今回連載を始めようとしている作品は、私が書いてきた『艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話』、『艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話』のハッピーエンドの続編になります。
本作より新規の方にも身構えずに読んでもらえるよう、設定や語句の説明等々は追々投稿しようと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
ですが、今回のprologueの後にある「はじめに」というのはそのままの意味で、必要最低限の内容をここで補完していただく趣旨があります。お見逃しがないよう、よろしくお願いします。
では、『艦隊これくしょん 艦娘たちと提督の話』を始めます。
prologue はじめに
深海棲艦と人類の生存を賭けた戦争が発生してから、早数十年が過ぎていた。
戦争初期から刻一刻と時が過ぎていくのに連れて後退してゆく戦線。次々と寸断されていく補給路。絶たれた補給物資。深海棲艦と戦うために消費する武器・弾薬等々が満足に補充することが出来なくなっていき、更には食糧不足にまで陥った。
国内外がそんな状況である一方で、深海棲艦は無尽蔵に出現していた。それらによって、瞬く間に人類の生存圏を奪い尽くしていった。
圧倒的な物量差。今一つな通常兵器の威力。次々と撃破されていく各国海軍の艦隊……。
人類は絶望に突き落とされ、他国との貿易なしでは存命出来なくなっていた先進各国や、先進国からの"好意"で得られる食料やお金、インフラで生計を立てている発展途上国は滅びに瀕していた。
そんな世界情勢の中、ある極東の島国だけは数十年もの間、ずっと深海棲艦と対等に渡り合ってきていた。旧式艦艇で構成された艦隊を運用し、深海棲艦と互角に渡り合う国家が……。
その国家は日本皇国。アメリカ合衆国に見放され、一時は完全に戦闘力を失っていた国ではあるが、その旧式艦隊で瞬く間に戦線を押し上げていった。日本近海、南西諸島海域、インド洋、千島・アルフォンシーノ方面の深海棲艦を制圧していった。
それは日本皇国だけが成し得たことであり、驚くべきはその艦隊を指揮しているのが年若き青年であることだった。
そしてその青年は、この絶望と滅び征く世界の人間ではないということ。他の平和な世界から来た異邦人であったことは、他の国には一切知られていない。
そんな青年の指揮する艦隊は旧式艦ではあったが、決定的な違いがあった。
それは"艦娘"という存在があるということ。艦娘と呼ばれる旧式艦の艤装を手足のように操ることのできる特殊能力を持った少女たちによって、数多の海を青年は奪還していったのだ。
その艦隊は何と呼ばれているのか? 人類史に終止符が打たれようとしていた時に現れた救世主たちの艦隊、それは日本皇国海軍横須賀鎮守府艦隊司令部。
日本皇国、横須賀に拠点を構え、独立した指揮権を持った海軍基地だったのだ。
だがその横須賀鎮守府艦隊司令部は国内の敵対勢力によって戦闘不能状態に陥ることとなる。戦闘続行可能状態にまで立て直す間、取り戻した制海権は瞬く間に深海棲艦によって奪われていった。
そんな横須賀鎮守府は、どのような軌跡を辿っていくのだろうか……。
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「なぁ、赤城」
「はい。なんでしょうか?」
ここは日本皇国海軍横須賀鎮守府艦隊司令部の敷地内にある本部棟。その最上階にある執務室。執務を行う部屋ではあるが、その本質は組織の首長のために用意されているものだ。
「何を作ってるんだ? 執務しているかと思えば、他ごとしているから見てみれば」
「これはですね、なんとなく作ってみたんですよ」
「あのなぁ……仕事しろよ。今は執務中なんだぞ? 赤城に割り振られた仕事はどうした?」
ゲッと言いたそうに表情を歪めた、俺の目の前にいる女性の名前は赤城。世間一般的には『艦娘』と呼ばれている、第二次世界大戦・太平洋戦争初期に活躍した大日本帝国の正規空母の艤装を操る特殊能力を持った少女、ということに表向きではなっている。
実際のところ、艦娘がどういった存在なのかは分かっていない。研究機関に引き渡すこともなければ、しっかりとした出自を表す文献の1つも残っていないからだ。ただただ彼女たち艦娘が、深海棲艦との戦闘に必要不可欠な存在であることは分かっている。
俺が怒ったことで、赤城は渋々執務に戻っていった。だが、作っていたものが俺の机の上に残されている。
それを俺は手に取り、どういうモノなのかを確認する。封筒で中には便箋で何かが書かれていた。
「ん? 『深海棲艦と人類の生存を賭けた戦争が発生してから、早数十年が過ぎていた。
戦争初期から刻一刻と時が過ぎていくのに連れて……』なんじゃこりゃ……」
便箋に書かれていたものを読んでみるが、内容が予想していたのと全く違っていた。俺はてっきり大本営に出す上申書か何かだと思っていたんだけど……。
そんな内容を見た俺に気付いた赤城が、俺に向かって得意気に説明を始める。眉を吊り上げ、自信満々でだ。
「ナレーションですよ、ナレーション。物語を始めるならば、こういったものは必要でしょう?」
「ま、まぁ、確かにそうだけど……。え? 物語?」
「はいっ!!」
表情を一切変えずに、赤城は腰に手を当てて説明を始めた。
「良いですか? 一度しか言いませんからね!!」
「お、おう」
「コホン……」
咳ばらいをした赤城は、ドヤ顔で云うのだ。
「この物語はWeb小説投稿サイト『ハーメルン』様にて連載されている『艦隊これくしょん -艦これ-』の二次創作小説、『艦隊これくしょん 艦娘たちと提督の話』でお送りいたします」
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赤城の言い出したことが意味わからないんだけど……。それは置いておいて、赤城が説明をしてくれているので俺は黙って聞くことにする。
「これは前作『艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話』と前々作『艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話』の続編となっています。それまで私たちと提督が歩んできた軌跡と確率世界の一部でしたが、これが正規ルートです。前作のハッピーエンドからの話になっています。皆さん、お間違えのないようによろしくお願いします」
聞いているの、俺だけだけどな。
「それと、今回からは空気感が変わると思います。今までは戦争自体が劣勢でしたし、何より敵が多すぎましたからね。今回からそのようなものも少なくなり、深海棲艦との戦争がメインになっていきますよ。前作なんて内ゲバしかやってませんでしたからねぇ」
知ってる。報告書は逐一届いていたし、赤城たちが何をしていたのかも把握済みだ。
「そうは言っても、作者の意向には私たちは逆らえませんからね……。その辺は臨機応変に対応していくとしてですね」
何か急にメタくなったぞ。大丈夫か? まだプロローグなんだが……。……あれ?
