その者は神殺し、後の世ではカンピオーネと呼ばれる魔王は無辜の民の要望により国を先導する王となり、60年に渡って統治し続けた。その治世に狂いはなく、民は長い平穏を享受し続けた。しかし、魔王は60年目の節目を迎えた建国記念日に突如その姿を眩ませた。次の王を指名する書置きを残して・・・
その魔王は箱庭と呼ばれる世界に招待されていた。その世界は修羅神仏がギフトゲームと呼ばれる遊戯で以って物事や約定を決める世界だった。魔王は歓喜した。何故ならば60年に渡る治世は魔王に多大なストレスを与え続けたからだ。しかし魔王は耐えた。そうあれと無辜の民に望まれたからだ。『60年、そう60年間もだ。それだけの間頑張ったのだ。後は次に任せても良いだろう』と。
そして魔王は箱庭で自身を招待したコミュニティに所属し、ギフトゲームに臨み、そして破竹の勢いで勢力を伸ばした。・・・それがいけなかったんだろう。魔王はある女王に目を付けられた。神格を持った豊穣祭の化身のコミュニティは魔王の属するコミュニティにゲームを仕掛けた。そして7ヶ月に渡るゲームを制した豊穣祭の化身は魔王の所属するコミュニティを解散させ、魔王の身柄を奪い取った。それから幾星霜、人類最終試練が一つ、『絶対悪』の御旗を掲げる魔王の脅威が箱庭を襲う。
『絶対悪』の脅威から箱庭を守るため異世界の魔王は立ち上がる。豊穣祭の女王の下で神域にまで昇華した武術とより精度を上げた嘗て神々から簒奪した力、そして箱庭で得た数多の恩恵を持って、異世界の魔王は他のコミュニティの勇士らと共に『絶対悪』と相見える。そして異世界の魔王は自身の決死の一撃を以って『絶対悪』に数瞬の隙を生じさせ、他の勇士らの封印術式によって『絶対悪』を封ずることに成功する。
そして年月を数えるのも億劫になる程生きた異世界の魔王はその生涯を終える。。。筈だった。
豊穣祭の女王は異世界の魔王が自身の手から消えることを惜しんだ。しかし彼の霊格は砕けており、もはや復元不可能だった。そこで彼女は考えた。ならば、ズタズタに砕けた霊格を可能な限り纏め、その残滓を箱庭の外に放流し、外の子供と融合させ、再び召還するというトンデモを。
そして魔王の残滓は放たれる、箱庭の外へと。
しかし、そこで女王の計画外の事態が発生する。魔王の残滓は箱庭の外に流れた途端に観測できなくなったのだ。。。
そして魔王は再臨す。箱庭でも、自身が元々生まれた世界でもない異世界へと。
第1話
Side ???
「ハァっ・・・・ハァっ・・・・頑張って白音!!」
「・・・・うぅ、は、い・・ねぇ、さま・・・」
冥界のとある上級悪魔が統治している領土の外れに位置する森の一角で、二人の猫妖怪の姉妹と思われる幼い少女たちが駆けていた。
一人は14、5歳程の黒い髪を肩程まで伸ばした姉と思しき少女、もう一人は黒い少女の手に引かれながら懸命に走る妹と思しき白髪の齢2桁にも満たないであろう少女だ。
彼女たちは今とある上級悪魔の貴族の追手から逃走を図るために冥界の森を、それも魔獣が蔓延る危険な森の中をデタラメに走っていた。
