箱庭出身転生者と猫姉妹   作:めざし

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第4話

Side ???

 

さて、これで目撃者は始末できたことだし、あの子どうしようかな?

少年は3人と1匹の悪魔を殺害し、展開していた武装と変装を収納しながら少女のもとへと向かった。

 

「で?君はこれで束の間の安息を得たわけだけどどうする?」

 

少年が少女にそう問いかけると

 

「・・・うっ、うぅ・・・・ねぇ、さま・・うぅ」

 

少女は俯き、死んでしまった姉の亡骸を抱きしめ泣き続けた。

 

・・・・辛気臭くて食事を再開する気にもならないな

 

「・・・・はぁ」

 

少年はうんざりしていた。自分は理由は分からないが少女たちのイザコザに偶然巻き込まれただけであり、久々の対人戦の機会を得られそうだからこれ幸いとこれに自分から介入したは良いものの、その元凶の事後処理にどうするかに悩んだ。そう、一思いに殺してあげようかどうかを。

そして・・・・

 

「・・・もし、君のお姉さんを生き返らせてあげるって言ったら、泣き止んでくれる?」

 

少年はそう問いかけた。

 

 

 

Side 白音

 

「・・・もし、君のお姉さんを生き返らせてあげるって言ったら、泣き止んでくれる?」

 

「・・・・・・・・・・え?」

 

姉様が私の腕の中で息を引き取り、そのあまりの悲しみと喪失感に今にも心がバラバラになってしまいそうな中、一方的に悪魔を蹂躙した男の子が私に問いかけてきました。

 

「聞こえなかった?君が抱いてるそのお姉さんさ、生き返らせたらさ、泣き止んでくれる?って聞いたんだよ」

 

「・・・・そん、なこと、できる、の?」

 

「んー、僕が持ってる権能の一つに時間を巻き戻す力があってね。それを使えば出来なくもない」

 

「!!」

 

「あ!でもでも、ちょっと問題があるんだ。この権能今の僕じゃ上手く使いこなせなくてね、『やり過ぎちゃう』かもしれないんだ。だから怪我をする前のお姉さんとは変わっちゃうかもしれないけどそれでも問題ない?」

 

「・・・・・ねえ、さまが、またわた、しと生きられるの、なら・・・・おねが、い、します」

 

私はこの男の子が『やり過ぎちゃう』という意味を理解はできなかった。ただ、それでも解ることはある。それは姉様と、こんな悲しい別れをしなくてもすむかもしれない、ということだ。

 

「ん、じゃあちょっと離れてて。お姉さん借りるよ」

 

そして私は姉様のまだ暖かい体から離れ、少年の後ろに移動すると、彼は横になった姉様の体を中心に魔法陣を作り出した。そして・・・

姉様の体を起点に半球状の結界のようなものを作り出しました。その中にはたくさんの時計のようなものが結界の外周を縦横無尽に走り回り、時計はその針を逆回転させていました。それは本当に時を巻き戻そうとするためのようでした。

そして・・・・

 

「んっ・・・お、あ・・・・微、調整難しい、な・・・・・・っぐ、おおおおおらああああ!!・・・・あっ」

 

「・・・・・・・・っく、っは!!?ゲホッ、ゲホッ」

 

そして姉様は息を吹き返しました。・・・・・・あれ?姉様が・・・少し縮んでいるように見えるのは気のせいでしょうか?

 

 

 

Side ヴォルドームスカ・バルバトス

 

「・・・・・何?弟よ、今何と言った?」

 

「黒歌たちを追跡していた俺たちの眷属が、どうやら森で殺されてしまったみたいだ、と言ったのだ兄上」

 

「・・・・・あり得ぬよ、それは。あの森には我が領民は入ることはない。それに派遣した俺の眷属はあの森に生息する魔獣共なんぞには決して遅れなんぞ取ることなどない、ということは『女王』のお前も理解しているはずだ、弟よ」

 

