将来の夢はマダオ。   作:ら!

26 / 47
第二十三話 男は心に固ゆで卵

六年星組の教室は、ギシギシと、ぎこちなくどことなく居心地がわるい。それの理由はただひとつ。男子と女子の勢力争いだ。

 

だから、春日は、休み時間は教室にいない。どこにいるかというと、部室だった。

 

黙々とガン⚪ラに熱中している。カラーコーティングにこだわりを抱いているようだ。

 

「.....................」

 

集中しすぎて、もはや声も発することはない。

 

そのオーラは、わざわざ教室から派遣される生徒にさえ隙を与えない。ちなみに今日の派遣生徒は日奈森あむだ。

 

「......久我くん?授業はじまるよ」

 

恐る恐るあむは、春日に声をかける。ガーディアンを通じて春日と面識があるとはいえ、春日とあむは、まだ知人の域だ。廊下ですれちがって、あいさつする程度、そもそもあまり会話したことがなかった。

 

そして、あむが春日を遠い人と感じる理由は《狂乱の貴公子》というウワサが原因だった。たとえば、学校のグラウンドにガン⚪ムの地上絵をかいたとか、鬼の教師を前にして「道徳の教科書」だといい放ったとか、理事長と親密な関係だとか、逆鱗にふれたら闇討ちされるだとか、.........いいあげたら山ほどありそうだ。まさに《狂乱》。狂っている。容姿が整っているのにこのザマであるから、それを皮肉ってだれかが《狂乱の貴公子》と呼び出したらしい。いまでは、ものつくり部の部長の肩書きで理事長やガーディアンを相手取り、聖夜学園の裏番長としての存在感もある。

 

「......なんで、あたしがこんなことを」

 

「あむちゃん、じゃんけん弱いからね!ドンマイ!」

 

「あむちゃん、久我くんにヒビってないではやく!!」

 

「あきらめたら試合終了ですよぉ~」

 

 

あむのしゅごキャラ、ラン、ミキ、スゥが励ますが、春日がいる部室は入室する時点で覚悟が必要だ。この前は、目の前から槍が飛んできた。日に日にからくりが悪化していると感じるのはあむだけじゃない。

 

 

--------------

 

「いつもわるいね、日奈森」

 

「そう思うなら、あの罠をどうにかして......」

 

 

ふたりが話しながら、教室へ向かう。

 

あむが教室の扉を手にかけようとしたとき、中から声が聞こえた。

 

「やっぱ、りまさまだよな!」

 

「だな!日奈森も前はクールでかっこよかったのに最近女子と群れだしてらなんからしくなくなったよなー」

 

思わずあむは扉から手を離した。その様子に気づいた春日が声をかける。

 

「......日奈森?」

 

春日があむの横顔をうかがおうとしたとき、あむは突然、駆け出して去ってしまった。

 

でも、春日はあむの横顔をみた。

 

 

「......あいつ、泣いてた」

 

 

ぼそりと春日はつぶやき、先程のあむと同じように教室へ近づく。すると、あむが聞いてしまったことを春日はすぐに悟った。

 

===ガーディアンとあむちゃんのことよろしくね====

 

「......あの女狐のいうこときくのは癪だが、泣いてたよな」

 

コクりと銀時と目をあわせた。

 

---------キャラチェンジ!

 

 

--ガラン!

 

それを合図に勢いよく扉を開けた。

 

 

 

 

「箱根八里は馬でも越すが、爺を訪ねて三千里は泣かせてくれるなァ

 

てめーらもこの世の峠は越えらんねーだろ?

 

西が曇れば涙雨 東が曇れば恨み雨

 

どうせこの世は生き地獄だ

 

替わって はらそうぜ女の涙をよ。 

 

 

 

 

 

っつーことで、てめーら歯ァ、くいしばれ!!」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。