将来の夢はマダオ。 作:ら!
「誰からの電話だったの?」
「......野暮なこときくな。おまえは浮気をうたがう主婦か」
春日は呆れた視線をなでしこにおくった。
「あら、やだ。私たち許嫁じゃない」
不器用な恋愛の会話だと思うが、春日となでしこの背後にはそれぞれ重い空気が漂っていることを忘れないでほしい。
「「「「い、許嫁ぇぇぇ!?」」」」
誤解とは、こうしてうまれるのである。
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聖夜学園では、スーツは皺だらけでだらしない格好、おまけに橙色の髪を寝癖もそのままに無造作に束ね、眼鏡を掛けたダメ教師を装っていた。あむを「ヒマ森さん」と呼び、こどもたちのこころのたまごを壊していた。
だが、いまは、髪形を整えて眼鏡を外し、奇麗なスーツを着用している。1つの事に集中すると寝食すらも疎かにする性分で、何故か連れ去ったスゥに心配されている。
彼、二階堂悠は、子供の頃はロボットエンジニアを目指していた。だが、恩師の退職や両親の猛反対に遭い、自分の進むべき道を見失った。
その迷いから生まれる前のしゅごたまを事故で壊し、夢を捨てて屈折した人間として育っていった。だから彼はしゅごキャラを見ることができる。
イースター社に入社後にエンブリオ探しを目的に聖夜学園に潜り込んだ。こども達のこころのたまごを壊すとき、罪悪感に苛まれることもあった。
「昔、定春1号と名付けた、たまごを飼っていたんだ。だけど、寝ている間に握りつぶしたのかな、こわしてしまった。あれから、たまごに自ら触れるの禁じたよ。......おかげで三食卵かけご飯も食べられなくなった。」
寂しそうに二階堂はスゥに当時の心境を吐露した。
「せんせ~、
三食たまごかけご飯はからだにわるいですぅ」
スゥは二階堂の健康状態を心配していた。
「......そうだね。それからは三食お茶漬けの生活が始まったよ。
力のコントロールが下手なぼくじゃみんなを不幸にしてしまう。でもキミならこの装置とでも釣り合いがとれるはずさ。
やっと、エンブリオが手に入る!
.....これは神様のプレゼントだ!」
二階堂は実験装置を目の前に怪しげに笑った。
スゥは怯えの色をみせ、何も言えなかった。
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「......スゥが、連れ去られた......あたしのせいだ」
「あむちゃん......」
あむのしゅごキャラのラン、ミキがそっとあむに寄り添う。
落ち込むあむにかける言葉がみつからず、空気が沈んでいた。だが、春日は目線を唯世、なでしこ、やや、空海へたどり、最後にあむに向けた。
「日奈森、覚えとけよ。ぼくらは正義の味方でもてめぇのしゅごキャラの味方でもねぇよ。
......てめぇの味方だ!」