「そうだな、理解しているとも、兄上。だが実際あいつらが死んだことは事実だ。つまり黒歌共は何かを味方につけたのだろう、この領地に住む悪魔ではない何者かを」

 

「・・・・ははははは。もしやあるいはこれは良い知らせかもしれぬなぁ、弟よ」

 

「ん?どういうことだ、兄上?」

 

「我が眷属の中でもバルディアはかなりの実力者だった。それを屠ったというのならば、その者はかなりレアな掘り出し物だ、是非とも俺の眷属にしてやりたいぞ」

 

「・・・ふむ、なるほど、一理あるな」

 

「よし、これが片付き次第、早速森に向かうぞ」

 

「わかった、では諸々の準備をしておこう」

 

「ああ、頼む」

 

そして彼の弟は部屋から退出すると、彼は仕事の続きに取り掛かった。。。

 

 

 

Side 白音

 

あれから眠り続けている姉様を、今私の目の前で私の分の食事を用意してくれている少年のご厚意でテントの中で休ませている。

・・・・この少年は何者なのだろうか?私とそんなに歳は変わらなさそうなのに、あれだけ強かった悪魔3人を同時に相手取り、あまつさえ一方的に鏖殺してしまったこの少年は・・・

それと姉様を生き返らせるために使ってくれた魔法?のようなものも・・・

たしか彼は権能とか言っていましたが・・・・

 

「はい、出来たよ。熱いから気をつけてね」

 

彼はそう言って何かの肉の串焼きが数本、何か奇妙な形をした魚らしきものを串でさしたものを数本をお皿に乗せたものとシチューが入ったお椀を私にくれました。・・・・・・食べても大丈夫なのですか、これは?

 

「・・・・い、いただきます」

 

・・・・せっかく私のためにわざわざ焼いてくれたのですし・・・食べないと、失礼・・ですよね・・・・空腹は最高のスパイスと言いますし・・・・

で、ではまず魚の方から

 

ごくりっ

 

・・南無三!!

 

ぱくっ

 

もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ mgmg ・・・・・・・・・

・・・か、噛んでも噛んでも噛みきれない!!?

何ですかこれ!!ゴムでも食べてるんですか私は!!?

私がそうしてこの得体の知れないゴムを食べていると・・・

 

「・・・・mgmg ・・・・・・・・ぺっ・・・ハズレだったな、この魚」

 

少年はゴムのような何かをを吐き捨ててました・・・

得体の知れないものをわざわざ振る舞わないで下さい・・・

 

・・・・・・とりあえず1女の子として口の中に入れたものを吐き出すわけにはいかないのでどうにかゴムのような何かをを丸呑みにすることにした私は肉の串焼きは見なかったことにしてシチューに手をつけることにした。

・・・・・匂いだけなら問題はなさそうですが・・・・

 

ズズッ

 

「・・・あ、美味しい」

 

シチューの中の野菜は程よく煮込まれており、柔らかく、野菜嫌いな私でもすんなりと食べることができました。そしてこれは・・・ベーコンですね。これも柔らかく、疲弊した体に力を与えてくれるような何かを感じました。

 

「お、気に入ったか?今回結構上手くできてるなって思ってたからな。喜んでもらえてよかったぜ」

 

彼はそういうと、いつの間にかなくなってしまった私のお椀を取って、お代わりをいれてくれたのでした。

 

 

 

・・・・・それから美味しい食事を終えた私は、姉様を蘇らせてくれた力のことや彼の名前、どうして人間の子供がこんなところに1人でいるのか・・・そして今後について彼に相談しようと思った、のですが・・・

 

「あ、れ?」

 

急に視界がぼやけたと思ったら、倒れてしまいそうになりました。

 

「おっと。やっぱ疲れてたか。お前ももう休みな。・・・君たちが起きるまでは僕が警戒しといておくから、さ。お姉さんと一緒に眠っとけ」

 

彼はそう言って倒れそうになった私を抱きかかえ、テントの中まで運び、姉様の隣に寝かしつけました。そして、毛布を私にかぶせるとテントの外へ出て行きました。

 

「う、ぁ・・・・名、前、聞き、たかった、な・・」

 

そして私は意識を手放しました。

 

 

 

Side ???

