箱庭出身転生者と猫姉妹   作:めざし

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第11話

レイたち葉桜姉弟が転入してから一カ月が過ぎ、既に転入生として物珍しさからの質問から解放されていた。

そしてそれは彼らが転入して4度目の朝の全校集会の校長先生からの挨拶の時のことだった。

 

 

「ーーーえー、それから来月には運動会があります。なので今月から競技の練習を執り行います。

また、5年生には我が校伝統の演奏行進、6年生には組体操を行ってもらいます。

それから・・・これから夏に向けて日中は暑さが日増しに強くなると思いますので皆さん、熱中症には十分注意するように。

こまめに水分補給を取ることが予防につながります。

・・・・では、本日の全校集会は終了します。」

 

「ーーーはい、校長先生ありがとうございました。

それでは、朝の全校集会を終わります。

では、最初に6年生から教室にーーー」

 

 

 

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Side レイ

 

「なぁ、アツシ。今朝校長先生が言ってた演奏行進?ってのはなんのことだ?」

 

僕は今朝の全校集会で来月行われる際に僕たち5年生が行うという演奏行進なるものについて、以前からこの学校に所属しわかっているだろうクラスメイトのアツシに詳細を聞いていた。

 

「んあ?

・・・あ、そっか、知らねえのか。

演奏行進ってのは午前の部が終わって昼食を挟んだ後、俺たち5年生が午後の部の最初に楽器持ってグラウンド内を演奏しながら行進するのさ、文字通りな」

 

「ふむふむ、なるほどね。

ちなみに楽器は何使うのさ?」

 

「基本的には鍵盤ハーモニカとリコーダーだな。

棒持った指揮者が先導したりするからそれに従って動くんだよ。

・・・他にも有志でやりたいやつが他の楽器使うんだが・・・あー、他になにあったっけ、シホ?」

 

「え、えっと・・・大太鼓や小太鼓、鉄琴や木琴、アコーディオンとか・・・だよ」

 

「あー、そうそうそれそれ」

 

「なかなか種類が多いんですね」

 

「まぁ、有志なら大人しく僕らはリコーダーでも吹いてようか、白音姉さん」

 

 

レイたちはアツシと詩穂から演奏行進の詳細を聞いていると、1時限目のチャイムがなり、担任の先生が入ってきたので、そのまま授業の準備をするのだった。

 

 

そして少々時間が過ぎ、午後の授業に5、6年生合同の体育が始まった。もちろん、行うのは運動会に向けて演奏行進の練習である。6年生は昨年演奏行進を行なっているので、今回見本としてやるらしく、レイたち5年生は見学だ。

因みにレイたちは朝のHRで担任から配られた、やりたい楽器の要望書にリコーダーと書き、そのままリコーダーが通った。

 

「あ、いたいた。白音ー、レイー!」

 

僕たち5年生がグラウンドから離れて待機していると黒歌姉さんがやって来た。

 

「姉様?

どうしてここにいるんですか?

6年生の皆さんは並んでますよ?」

 

「いや、白音姉さん。

黒歌姉さんは並んでも演奏もできないし、ましてや行進の動き方も知らないから、寧ろいると邪魔になるでしょ。

だからここにいるんだよ、だろ?姉さん?」

 

「せいかーい!さっすがレイ、先生に言われて離れてろってさぁー。

・・・・でもレイ?流石に邪魔とか言うのは酷すぎるぞ!!」ガシガシ

 

「うわっ!?ごめんごめん!!」

 

「なるほど、それもそうですね」

 

僕は黒歌姉さんが何故ここにいるのか理解できていない白音姉さんに推測を告げると納得してくれた。・・・言い方が悪くて黒歌姉さんにとっちめられたが

 

「この人白音とレイのお姉さんか?美人だねぇ」

 

「ほ、ほんとに・・・・きれいで、す。それに・・・仲がいいんですね」

 

「ん?白音とレイのお友達?

