錬成? いえいえ転生ですか?(仮)   作:ウンニーニョ

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訪れた安息、新しい家族、終わる安息

アームストロング少佐に引き取られて10日が過ぎた。

まず驚いたのはお屋敷のデカさだ。アームストロング家は由緒あるお家だそうで貴族とはこんな家に住んでいるのだろうと言うお屋敷だ。

次にアームストロング少佐の父親と母親の濃さだ。次女と三女は結婚して家を出ているそうだが(ちなみにアームストロング少佐は四男で長男らしい)アームストロング少佐によく似ているらしくそういう家系なのだろう。

この暑苦しい家族の中で生活していくのかと身構えた瞬間だった。

まさに天使が現れた。長女のオリヴィエ・ミラ・アームストロング。

突然変異万歳! 暑苦しさの中のオアシス。そう思ったら体が勝手に動いていた。

オリヴィエの元へ駆け寄る俺。

そして俺の幻想は打ち砕かれた。

アイアンクローで持ち上げられる俺。そして不機嫌そうに俺を見てアームストロング夫妻を見るオリヴィエ。

 

それを見てアームストロング夫妻は何を思ったのか俺がオリヴィエに懐いていると思ったらしく俺の面倒をオリヴィエが見る事になった。

俺の地獄が決定した瞬間だった。

アームストロング少佐、オロオロしてないで助けてくれよ。

 

そして今、俺はオリヴィエ姉さんに剣の稽古をしてもらっている。

国家錬金術師たるもの戦場に出る機会があるかもしれんとしごかれているのだ。

 

「それじゃルーク、私はこれから出かける。素振りが終わったらいつもの様にクーリングに屋敷を50周走っておけ」

 

そう言ってオリヴィエ姉さんは出かけていった。

ちなみにルークと言うのは俺の名前。聞かれた時にこの金髪に金と赤のオッドアイという容姿に日本名はまずいかと思い部屋にあったチェス盤を見て答えた名前だ。自分的にはおかしな名前を答えずに良かったと思っている。

 

剣の稽古とは言ったが毎日素振りとランニングだ。

ランニング50周がクーリングになるのかはわからないが、オリヴィエ姉さんも軍人で大佐なので毎日軍へ出勤する。

その間にできる事という事で基礎なのだろう。

 

ランニングを終わらせてヘトヘトで地面に寝転がる俺にタオルを渡してくれる人物がいる。

アームストロング少佐の妹のキャスリン・エル・アームストロングだ。

彼女もアームストロング家特有の暑苦しさのない突然変異。

オリヴィエ姉さんがクールだとしたらキャスリンはキュート。

なぜオリヴィエ姉さんの前に現れてくれなかったかと初めは悔やんだものだ。

まあ初めの出会いはともあれ、オリヴィエ姉さんは基本優しいし俺の事を思って剣の稽古もつけてくれる。

怒ると悪魔の様に怖いが今はこれで良かったと思っている。

 

キャスリンからタオルを受け取り汗を拭うとキャスリンと一緒にお屋敷へと向かう。

お世話になっている手前ぐうたらしているわけにもいかない。シャワーで汗を流したらメイドや執事にまじって家の事をするのだ。

俺の方が年下だが歳が近いという事もありキャスリンのお世話をする事が多い。その為、屋敷へ向かう間もアレがしてほしいこれがしてほしいと要望を行ってくるのだ。

実は力仕事はキャスリンの方が得意なのだが、それが俺の剣の稽古や寝る前の筋トレなどのトレーニングの動力源だったりする。

しかし力仕事の話はあまりなく、キャスリンのアームストロング少佐の話を聞いたり、遊び相手になったりする事がメインなのは俺がまだ7歳の子供だからだろう。

 

☆★☆★

 

アームストロング家にお世話になり始めてからもうすぐ一年。

俺は朝のランニングが終わるとシャワーを浴びてアームストロング少佐と軍へ向かう。

キャスリンのお世話はキャスリンが習い事を始めたのと俺に基礎体力がついてきたのでなくなった。

ピアノを習っているはずなのだがピアノの音が聞こえてこないのはどういう事だろう?

それはそうと俺はオリヴィエ姉さんの紹介もあって軍で兵士に混ざって特訓しているのだ。

アームストロング少佐と入り口で別れて訓練所へと急ぐ。

 

「おうルーク、来たか。今日も俺と剣の稽古するだろ?」

 

「バカ野郎、剣ばっかじゃ戦場で役に立たないだろ? 今日は私が銃を教えんだよ」

 

話しかけて来たのは背は低いが剣が得意な男のドルチェットとすらっとした体型でナイフや銃が得意な女性のマーテル。そして2人の間に入って喧嘩を納めてくれているのガタイのいい男がロア。俺がここに来てからよく面倒を見てくれる3人だ。

 

「じゃあ今日はマーテルさんに銃を教えてもらおうかな」

 

俺のこの言葉にドルチェットはうなだれ、マーテルは勝ち誇ったようにドルチェットを見下ろした。

俺はもう半年位面倒を見てもらっている。夕方までここで訓練してアームストロング少佐が迎えに来てくれたらお屋敷へ帰る。俺の平和な日常だ。

 

しかし今日はアームストロング少佐が昼前に訓練所へとやって来た。

 

「ルーク、国家錬金術師のイシュヴァールへの投入が決まった」

 

顔色を曇らせてアームストロング少佐が言ったこの一言が、俺の平和な日常の最後の言葉だった。


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