 

少年は少女をテントの中で寝かせ、外へ出ると、今後の身の振り方を考え始めた。

 

(さて、1段落着いたわけだが・・・・これからどうしようかねぇ・・)

 

・・・・少年は2人の少女について、当初巻き込まれるのも面倒だからと見殺しにしようとしていた。実際あの悪魔たちが攻撃をして来なければそのつもりだったのだ。さらに付け加えると悪魔たちの処理後、姉の死で泣き暮れる少女を見てうるさいのと哀れみを感じたのでいっそ姉の後を自らの手で追わせてあげようか、とさえ思っていたのだ。

では、なぜあの少女を助け・・・あまつさえその姉さえ救ってみせたのか・・・・

彼はふとこう思ったのだ。

 

 

この少女はどう見ても10年も生きていない子供だ・・・・・そんな命を・・・かつて王として民草を導いた者として安易に幼い命を摘み取ってしまっていいものか、と。

だが、彼女1人では生きていくのは不可能だろう・・・・・両親が健在なのかは知らないが姉の死は彼女を苦しめ続けるのは想像に難くない・・・ならば自分が姉を生き返らせればよいのではないか?・・・・今の自分では権能を十全にコントロールは出来ない・・・・が、少し・・・ほんの少しだけ力の一端を制御しききれば蘇生はできるだろう・・・・・まぁ、駄目でもともと、修行の一環だと思えば寧ろメリットになりえるだろうか、と。

 

そして少年は少女に問いかけ、少女はそれで姉と再び笑いあえるなら、と頷いたのだ。

 

(まぁ・・・最近はここでの修行もマンネリ気味になってたし?彼女たちが僕の話し相手になってくれるならそれはそれで悪くはない、かな。んー、それはいいとして・・・ここからどうしよう?この冥界とやらにいるにしろ、人間界に戻るにせよ、どこか定住するべき家が必要、か)

 

少年は少女たちのこれからについて漠然と結論づけた後、今後自身らが生活する拠点について考え始めた。

 

(人間界の僕の家は叔母に奪われてしまったわけだし・・・いずれ取り返すのは当然だけど、子供の僕では日本の法律上相続できないからねぇ)

 

少年はある問題を抱えていた。

 

(はぁ・・・本当は生まれ変わったこの世界で穏やかな第2の人生を送るつもりだったのになぁ・・・・。両親が事故で亡くなって、叔母が後見人として僕を引き取ったのが始まりだったっけ・・・)

 

そう、この少年の両親は交通事故に遭い、2人とも彼がこの世に産まれて6歳のときに亡くなってしまったのだ。それはおよそ3年前のことである。その後父方の妹、つまり今生の叔母に当たるものが彼の後見人ととして彼を引き取り、共に暮らし始めたのだが・・・これが彼の人生設計に狂いを齎した。彼女は彼の両親の遺産目当てで彼を引き取ったのだ。彼は自分を引き取った後、彼女は自身に暴力を振るい始め、罵倒を浴びせるようになった。彼は1週間と経たない内に実家を出ることにした。そして実家を出る際彼はこう思った。

 

 

叔母よ・・・今を存分に愉しむがいい、今の僕は生まれ変わった影響か、力を十全に使いこなせないし、齢6の発言力のない子供だ。だから・・・今は雌伏の時を過ごしてやる。・・・・・・だが、せいぜい気をつけろ・・・僕はやられたらその分はきっちり返す主義だ。

 

 

そして少年は実家を後にし、しばらく人間界を放浪した後、この冥界の存在に気付き、やってきた。そして悪魔たちに自身の存在が露見しないように辺境の森で2年に渡って魔獣を相手に自らを磨き続けた。だが、その行程は彼が思っていたより困難を極めた。

 

