将来の夢はマダオ。 作:ら!
実は真城りまと久我春日が直接対面するのは今がはじめてではない。球技大会より以前にふたりは会っていた。それは決していい意味ではなくわるい意味で、互いの印象を受けた。
事件は、放課後の六年星組で起こった。あむが春日のもとに派遣されたが、結局放課後になるまであむのものつくり部の部室攻略は続き、やっとこさ春日を連れ出したとおもったら、放課後だったというわけである。教室に着いたとき、あむの様子がおかしいと思ったとたん、春日をおいて駆け出してし去ってしまった。
教室の様子とあむの泣きそうな顔をみて春日はすべてをさとり、勢いよく扉をあけた。
「てめーら、歯ァくいしばれ!!」
そうして始まった春日の猛攻。それは、学園生徒のなかで噂される【闇討ち】であった。曰く、目があったら地獄の底まで追いかけられる。曰く、嬉々とした表情で相手を痛め付ける。そして、ターゲットとされた相手に逃げ場はない。
そんな状況のなかでひとりの目撃者があらわれた。
真城りまである。
彼女は教室の様子をみて凍りついた。思わず自身のくちもとに手をあてる。
「おいおい、もっと啼けよ。それぐらいじゃ足りねーだろ?何ビビってんだ?大丈夫だ!ちょっと新しい扉を開けるだけだ」
なぜなら、春日が少年たちに向かって鬼畜ぶりを発揮していたからである。一言でいうなら、それは、ドSだ。春日の背後に悪魔の尻尾がみえる。健全な少年少女がみる光景ではない。自主規制させていただく。
最後のひとりが気絶したところで春日はひとりごちた。
「......あ~あ。もう少しでこいつの心へし折れると思ったのに。ちょうきょ......加減って難しいなぁ」
「調教っていいかけてるうぅぅぅ!!こいつまじのSか?こんなとこ誰かにみら、れ......」
「?......どうした、ぎんと、き......」
春日が振り向いたときその場の空気が凍った。春日と銀時は扉にたたずむ少女、真城りまを凝視した。
「「「............」」」
なぞの緊張感がおそう。
(おいいいいいい!!みられてんぞ!おもいっきしみられてんぞ!!)
(落ち着け、銀時。まだヤツはなにもいっていない。ここはぼくにまかせろ。)
「......やぁ、お嬢さん。いい天気だねぇ。ここはぼくと新たな扉を開けてみないかい?」
(おいいいいいい!!それ、Sの扉だよな?!何いってんだぁぁぁ!!ほらみろ、アイツドン引きしてんぞ!!!)
(そんなことはない。次こそ大丈夫だ。まかせろ。)
無表情をつとめながら、死んだ魚のような目をした春日がりまに向き合った。
「......ふむ。ちなみにお嬢さん。どこからみていた?」
「......貴方が恍惚とした顔で『もっと啼け』って言ってるところから......」
「「アウトオオオオオ!!!!」」
-------------
だから今、春日が自分に向かって手を振っても他人の振りをするのは仕方がないとりまは考える。気まずそうな顔をしているのは春日の鬼畜ぶりを思い出したからである。
(他人のふり、他人のふり、他人のふり.........)