「ハァっ・・・ハァっ・・・ど、どうやらあいつらを撒くことができたみたいよ、白音・・・すぅぅぅ、はぁ、すぅ、はぁ」
「げほっ、げほっ・・・はぁ、はぁ・・・こ、これからどうするのですか、姉様?」
「はぁ、はぁ・・・そうね、とりあえずこのままあいつの領地から脱出したらどうにかして人間界に脱出しましょう。たしかこの冥界という場所は悪魔以外にも堕天使って呼ばれる種族が悪魔と敵対してるって聞いたことがあるから、そこに保護を求めるのも手、かしらね」
この2人の少女たち、黒歌と白音はとある上級悪魔に誘拐され、冥界に連れてこられたが、姉の黒歌が屋敷の警備の一瞬の隙をついて妹の白音と共に脱出することに成功したのだ。
しかし、誘拐した上級悪魔の貴族が少女たちの脱走に気がつくと彼の眷属4人を追手として彼女たちに差し向けたのだ。
幼い少女たちは屋敷を脱出したところまでは順調だったが、ここは彼女たちの知らない異界であったため、元の世界に帰ることができず、右往左往していたところを追手に捕捉されてしまったのだ。
その後、黒歌は自身が考えつくあらゆる小細工を弄してこの森の中にまで逃げることに成功したが、彼女はそれが追手に誘導された結果であるということに終ぞ気づけなかった。
そう、それはまるで中世の貴族の嗜みの一つ、『狩』になってしまっていたことを。
「とりあえず、もう少し進んだら、一回休みましょう」
「・・・はい、姉s」
ドォォォォォォン
「「きゃああああああ!!?」」
黒歌の今後の方針に白音が返事をしようとした瞬間、彼女たちの背後から少し離れた地面が突如爆発した。
2人は爆発によって大きな怪我をこそ負わなかったもの、地面を転がされたためその小さな体にいくつもの擦り傷や土埃を負った。
「鬼ごっこはもう終わりか、小娘ども?」
「「!!」」
彼女たちが走ってきた道を彼女たちに気付かれないように気配を絶ちながら追ってきた追手の1人『兵士』の転生悪魔がボロボロの2人に、嗜虐的な笑みを浮かべながら話しかける。
「小娘どもにしては随分と遠くまで逃げてきたが、ここまでだ。大人しく俺と共に主人のもとに帰るぞ」
「・・くっ、そ、撒けて、なかったのか」
「当たり前だ、これでも転生前はそれなりの狩人だったんだ。小娘どもに気取られず尾行することくらいわけないさ。・・・さて、もういいか?俺ももう疲れてきたし、グズグズしてると主にまたお小言をもらいそうだ」
目の前の悪魔はやれやれと身振りしながら黒歌たちに近づいてくる。
「お前たちなんかにいいようにされてたまるか!」
黒歌は地面にうずくまったまま、そう言うと目の前の悪魔に気付かれないように右手に何かを握りこむ。
「これでも喰らえ!!」
黒歌はそう叫ぶと右手に握った土や砂を目の前の悪魔の顔、主に目に入るように思い切り投げつける。
「なっ!!!があああ、目が、目がぁぁああ!!」
「今のうちに!白音!立って!!走って!!」
うまく土が悪魔の目に入って、視界を奪うことに成功した黒歌はこの一瞬の、そして千載一遇のチャンスを逃さず、白音の手を取って再び逃走を開始した。
Side ???
