必勝を期してヴラド3世を呼び出したダーニックだったが・・・・・・。

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思いついたので書いてみた一発ネタ。というか誰かがもうやっているネタだと思うの。


第1話

 ところはルーマニア、魔術師の一族ユグドミレニアが支配する城砦にて。一族の首領たるダーニック・プレストーン・ユグドミレニアは60年前に冬木の地から永遠に無断拝借した大聖杯を使って聖杯戦争を起こそうとしていた。

 

 この男、かつては新進気鋭の魔術師だったのだが、魔術師たちの元締めたる魔術協会の人間に「あー、君の一族未来無いネ。待つのは衰退と滅びだけネ。マジヤバくね?」という予言を食らったがために馬鹿にされた過去を持つ。婚約者にそっぽを向かれ、他の魔術師たちからもまともに相手にされなくなり。魔術師として一度社会的にぶっ殺されたも同然の若きダーニックは思った。

 

 こいつらいつか絶対ギャフンと言わせてやる、と。一か八かでナチスドイツの後ろ盾付きで第三次聖杯戦争に殴りこんだダーニックは戦争のドサクサで冬木の地から大聖杯を強奪した。大聖杯によってユグドミレニアの繁栄を揺るぎ無きものにする意図の元であった。本来魔術師にとっての究極のゴールは根源の渦への到達なので、魔術師として盛大に道を間違えているのだが、悔しさのあまり魔術師としてどこか壊れてしまった彼には些末事だ。ちなみに後ろ盾になっていたナチスドイツの面々はルーマニアへ帰る途中で全員始末してしまった。たとえ当時のドイツ最精鋭の兵士たちであろうと魔術師であるダーニックにとってはカモでしかない。怨嗟の声を上げる彼らは一方的に抹殺された。

 

 かくして冬木市の歴史ある寺一つを完全に廃寺にし、マキリのご老体のボケの原因を作って間桐家滅亡を招いたダーニックは自分の居城の地下に大聖杯を設置。地脈を通して聖杯に魔力が満ちるまでの間、ずっとずっと聖杯戦争に備えて準備を進めてきた。英霊を召喚するための触媒集め、召喚した英霊が使うための魔術的な物資集め、魔力源にするためのホムンクルス製造、城砦含めた領地の要塞化、それらの下準備を悟らせないための情報工作。すべてはかつて自分を虚仮にした時計塔に反旗を翻さんがため。時計塔内の権力闘争で着々とのし上がっていたダーニックは復讐をその胸に聖杯がみちるまでの60年を待ち続けた。その過程でかつての婚約者の家も没落させて鬱憤の一部を晴らしつつ、他者の魂を喰らうという荒業でダーニックは聖杯戦争に参加した当時の若さを保っていた。もはや人間からかけ離れつつあるのだが、彼の中で目的のためにはすべてが許される。

 

 そして大聖杯が居城たるユグドミレニア城砦に運び込まれてから60年経ったある日。いよいよダーニックは聖杯戦争を始めるべく、自身のサーヴァントを召喚しようとしていた。使う触媒はかつて「串刺し公」の名で知られたルーマニアの領主にして、ルーマニアをオスマントルコの侵略から護り抜いた鬼将、ヴラド3世ゆかりのもの。ルーマニア以外の土地であれば後世の創作である吸血鬼ドラキュラによる影響が出た血生臭い人物が呼び出されるが、ルーマニアでの召喚であれば国を護るべく戦った英雄としての王が呼び出されるだろう。

 

 知名度にその強さが左右される英霊をそのホームグラウンドで呼び出すのだ。一級のサーヴァントと同等の凄まじい強さになることだろう。少しでも自陣営の勝利を盤石のものとしたいダーニックにとってヴラド3世は理想的な駒である。かくして。

 

「満たせ満たせ満たせ満たせ満たせ。ただ満たされる刻を破却する」

 

 召喚の呪文は唱えられ。

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の護り手よ!」

 

 英霊/バケモノは降臨した。

 

「・・・・・・?」

 

 

 召喚の魔方陣に立っていた人物の格好にダーニックは眉を顰めた。赤いコート、赤い帽子、サングラス。呼び出す英霊を間違えたのだろうか? 困惑するダーニックを余所に赤いコートを着た長身の男は――――

 

「ぐああああっ!?」

 

 抜く手もみせずに取り出した白銀の銃でダーニックを撃った。胴体に風穴をあけられつつも令呪を以って名も知れぬ相手を自害させようとするダーニックだったが、今度は令呪の宿った右手を吹き飛ばされまたも絶叫した。

 

 

『人か狗かバケモノか、と普段なら訊ねるところだが。人を喰らっている貴様は間違いなくバケモノだ。貴様の血は臭い、とても臭いんだ。マスターの器じゃないな』

 

 

 ダーニックが最期に聞いたのは、吸血鬼による侮蔑と嘲りが混じったコメントと、彼の脳髄を四散させた銃弾の放たれる轟音だった。




大聖杯「だっておめぇ、強いヴラド3世が欲しいって言ってたじゃん。最高にCOOLなヴラド3世を召喚したっていうのに何が不満なんだ!?」(逆ギレ)

旦那が大聖杯をどうしたかはご想像にお任せします。(考え付かなかったともいう)
アポクリファのヴラド3世と旦那を同時召喚したらきっと麻婆豆腐が美味しい展開になる。

続かない。


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