「ともかく話を始めろと言われていますので……」
そういった赤城が、どこかを向いた。
俺もそれに釣られてそっちの方を見てしまう。
「では、皆さん!! よろしくお願いしますねっ!!」
「うぉい!! 俺には全っ然分からなかったんだがァ!!」
そんな俺を無視した赤城の声に呼応するかのように、執務室の扉からぞろぞろの艦娘たちが入ってくる。
「はい。では説明をよろしくお願います」
「任せるネー!!」
あれ? 俺は分かってないのに、他の艦娘たちもこの状況を分かっているのか?
金剛が話し始まる。
「始める前に注意点がいくつかあるカラ、それを把握していった状態で進んで欲しいネ」
金剛が人差し指を立てて言う。
「まず1つ!! 時々本作にしかない特殊設定が登場するカラ、それには要注意!! 作者は新規の方でも読めるようにはすると言っていたケド、円滑に読むのなら予習をしておくと良いネー。前々作か前作を読んでおくといいかもしれマセン。文字数多いケド」
今度は中指を立てた。
「新規独立二次創作小説ではなく前作・前々作の続編という形を取っているノデ、展開が特殊だったり、オリジナルの登場人物が多数現れるから要注意ネ!! 基本的には説明が書かれると思うカラ、大丈夫だとは思いマース!!」
次は薬指を立てた。
「私たち艦娘の登場が極端に減る話が多く出てくる可能性がありマース。それは艦これ二次創作小説としてどうなんだーっていうのも分りマスガ、世界観的に仕方ないのデース!! 恨むなら作者を恨むが良いデース!!」
小指を立てた。
「最後っ!! 今回は単一正規ルートでエンディングを迎える予定デース!! そこの貴方っ!! 後味最悪なバッドエンドじゃないかって思ったデショー? それは最後のお楽しみにっ!!」
スッと長門が今度は喋りに入ってきた。
「とまぁ、金剛が注意をしてくれた訳だが、この物語に終始付き纏う特殊設定だけは説明しておこうと思う」
……なんだ。見慣れない恰好をしているな、長門。
「『提督への執着』という私たち独自の反射行動がある。これは『私たちの提督、提督の身に危険が迫っていたりだとか、自身が敵意を向けた相手の気配を私たち艦娘が察知し、それに伴い人格が豹変する』というものだ。言い換えるならば"提督に対する保護欲"とも云う、一種の共通意識みたいなものだ。それに伴い、特定の艦娘には付加能力が備わっていたりする。よく覚えていて欲しい」
ドヤ顔で言っているけどなぁ、俺は知ってるんだが……。
「これは"横須賀鎮守府艦隊司令部の艦娘"にのみあるもので、他の所属の艦娘にはないものだ。区別して欲しい」
……長門が黙ったかと思ったら、鈴谷が今度は出てきたな。
「あと私たちのことも、ある程度提督や他の人間たちとの関係などが書かれると思うし、前作・前々作から引き継がない小さな設定があるけど、その辺りは見れば分かるからよろしくねぇ~」
ん? 鈴谷……いつもジャケットの前って開けてたっけ?
「それとさぁ、色々あって鎮守府に新規進水した艦娘たちがいっぱいいるからよろしくね!!」
今の情報、絶対俺に向かっての情報だっただろ……。
「という訳でっ!!」
え? 何、いきなり。
「「「「以上、注意書きでしたぁー!!」」」」
と言って、長門と金剛、鈴谷は執務室から出て行ってしまい、赤城も執務に戻っていってしまった。
今のやつは一体なんだったんだろうか。というかだな……
「……俺への説明は? なぁ赤城?」
「……」
「無視するなよ……」
当の俺が何も分かっていないんだが……。
prologueは以上となります。今回より前作・前々作との相違点を作中には言いませんでしたが、報告しておきます。
今回からまた、主人公の名前は伏せていこうと思います。その辺り、少々違和感を持たれる方もいらっしゃると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
作中ではさも当然のように、前作では今まで隠してきた設定もサラッと出します。
これまではギッチギチな内容でしたが、今回からは柔軟性と共に理解を深めて欲しいという意味合いも込めて、一応設定資料等も投稿する予定です(重要だから2回目)。
それでは皆さん、よろしくお願いします。