パチッ、パチッ
同時刻、1人の少年が冥界の森の中で焚き火をしつつ、何かの肉や奇妙な形をした魚に木の枝を串にして焼いていた。
「・・・・・・そろそろ食べ頃かな?・・・いや、まだ早い、か?んー、お、先にシチューの方ができたみたいだな♪」
少年は肉と魚が自身の好みの焼き具合になるのを待っていると、鍋に入っていた昨晩のシチューの残りが温まったのを確認した。
少年はシチューが焦げないように軽くかき混ぜながら、シチューを温めていた鍋を焚き火から離し、大きな石の上に鍋を安定するように置き、彼は近くに張ってあったテントの中へと入り、少ししていくつかの皿と調味料を持って出てきた。
「ん♪肉と魚もこれくらいでいいかな」
少年は焼いていた肉と魚を皿に乗せて、鍋の近くに置き、シチューを小さなお椀に入れ始め、いざ食事を始めようとしたところ・・・
「いただきまー『ドサッ』・・・ん?」
彼が日本式の食事前の挨拶をしかけた時、崖の上から『何か』が落ちてきた。
「あん?死にかけの子供か、足でも滑らせたのか?にしてはやたらボロボロだが」
彼が落ちてきた物体を見てみると、それはボロボロの黒髪の子供が倒れていた。しかもその子供は高いところから落ちてしまった影響か手足が通常人体が曲がってはいけない方向に曲がっていた。有り体に言えば、折れていた。
「・・・うむ、これは厄介ごとの気配がするぞ」
少年はその惨状をみてこれから自身にやってくるであろう災難を予想した。そして・・・
「・・・う、あ。ねぇ、さ、ま。」
黒髪の少女は腕の中に1人の少女を抱いて落ちてきたのだろう。もう1人の少女が呻き声を上げながら上半身を起こしたが、まだ視界が確りと定まっていないのだろう、少女は姉と思われる少女の惨状に気づいていないようだ。
そして数瞬後視界が定まったのだろう、白い少女は叫び声を上げる。
「姉様!姉様、しっかりして!!!死んじゃやだよぅ!!」
少女は姉の惨状を見てその大きな瞳に雫を浮かべながら助けを請い始めた。
「だれか!!だれでもいい、だれかいませんか!?姉様を助け・・て・・・」
Side 白音
悪魔の追手に追われているうちに私たちが森の中を逃げ続けていると、いつのまにか崖の上に追い込まれていました。恐らくここまで追い込むことが追手の悪魔の算段だったのでしょう。私たちの前には道がなく、背後にはあの悪魔がいました。
その悪魔は姉様に最後通牒を投げかけましたが、姉様は当然拒否しました。私もあの悪魔の貴族のもとに戻りたくなんてありませんし、姉様の拒否も当然でした。
そして目の前の悪魔は反抗的な姉様に余程イラついていたのでしょう、脅しも込めて先ほどの爆発を私たちの目の前で起こしました。
私は姉様に抱きついていたから、さっきより総重量が増していたので爆発で先程のように吹き飛ばされることはありませんでしたが、地面に亀裂が入り、私たちは崖の下へと落ちてしまいました。
落下していく中、姉様は私を思い切り抱きしめ、そして・・・『グシャっ』という音が私の耳に聞こえました。
私は嫌な予感がして姉様の腕の中から出ると・・・そこには手足が折れた姉様がいました。
「だれか!!だれでもいい、だれかいませんか!?姉様を助け・・て・・・」
私はこんな森の中に私たちを助けてくれる正義の味方がいないと解ってはいながらも、助けを乞いました。だってそうしなければ大好きな姉様が死んでしまうから・・・
そして私が周りを見渡すと、1人の少年が座って串に刺した肉を食べているのを見つけました。
良かった。この子が誰か助けを呼んでくれれば姉様を救ってもらえると思ったから。
私はもう足がまともに動かせない程に疲弊していたので、這ってその少年の前まで進み、少年の足を掴んで少年に助けを求めました。
「お、ねがい・・・ねえ、さ、まをたすけて・・」
「やだよ、めんどくさい」
そして・・・そして少年は私に拒絶の言葉を叩きつけました。
初めまして、めざし、と申します。
初の二次創作、つまり処女作?になります。
初回なのに前書きと本文含めてやたら長くなりました(汗)。
ってかあらすじに収まりきらなかったから前書きにあらすじ書いちゃった(白目)
・・・コホン
まあ、就活の息抜きに書いてみたので、ペースは不定期になると思います。
さて、うぷ主は問題児とハイスクールD×Dがラノベの中でかなり好きで、これで二次創作やってみたいなと急に思い立ったので、書いてみました。最近このハーメルンという投稿サイトを知ったので、勝手が全然わかりませんでした。投稿するだけで二時間もかかったよ(笑)
うぷ主は文才が全くないので読みにくいと思いますが、少しずつ上達するよう精進していく所存なので、暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。
それでは次話で会いましょう。アデュー。
※誤字、脱字などがあった際はコメントをくれると嬉しいです。極力うぷ主も探しますが見落とす可能性大なので(汗)