そもそも彼は転生前の戦いにより霊格が粉々に砕けていた。彼の以前の主は砕けた彼の霊格を纏めたが、それは完全に復元することは叶わなかった。彼女は彼を再び手に入れるために異世界の子供の魂に彼の霊格を注ぎ、融合させて彼を蘇らせようとした結果、少年は転生前の記憶は持つものの記憶は所々欠け、断片的になり、時折記憶が蘇る有様となっていたのだ。彼は物心ついた時に自身には前世の記憶のようなものがある、と理解はしたものの、それは色褪せ、磨耗していた。彼が思い出せるのはその中でもとりわけ色濃く残った記憶しか思い出せない。それは強大な、人間ではない神々しい何かとの戦い・・・・それは自国の兵を率いて、迫り来る蛮族どもとの大戦・・・・それは広大な面積を持った閉じた世界での宿敵や星の化身との遊戯・・・・それは豊穣祭の化身との自身の命運をかけた大遊戯・・・・それは彼女の配下との稽古だったはずが、いつの間にか夢中になり、命がけの闘争になり、ボロボロになった鍛錬場・・・・

・・・・そして自身が最も強烈に記憶していたのは、最凶最悪の魔王『絶対悪』との戦いだ・・・自身が死んだ後あの世界はどうなったのかは知る由もないが・・・

 

彼はそう言った前世の記憶の中で、生前の自分が身につけた武技、魔法、そして権能をこの魔獣犇く森で記憶を参考に磨き始めたのだが、当初それは困難を極める。当然のことだが、少年の体は前世に比べて身長が低く、体格もしっかりしていない。その時点で既に槍や剣を扱うのは難しいと言える。しかも記憶の頼りに体を動かそうとするのだ。当然体の至る所で違和感が生じる。彼は魔獣を相手に時には圧倒し、時には大怪我を負いつつ、自身の記憶に残る技と現在の体から放たれる技とで生じる誤差を丁寧に丁寧に修正し、矯正し、現在の体に極力負担の出ないように戦い続けた。

武技だけでこれだけの課題が出てくる。魔法に至っても同様だ。彼は記憶に残る術式や魔法陣を展開することこそ問題はなかったものの、速度や精度、安定性に欠けた。幼いこの身では自身に宿る莫大な魔力を制御しきれなかったのだ。現在はある程度克服したものの、それでも多少違和感が残ってるのだ。・・・・とはいうものの、格下の悪魔の術式を即座に看破し、刹那のうちに反射術式を組み上げることくらいはできる程ではあったが。しかし同時に宿敵らに同様のことをしても同じ結果にはならない、というのも彼は理解しているのである。

そして問題は権能に関してだ。これが一番の問題だ。自身の霊格に刻まれた簒奪した権能は使うこと自体は可能だ。・・・制御ができないだけで。魔法の時以上に安定性に欠け、精度も悪く、自爆する可能性に目を瞑れば彼はこの世界のいかなる強敵をも叩き潰せるだろう。だが、そんな危険きわまりなものは彼としてもあまり使いたいとも思わない。今回少女の姉を蘇生するために使用した権能も記憶に齟齬が発生しないように術式で記憶のバックアップを取りつつ、ほんの3日前くらいまで戻そうと考えていたが実は彼女の体は4年も時間回帰していたのだ。しかも一歩間違えれば彼女どころかこの森一帯の時間が軽く500年は巻き戻るかもしれなかったといえば、どれだけ不安定なものかはお分かりいただけるだろう。

 

(・・・・うー、思い出したら悲惨な光景が・・・。・・・あと彼女の体に関しては申し訳ないとは思うけど、今を妹ともに生きていられる、ということで納得してもらおう。・・・あとこれからの生活については3人で話し合う方がいいかも)

 

少年はフラッシュバックしかけた記憶を振り払うように頭を振り、ミスで少し小さくなってしまった彼女に自分を正当化して罪悪感を振り払いつつ、3人で話し合ってこれからのことを決めようという判断を下して、引き続き不寝番を続けたのだった。




次回そろそろ主人公の名前を出す予定です。

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