将来の夢はマダオ。 作:ら!
「御用改めだぁ!ものつくり部ならびに久我春日。お前は包囲されている!」
春日にややのスピーカーで発せられた声はもちろん耳に届いた。
ひやりと背筋に汗が流れる。
春日には心当たりが多すぎた。
たとえば、ドラ⚪エ休暇は現在進行形で絶賛プレイしている。
たとえば、⚪フォーアフターなる改造は現在進行形でガーディアン共がその餌食にあっている。
たとえば、〔クラブ創設申請書〕は現在進行形で理事長の承認で押し通している。
たとえば、ガーディアンのQチェアの藤咲なでしこは現在進行形で自分の許嫁(仮)である。
例をあげたらキリがない。
そして、背筋にひやりと汗が流れたのは銀時も同じだった。
「おい、春日。おまえ、まさか家賃滞納しているのか?」
銀時の頭に浮かぶのは、家賃催促のババアの姿だった。
「家賃?んなわけねぇだろ」
春日が銀時にそう答えたときだった。
「おどりゃぁぁ!ワレがしたんじゃろうが知っとんでぇぇぇ!!」
春日が最後にみたのは薙刀をかまえ、血走った目をしたなでしこの姿だった。
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(...あぁ。なんてこった、パンナコッタ。せっかくのドラ⚪エが!)
春日の心中は、ドラ⚪エをセーブできず、強制終了させられたことが占めていた。せっかく発売日に手に入れたドラ⚪エを中断させられた。3⚪S版と⚪S4版の両方を手に、同じく話がわかる銀時とそれぞれドラ⚪エに熱中していた。ドラ⚪エ休暇を取るほどに。
そんな時にものつくり部を訪れたのが、事もあろうかガーディアンだった。
「久我くん、二階堂について何か知ってない?どこにいるとか。」
ガーディアンを代表して、辺里唯世が春日に尋ねた。
「何でもいいの、教えて。これはガーディアンとしての仕事なの」
続けてなでしこが言った。
「仕事だぁ?てめーら仕事なんかしてたのか?街見てみろ、×たまが好き勝手やってるぜ」
春日は皮肉った顔で言い返した。驚いた顔で相馬空海が言う。
「おまえ、×たまを知ってんのか?!」
「んなこたぁ、今はどうだっていい。二階堂だろーが、ガーディアンだろーが、関係ないね!
ぼくは自分の肉体が滅ぶまで、背筋伸ばして生きてくだけだ!!!」
これは、一匹狼の小学生の話である。
聖夜学園の勢力は弱体化し、学園のやりとりをするガーディアンもついに弱肉強食の時代に突入した。
その危機的な教育現場の穴埋めに現れたのがフリーランス......すなわち、一匹狼のスチューデントである。
たとえば、このこども。
群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門知識のライセンスと叩き上げのスキルだけが春日の武器だ。
小学生、久我春日。
またの名を、狂乱の貴公C
『ぼく、失敗しないので』----
-----ピッ
「あ、もしもし?」
「「「「「着信音かよ!!!」」」」」
せっかくいつもの死んだ魚のような目がきらめいたのに、まさかの着信音である。まるで図ったかのようなタイミングだ。あの独特の冷淡な語り口調で脳内再生すると、某医療ドラマを思い出すのはなぜだろう。狂乱の貴公Cとはアルファベットを無理やりくっつけた。
それにしてもこの部室はよし⚪と新喜劇を再現しすぎだ。
とりあえずガーディアンのズッコケのタイミングにはなまるをあげたい。