

「うっ!!......

 

どうすんだ、ぼくぅぅぅぅ!!」

 

「「新J誕生!!」」

 

ひとまずガーディアンは安泰である。まる。

 


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