将来の夢はマダオ。 作:ら!
5月。ゴールデンウィークを終え、少し疲れた顔がうかがえる。どこにいっても人だかり、人に揉まれ、迷子放送のお世話になった小学生の数は知れず。
五年星組の担任もようやく退院し、復帰した。
ドジなのか、よく転ぶ姿をみかける。
久我春日はその担任から呼び出しを受けていた。
「久我くん、一応この学校は何かしらのクラブに入らないといけなくてね...」
「.........」
「それで、キミはどのクラブに入るかな?」
「わりぃ、ねててきいてなかった」
「...やけにおとなしいと思ったら...もう一回説明するよ...」
こめかみをひくつかせながら、もう一度春日に説明を始めた。彼はとんでもないクラスの受け持ちになってしまった。ジョーカーの日奈森あむ。同じくガーディアンQチェアの藤咲なでしこ。そして目の前にいるおよそ小学生には見えぬ久我春日。
良くいえば、個性あふれる生徒だが、逆にいうと一癖も二癖もある生徒だ。
いまだって、もう目が半分閉じている。去年の担任はこの時点であきらめたらしいが、自分はそうはいかない。なんとしてでもやってやる。もはや意地だ。そして、これをきっかけに春日と彼は長い付き合いになることは誰も知らない。
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と、いうわけで春日のクラブ見学は始まった。はじめに言っておくが、運動部はスルーだ。ただでさえ、家に帰ると祖父との稽古があるのだ。いくら無邪気な小学生の身体といえど、限界がある。無駄に疲れたくないのが本音だ。
当てもなく歩いていると、校舎とはべつに建物をみつけた。中へ入ると、映画館のように真っ暗で、春日は近くにあった椅子に腰を掛けた。
「映画なんて久しぶりだなぁ」
「ガキみたいに はしゃぐなよ、春日。
すみませーん!キャラメルポップコーンといちご牛乳おねがいしまーす!」
「どの口がいってんだよ!おまえが一番はしゃいでんじゃねぇか!
あ、いちご牛乳を追加でおねがいしまーす!」
ふたりがギャーギャー騒いでいると、どこからか人影があらわれた。
「残念だけど、ここは映画館じゃなくて、プラネタリウムなんだ。
それにしても今日はお客さんが多い日だ」
どこかでみたことのある青年がそう告げた。春日がそう感じるのも無理はない。ガーディアンのKチェア、辺里唯世の面影を感じる。いや、この場合、辺里が青年に似ていると言った方がしっくりくる。
「さてさて、キミたちはなにを求めてここにたどりついたんだい?」
「キミたち?...銀時が見えるのか」
「まぁね。ぼくはこのプラネタリウムの管理人とでも言っておこうか。」
「...ここにいる以上は何処かに属さなきゃいけねぇらしい。だが、生憎ピンとくるのがなくてな。」
「そうそう。おまけにこいつといったら、一匹狼気取って、ろくなやつじゃねぇし」
「ぼくもお前みたいなマダオはみたことねぇよ」
「まぁまぁ、ふたりとも。
何も選択肢はそれだけじゃない。ないのならば、つくればいい。」
「つくる、か。ありがとよ、音無響子さん」
「ぼくは未亡人じゃないよ。プラネタリウムの管理人さ、惣一郎さん」
「......あんたとは気が合いそうだな」
そう言って春日は立ちあがりこう言った。口元はニヤリとニヒルに笑っている。
「犬でもなけりゃ、しんでもいねぇよ。
宇宙一馬鹿なサムライだ、コノヤロー」
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「そういうことだから、ここにサインしろ」
半ば脅しのように春日は告げた。用紙は〔クラブ創設申請書〕と書かれてある。
「...なになに、〔ものつくり部〕?」
軽い気持ちで春日の担任は承諾した。彼はやっと、春日がクラブに入ったことが喜ばしかった。それがたとえどんな団体であり、形でも。
ものつくり部
部長、久我春日。
部員、1名。
マスコットキャラ、銀時。
顧問は もちろん二階堂悠である。