私は黒歌、いつも妹と弟がお世話になってます。これからもよろしくお願いね?」

 

「「は、はい」」

 

アツシと詩穂は黒歌姉さんがウィンクをしながら微笑むと2人は顔を赤らめてしどろもどろになりながら返事をした。

 

まぁ、黒歌姉さんはなんだかんだいって普通に美人さんだからね、こんな風に頼まれたらこうなるのも仕方ないかなって思うよ、僕も。・・・・だからね、姉さん・・・・そろそろヘッドロックをかけたままのその腕の拘束を解いてくれないかな?息がもうだいぶ苦しくなって来たんだ・・・・・・。

 

「姉様、そろそろ離してあげてください。レイ君青くなってきてます」

 

「ん?おっと、忘れてた」

 

「ぷはっ!!ゴホッ、ゴホッ・・・一瞬きれいな川がみえたよ・・・・」

 

「ははは、あんなきれいなお姉さんに構ってもらえるんだ、役得だろ」.

 

「・・・・まぁ、自慢の姉ではあるよ、うん」

 

と、そんなこんなで黒歌姉さんとアツシたちとの紹介が終わると6年生の準備が整ったのか、行進が始まった。

 

「・・・・へぇ?思ってたより本格的だね。これはなかなか難しそうだ」

 

「そうですね、笛やハーモニカを吹きながらあんなきれいに行動するにはかなり練習を積まないといけませんね」

 

そう、この演奏行進とやら思った以上にレベルが高そうだった。

白音姉さんの言う通り楽器を演奏しながら動き回るにはそもそも楽譜をしっかり指に覚えこませなければ、周りを意識することは出来ない。よくよく見ると彼らは二つに団体を分けてグラウンドの中央に向かって行進し、そのままぶつからないように交差したりしていたのだ。小学生がやるにはなかなかレベルが高いと言える。

と、しばらく感心しながら僕たちが見学していると行進は終わり、僕らは先生指導のもと隊列を組まされ、自身の周囲の子たちの顔を覚えることと簡単な動きの説明をして今日の体育の授業は終わることになった。

これからしばらく体育の授業はクラス合同で行い、音楽の授業はこの演奏行進の楽曲の練習を行うようだ。

・・・・しかしそこで一つ問題が浮上した。

 

「・・・・・・・あ、ところでレイ君」

 

「ん?なに?白音姉さん?」

 

「・・・私、今まで楽器を使ったことがないので笛が吹けません・・・・・」

 

「・・・・・そうか。・・・まぁ、練習するしかないな・・・。良いよ、家でこれから練習しよう」

 

「はい、お願いしますねレイ君」

 

こうして僕と白音姉さんに新しい日課が出来た。

その夜・・・・・

 

「・・・・?あれ、『レ』はどの指でしたっけ?」

 

「『レ』はこうだよ、姉さん」

 

「んぅ、指がレイ君みたいに流暢に動かないですね」

 

「仕方ないさ、初めてはそんなもんだよ。

今はゆっくりで良いから、一つ一つの音符をしっかりマスターしていこう?」

 

「はい」

 

僕と白音姉さんは今、リコーダーの練習をしている。

姉さんにはまず音階を理解してもらい、その後音符に合わせたリコーダーの吹き方を教えた。最初は息継ぎや息の加減を上手く出来ず、音が安定しなかったり、途中で途切れたりと問題があった。とはいえ、まだ練習して初日だ。今日は指の動きとそれに対応した音だけを理解してもらい、息に関しては明日に回すことにした。音楽は1日で詰め込むようなものでもないし、日々の積み重ねが必要なのだ。白音姉さんは座学や暗記は得意な方なので先に知識を入れてもらうことに注力してもらった。

 

「んー、白音も大変ねぇ」

 

「・・・・やっぱり黒歌姉さんもこの際だからやるかい?白音姉さんの苦労がわかるよ?」

 

「いやぁ、やりたいんだけどね・・・・リコーダー学校に忘れちゃったのよ」

 

「ならこれ使う?」

 

「え!?いや、でもそれレイ使ったやつだよね!!?」

 

「そうだけど?」

 

「そうだけど、って・・・・それって間接キスじゃ・・・」

 

「え? そんなこと気にするの? 姉弟じゃん?」

 

「そういう問題じゃなーい!!・・・・はぁ、どうしてレイは時折そういうデリカシーのないところがあるのかなぁ」

 

「レイ君・・・・流石にそれはどうかと思うよ?」

 

