将来の夢はマダオ。   作:ら!

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第十七話 考えたら人生ってオッさんになってからの方が長いじゃねーか!恐っ!

聖夜学園の校区内にある、とある公園のベンチに二階堂悠はひとり、暇そうにしていた。

 

「......あーあ。これからどうしよっか」

 

彼はエンブリオ計画に失敗し、イースターにリストラを宣告された。

 

そんな彼の様子に小さな影が近づいた。

 

「おじちゃん、どうしてここに座っているの?」

 

純粋なこどもの問いに彼は答えた。

 

 

「一時のテンションに身を任せたからだよ。

 

人生は長いから、後先考えずに行動しちゃいけないよ。」

 

と言ったが

 

「ばいばい、まるでダメなおっさん。

 

 

略してマダオ。

 

 

......あ!おねーちゃーん!」

 

 

こどもは姉をみつけ、去っていった。

 

「......はは、まったく最近のこどもは...

 

 

アレ、おかしいな。

 

 

前が霞んでみえないや。」

 

 

 

-------------

 

......『マダオ』

 

 

いまのぼくにはお似合いの言葉だ。

 

 

 

少し前まではイースターの幹部として出世街道まっしぐらだった。もののはずみでしゅごキャラを連れ去り、ぶっ飛ばされてから、地位も仕事も、自信も失い、妙なツレを手に入れた。ツレと言えるのかわからないが、しゅごキャラなのにどこか自分と同年代の近さを感じる。

 

 

ツレは、ぼくにグラサンを取れと言う。でないと仕事の面接が受からないと。いやいや、ぼくはグラサンなんてかけてない。これはどうみてもメガネだ。......そうだよね?そうだといってほしい。

 

そう反論したら、ツレは諭すように言い出した。そしてぼくのメガネをとり、グラサンにかえた。

 

 

わかった、ぼくがかけているのはひとまずグラサンとしよう。

 

 

こうして、ぼくのメガネへのこだわりをヤツは崩した。

 

 

「二階堂さんよぉ、信念持ってまっすぐ生きるのも結構だが、一ぺん手放して曲がってみるのも手なんじゃねーの?曲がっているうちに、絶対譲れない一本の芯みてーなもんも、見えてくんじゃねーか?」

 

 

 

 

 

とうとうぼくは、グラサンを取って、無事タクシー運転手に合格した。あれ、ほんとぼくなにやってるんだろう。

 

 

 

 

 

人を運ぶ仕事をしていると、どいつもこいつもちゃんと「目的地」がある。

 

だが、ぼくは目的地《夢》を見失った。目的地《夢》へたどり着くための道に迷った。

 

 

そんなとき、ぼくのタクシーに乗り込んできたのが、ぼくと同じ目的地のないようにみえるしゅごキャラ、銀時だった。ちょっとキミ、タクシー代ちゃんと払えるのかい?

 

タイミング悪く、銀時がいる時に拾った客が、傲慢な態度の元上司だ。

 

元上司をイースター本社に運ぶ途中、タイミング悪く、産気づいた妊婦に出会ってしまった。

 

「おまえらのような下等な人間のガキが一人や二人どうなろうと、知ったことではない!本社へ向かえ!!!」

 

 

そう騒ぐ元上司を、ぼくはつい、ぶっ飛ばして、産気づいた妊婦をタクシーに乗せた。

 

 

銀時は言う。

 

「二階堂さんよぉ、アンタやっぱグラサンの方か似合ってんな。」

 

 

 

だから、ぼくがかけているのはメガネだって言ってるじゃないか。

 

 

 

-------------

 

ある日の公園で、ぼくはまたあのこどもに出会った。

 

でも今度のぼくは違う。

 

仕事をなくしてここに居る理由。

 

「自分の芯を通したからだよ」

 

胸を張って、そう言い切れる。

 

不器用なりにぼくらしく生きようと、ぼくは決めた。

 

「不器用って言葉使えばカッコつくと思ってんじゃねーよ、マダオ」

 

いまの声は舌足らずのこどもではない。となりをみると、懐かしい顔をみた。

 

 

 

「きみ、ここにいたらマダオになるぞ。

 

ほら、きみをさがしている人が呼んでる」

 

「あみー!どこにいるのー!帰るよー」

 

「あ!おねーちゃーん!まってー!」

 

こどもが去っていく。

 

「......久しぶりだね、

 

 

 

 

 

久我くん。」

 

ふらりと久我春日は二階堂をみた。

 

「おぅ。......思ってたより元気そうだな」

 

「それで、ぼくに何か用かい?」

 

すると、春日は二階堂に茶封筒を投げ渡した。あわてて、受け取ろうとした二階堂は足をひっかけ転んだ。

 

「おいおい......

 

ところで、ぼくが創ったものつくり部の顧問サンはここで何しているんだ。」

 

 

「ぼくはもう、教師じゃ......」

 

「おまえ、知ってるだろ?顧問がいないと部として認めねーってガーディアンが言うんだよ。」

 

二階堂は茶封筒の封をあけた。

 

〔聖夜学園教員採用要項〕とかかれている。

 

 

「どうするかはおまえ次第だ。

 

 

 

......銀時が世話になったな。ありがとよ」

 

片手をあげ、春日は立ち去った。

 

 


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