可愛いですよねそんな沖田さんが異世界に行ったらどうなるんだろうという
自己満足な物語です
沖田総司。幕末の京都を中心に活動した治安組織、新選組の一番隊隊長。
剣客集団としても恐れられた新選組において、一番隊は剣豪ひしめく新撰組の中でも最精鋭の部隊で、芹沢鴨暗殺、池田屋事件など常に新撰組にとって重要な任務をこなしたといわれ、その中でも最強の天才剣士と謳われた。
だが、病により床に伏し、局長や副長など新撰組の仲間達と共に最後まで戦うことは叶わず、没した。
その事を彼女は悔いており、新選組の隊士としては失格であると思い込んでいる。
―――同時に、彼女は生前果たしたくとも果たせずに終わった彼女の悲願を成そうと決めた。
「最後まで戦い抜くこと」。これが彼女の願いであった。
「あぁ、最後まで近藤さんたちと戦い抜きたかったなぁ」
少女は呟きそして思う自分が病弱でなければもっと仲間と戦えていたのではないかと最後まで戦えないのは新選組として失格だと。
六畳間の和室の中央で床に伏している少女はそんなことを考えていた。
すると何かの気配がしてその方向を向くと一通の手紙があった。
「一体誰でしょう今の私に手紙を送る人なんて」
不思議に思ったがそこに手紙があるのはまぎれもない事実少女はその手紙を手に取り封を開けたそこには
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能ギフトを試すことを望むのならば、己の家族を、財産を、世界の全てを捨て、我らの"箱庭"に来られたし』
突如視界がひらけ空に放り出された気配がする方向を見れば同じように空に放り出され自由落下している少年少女たちがいた
あぁこれは夢かもしくは死後の世界かありえない現状に考えることを放棄しかけたが自分の体に違和感を感じた。
その違和感とは床に伏していた時と違い体の調子が異様に良いのと自分の服装が和服にブーツという病に侵されていた時と全く違うものだったからだ。
それと共に自分の真名をむやみやたらに明かしてはならないと言う言葉が頭をよぎった。
そんなことを考えている間にも落下は止まるわけもなく湖に四つの水柱が上がった
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺り込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「……。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
「……危ないと思うけど」
二人の男女はどうやら気に入らなかったらしい。互いにフン、と鼻を鳴らして服の端を絞り始めた。
その後ろに続く形で、もう一人の少女が上がって来る。同じ様に服を絞る彼女の隣で、三毛猫が全身を震わせて水を弾いた。
少女は服を絞りながら、辺りを見回す。
「ここ……どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
適当に服を絞り終えた少年は、軽く外に跳ねた髪の毛を掻き上げる。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。――私は久遠飛鳥よ。以後気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「……春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。次にハイカラな和装に身を包んだあなたは?」
少女――飛鳥に指摘され、三人に視線を固定する。
三人とも一応の聞く体制は整っているようだ
「セイバーです」
「ええ、よろしくセイバーさん。…最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよお嬢様」
そんな十六夜を、私は興味深そうに見つめてる。
「取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
自分の体の調子を確かめるセイバー。
そんな彼らを物陰から見ていた黒ウサギは思う。
(うわぁ…なんか問題児ばっかりみたいですねぇ…)
召喚しておいてアレだが……彼らが協力する姿は、客観的に想像できない。黒ウサギは陰鬱そうに重苦しいため息を吐き出した。
とここで十六夜がセイバーに向かって質問を投げかける
「なぁセイバーって言っていたがそれ本名じゃあないだろ?」
その通りだがこの者達は信用できないそれに落ちてくるときに頭によぎったあの言葉に従うべきだと勘が言っている。
「その通り本名じゃあないですよまだ私は貴方達を信用できませんし」
「ふーん、じゃあ俺たちが信用に値するなら教えてくれるんだな」
「えぇ、そのときは必ず」
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」
「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの」
「………。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
(全くです)
黒ウサギがこっそりツッコむ。
「――仕方ねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも聞くか?」
物陰に隠れていた黒ウサギは立ち上がろうとしていたのを咄嗟に止め、もう一度しゃがみ込む。
四人の視線が黒ウサギが隠れる物陰に集まる。
「なんだ、貴方も気づいてたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの二人も気づいてたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でも分かる」
「あんな視線に気づかなければ新選組失格です」
「……へぇ?面白いなお前ら」
軽薄そうな笑みを浮かべてはいるものの、十六夜の目は笑っていない。三人は理不尽な招集を受けた腹いせに、殺気の籠った冷ややかな視線を物陰に向ける。
黒ウサギは怯みつつも何とかその姿を見せる。
「や、やだなあ御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「ご勝手にどうぞ〜」
「あっは、取りつくシマもないですね♪」
両手をあげて、降参とでも言うようなポーズを取る黒ウサギ。
しかしその行動とは裏腹に、その赤い瞳は冷静に四人を値踏みしていた。
(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです最後の人は断ったかどうかわからないですが。まあ、扱いにくいのは難点ですけども)
黒ウサギがおどけつつも、四人にどう接するべきかを冷静に考えていると、耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立って、黒いウサ耳を根っこから鷲掴む。すると
「えい」
「フギャ!」
力任せに引っ張った。
黒ウサギから情けない悲鳴が上がる。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心のなせる業」
「自由にも程があります!」
大人しいのかと思えば違った。彼女は意外と行動派だ。
「へえ?このウサ耳って本物なのか?」
「…………」
今度は十六夜が右から掴んで引っ張る。
「……。じゃあ私も」
「ちょ、ちょっと待――!」
耀が放した左の耳を飛鳥が。左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げた。