概念礼装しか引けない男   作:マーマレードタルト

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この小説は私の趣味だ。いいだろう?


苦戦と三枚と必殺技

サーヴァントにはクラスが割り当てられる。

例えば剣を扱う英霊はセイバーが、暗殺を得意とするならアサシンが、狂気を孕んでいるのならバーサーカーが、といった風に弓を扱うからアーチャーなのだ。

なのに目の前のアーチャーは一対の双剣を持ってこちらの攻撃をことごとく防いでいる。

そればかりでなく、隙を突いて鋭い反撃まで加えてくるのだ。

これでアーチャーとか表記ミスではないだろうか!

 

「なに、そう言ったサーヴァントが居ても良かろう」

 

戦場に卑怯もクソもないのだが毒づきたくもなる。

 

避けにくい突きをも織り交ぜた連撃も、傷こそ負えど致命傷は確実に避けている。

攻めているのはこちらだが、じわりじわりと焦りに追い詰められている気すらする。

このアーチャーの剣術はどちらかと言うと守る為の剣術だろう。敵の攻撃を先読みし、的確な位置に防御の手を置く。手数を増やす為の双剣。

 

ならば、その防御ごと押しつぶせばいい。

 

 

ーー概念ライド【緑の破音】ーーーー

 

 

全身を走る人造霊基が一際強く輝き、その輝きは日本刀にも宿る。

 

短く息を吐くのと同時に振るった刃はアーチャーの双剣の一本、白い剣を砕き吹き飛ばした。苦し紛れに残った黒い剣を投擲してくるが、体勢を低くする事で躱す。

この隙を逃しはしない!

 

「甘いぞ!」

 

しかし、瞬きの間もなくアーチャーの手には双剣が握られている。だが押し切れると判断し、踏み込もうとしたところで視界の隅にキラリと光るものがうつった。

次の瞬間、無意識のうちに地面を転がって大きく横に移動していた。

先程まで立っていた所には、投擲したはずの黒剣が突き刺さっていた。あのままアーチャーに気を取られていたら後ろからブーメランのように戻って来た黒剣が背中に突き刺さっていただろう。原理は分からないがブーメランのような変則的な使い方も出来るようだ。

 

「今のを躱すか」

 

そう呟きながらアーチャーは再び双剣を構えた。

安全な場所であろうとはいえ、マシュや所長を置いて来たのだ。もし魔物に襲われていたら、いくらデミサーヴァントとなったとは言えマシュはまだ戦いには不慣れ。ましては所長を守りながらとなれば……余り時間をかけては居られない。

 

そろそろ本気を出させてもらう。

 

概念礼装を三枚取り出し、スキャンする。

 

 

ーー概念コンボライド【コードキャスト】【一の太刀】【騎士の矜持】ーーーー

 

バチバチッと腰から日本刀へかけて人造霊基が輝き、眩い光が日本刀を覆う。

相性の良い概念礼装を複数枚スキャンする事で発動する概念コンボライド。スキャンする礼装で威力は変わるが、サーヴァントの宝具にも負け劣らぬ威力を誇る。これで決める。

アーチャーを見据え、日本刀を鞘に収める。眩い光も鞘に収まり、辺りは元の薄暗さを取り戻していく。

 

そのままアーチャーへ駆ける。

 

双剣を投擲し進路を防いでくるが、それは既に見た技だ。交差する双剣の一瞬空いた間へ体を捻りながら飛び込み、同時に羽織で双剣を包み込んでしまう。

完全に封じることは出来ないが、この僅かな間があれば良い。

 

驚くアーチャーの目の前に、飛び込むように着地するのと同時に抜刀。

 

慌てて双剣を手元に呼び出すが、その程度では止められない。白い閃光は闇を裂くように双剣を容易く両断し、アーチャーの身体を断ち切った。

 

「み、見事だ……」

 

振り切った日本刀を鞘に収めるのとアーチャーの上半身が地面に落ちるのは同時であった。

 

 

上半身だけになって地面に力無く転がるアーチャーに近づく。敗北したというのにその顔には清々しい笑みが浮かべられていた。

 

「私の敗北だ……進むがいい…聖杯は、あそこにある…」

 

そう山の一角を顎で指す。もう腕を動かすことすら出来ないのだ。

だが、なぜ素直に教えてくれるんだろうか?

 

「敗者は、勝者に相応しいものを、だろう……?」

 

光に還りながらもアーチャーはその口を止めない。

 

「こんな地獄みたいな聖杯戦争に呼ばれた時はどうなるかと……唯一まともそうなキャスターもアレに挑んで敗北していた………だが最後に君みたいなサーヴァントに会えて……」

 

あ、一応自分マスターです。

 

「そうか、マスター……マスター!?君みたいなマスターが居るものか!!」

 

そんな嘆きを残してアーチャーは消えていった。

それ言うと剣の扱いが達者な貴方も人の事言えないと思うのだが……

そんな事を思いながら変身を解除するのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「先輩、ご無事でしたか!?」

 

大丈夫。大きな怪我もしてないよ。

 

「全く、急に飛び出すから驚いたわ」

 

2人とも無事なようだ。辺りにスケルトンの残骸が転がっている事から幾度か襲撃されたようだが、上手く撃退出来たらしい。

 

『無事で良かった!アーチャーに向かって行った時はどうなるかと思ったよー!』

 

それより聖杯の場所が分かった。

 

「本当ですか?」

 

最後にアーチャーが言い残していったよ。山の祠?にあるらしい。

 

「なるほどね。霊脈がそこに集まってるのかしら」

 

「でも大丈夫でしょうか…?罠の可能性はありませんか?」

 

そんなことをするようには見えなかったけど……どの道他に情報は無い。調べてみる価値はあると思う。

 

『真偽は分からないけど、その位置に大きな反応があるのは確かだよ』

 

「そうと決まれば行くわよ」

 

そうして自分達は聖杯目指して移動を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 

「ところであのベルトとか変身とかなんなのよ」

 

カッコいいでしょう?

 

「そういう事を聞いてるんじゃないわよ!!」

 

 

 

 




かっこいいからだ!!!!

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