「白音姉さんまで・・・」

 

口の部分をしっかり拭いてるし、気にするようなことないと思うんだけどな・・・・それに姉さんたち、この前一緒にクレープの食べ合いっこした時何も言わなかったじゃないか・・・。

 

 

と、レイが内心少女たちの心の機微がわからなく、悩んでいると・・・

 

 

「あ、それよりレイ君・・・・アザゼルさんに運動会の連絡を入れた方が良いのでは?」

 

「あ、そうだね。すっかり忘れてたよ」

 

「じゃあ、私の方から連絡しとくから、2人はそのまま練習してなさい」

 

「ん、じゃあ頼むよ黒歌姉さん。アザゼルさんによろしく言っといてね」

 

「ありがとうございます、姉様。私の分もお願いします。」

 

「はいはい」

 

僕と白音姉さんがそう頼むと黒歌姉さんは部屋を出て行った。

 

「さて、じゃあ続きを再開しようか、姉さん」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

Side 黒歌

 

「ーーーってわけで今度運動会やるから来てねー」

 

『おう、任せとけ!!ちゃんと予定は空けとくぜ!ちゃんとお前らの勇姿は映像に残すからな!!』

 

「はは、ほどほどにね」

 

『そういや学校生活の方はどうだ?楽しんでるか?』

 

「ええ、満喫してるわ。・・・・・まぁ、最初は色々な意味でやばかったんだけどね・・・」

 

『何!?誰かにいじめられたのか!!?』

 

「いや、そういうわけじゃないよ・・・・・・。文字が読めなかったのよ・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?』

 

「いや、私たち・・・ってか私と白音ね・・今まで学校行ってなかったからさ、文字とか知らなかったのよ」

 

『・・・・・それで?』

 

「う、うん。今はもう平仮名カタカナはレイのおかげでマスターしたし、簡単な漢字ならだいぶ覚えてきたわ。・・・・まあ、算数は数字と四則演算くらいまではできるようになったわね・・・分数はまだ時折間違えるけど」

 

『なるほど・・・・・。ちっ、そいつは悪かったな、そこまで思い至らなかったのは俺のミスだ。

事前にもっと気にかけていれば早く対処できたのに・・・』

 

「うんうん、気にしないでアザゼルさんは『神の子を見張る者(グリゴリ)』の総督として忙しいでしょ?

それに私たちは学校に行かせてもらえるだけでも感謝してるんだから」

 

『・・・・・黒歌』

 

「もう、そんな声出さないで!

むしろ、レイたちと一緒に勉強するの楽しかったくらいなんだから結果オーライよ」

 

『・・・そうか。んんっ、そうかわかったぜ、なら今度の運動会、お前たちの応援には他の奴らに負けないくらい応援するぞ!『神の子を見張る者(グリゴリ)』のやつら総出でな!!』

 

「それはちょっとやめてちょうだい!!?ここ悪魔が管轄してる土地なんでしょ!!?悪魔が堕天使が戦争仕掛けたって勘違いするわ!!?」

 

『なあに心配するな。悪魔側には事前に交渉してお邪魔するよう話はつけとくからよぉ〜』

 

「・・・・・はぁ、何言っても聞かなそうね・・。なら、穏便に頼むわよ。

間違っても私たちが原因で戦争の口火を切ることにならないでちょうだいよ?

そんな理由で後世の歴史の教科書に載りたくないわ・・・・」

 

『任せとけ、任せとけ』

 

(ふ、不安だ・・・・)

 

 

と、黒歌は少々・・・いやかなりの不安を抱きつつも、アザゼルに運動会のことを知らせるのだった。




今回少々短いですがここまでとします。

今回のこの運動会のイベントですが、この行進に関しましてはうぷ主の小学生時代にやったものをモデルとしています。運動会でなにやったっけ?とか思い返してたら、そいえばこんなんあったなと思い出し、ぶっこんでみました。完全に思いつきの見切り発車です。・・・・上手く描けるのだろうか・・・・。

あと、今回アザゼルさんは子煩悩な姿が出てましたね・・・これはのちのヴァーリ君にどれだけ影響するのか・・・・楽しみだ・・・・

次話もお楽しみに!!アデュー

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