Crazy scenery 〜私が見た一つの憧れ〜   作:ポン酢 

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本編
1話<平凡で異常な日常>


ーー早く収束させなければ。

  私はそう思い急いで現場へと向かうため走った。

  現場に近づけば近づくほど、”ソレ”は聞こえてくる

 

 バンバンバン!ババババン!パンパン!

 

  銃声だ。私が行くべきではないのはわかっていた。

  だが不安だった。心配だった。

  そう考えていると私は転んでしまった。

  そして私が顔を上げた時、見覚えのある人がいた。

  私の憧れであり、私が嫌う最初で最後の1人だ。ーー

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

私の名前は「天宮 業(かるま)」

大手企業兼世界的大企業の「ロボトミー社」で働く研究員

…なのだが、私のクラスは「Dクラス職員兼研究員」である。

 

なぜ研究員であるはずの私がDクラスなのか。

その理由についてはだいたいの目処は付いている。

 

 実は数週間前程、上司と私たち

研究員達による報告会が開かれていたのだが、

私が上司が犯した違反行為について本社に報告をすることにした。

…だが、次の日には階級がオフィサーからDクラス職員に降格されていた。

 

恐らく上司の怒りを買ったか、隠蔽させるために私を「奴ら」に処理させたいのか。

 

ーともかく、私は研究員ではあるがDクラス職員。勿論現場にいなくてはならない。

正直なところ嫌ではある。

やることと言っても、アノマリーの観察、調査かエージェント達と会話をするぐらいだ。

 

そんなこんなで、何故か生き残れている上

エージェント達と今呑気に会話をしているわけだが…。

 

と言っても、生き残れているのにはれっきとした理由があるわけだが…

 

 

『やぁやぁ業くん!ここに居たんだねぇ』

…噂をすればなんとやら、か。

「…何ですか?ローランドさん」

私はその男に向かって言った。

 

私を探していたその男の名前は「龍崎 翔」

年齢は見た目からしてざっと4,50代と言った所か。そして私よりも大柄で

何か理由があるのか、本名で呼ばれるのが嫌らしい。

エージェントでの名前は「ローランド」と呼ばれている。そのため私もそう呼んでいる。

 

『いやぁ、君がどこに行ったかわからなくてねぇ…ちょっと困っていたんだよ』

「困ると言っても、困るのは私の方です。付きまとわないでください。

                    自分の身は自分でなんとでもなりますから」

『そー言われても…ねぇ?私は君のボディーガード…用心棒だからね』

「…こんな私を守るよりも、貴方は貴方の仕事をするべきでは?」

彼はこの施設内のエージェント達の中では一番と言っていい程の戦闘能力、戦闘経験がある。

その上アノマリーに対する精神面も、他のエージェントの群を抜く精神力である。

 

…と言っても、私も彼と同じ形としてではないが、アノマリー・・・

「奴ら」に対する恐怖などはない。と言うより無関心なのだ。

だが、「奴ら」の生態や能力、形状などには大変興味がある。

しかし一度見れば興味は無くなる。

私はそういう人間だ。

 

『いやいやいや!私の仕事は君の用心棒だからやっているんじゃあないかぁ。他の仕事と言っても、反逆行為をした反逆者の始末・アノマリーへの対処・パニック障害によるオフィサーやエージェントの始末。これぐらいしかないんだから君を守るという仕事ぐらいが一番楽できるんだよねぇ』

「・・・楽ならいいじゃないですか。それに、なんで私に付きまとうんですか?」

『なんでと言われてもねぇ。誰、とは言えないんだけど上の人間からのお願いでね?

                 君を守ってやってくれって頼まれちゃってさぁ?』

 

・・・私のことを心配する上層部の人間がいるのか?

いや、ありえない。まさかとは思うが・・・

 

「そうですか。ですが私は次のアノマリーの研究をしないといけないので。お気になさらず」

『つれないねぇ・・・まぁ、君のそういうところが私は好きなのだがね!』

「はぁ・・・」

 

相変わらず、呑気な人だ。こういう人が一番私が嫌うタイプだ。

この施設のエージェントの中でもベテランかつトップなのであるから、

そういう意識を持って欲しいものだが・・・

 

「さて・・・次はどう言う奴だ?」

どういうものと出会うのか。という期待が心の中に湧き上がりながら、

次に調べるアノマリーの書類を見つけ、それを読む。

 

「O-02-40-H・・・?」

いつもであれば前情報が書いてあるメモが資料の中に含まれているのだが、

今回は新しく来たためか前情報が書いてあるメモがない。

だがおそらくエンサイクロペディアに多少の情報ぐらいはあると思われるので、

私はPCの前に座り、エンサイクロペディアで「O-02-40-H」を検索した。

 

「丸く黒い形状をしている羽根のない鳥・・・?だが腕がありランタンを持っている・・・か」

ますます興味が湧いてきた。これは早く実物を・・・

『何処ぞの財団じゃあないんだ。簡単に情報が見れたら困るからねぇ色々と。

                   メモは私が隠させてもらったよ~』

「ぶっ!?」

後ろからいきなり声がして驚いてしまった。よりにもよってローランドさんだ。

『興味がわいただろう?さぁ、行こうじゃあないか!業くん!』

「あなたが付いて来る必要性はあるのですか!?」

当然だ。いきなり現れいきなり付いてくるとなると、誰だって慌てるだろう。

『いいじゃあないか~。私は収容室の外で待っているからさっ!』

「よくありません!・・・全く。好きにしてください」

『あ、いいんだ』

「言っても無駄そうですから」

『あったりぃ~。私はこう見えてしつこいからね!』

 

・・・本当にこの人は手を焼かせてくれる・・・。

 

 

 

・・・なんやかんやあったが、私はO-02-40-Hの収容室前に来た。

 

「・・・入らないでくださいね?」

『はいはい。わかってますよ~』

「はぁ・・・」

 

そう彼に言い残し収容室に入っていった。

 

すると目の前に映ったのは黒く大きく、そして丸い形をした鳥とは呼ぶにふさわしくない姿。

しかし、嘴があるためそこは鳥と呼べるだろう。体にはいくつもの目がついている。

うむ。実に興味深い。

 

<・・・>

 

大きいその鳥はじっと私を見つめている。

私は”ソレ”を見つめ返す

”ソレ”の目を見ていると少し不思議な気分になってくる。

そう、ふと「撫でてやりたくなってくる」のだ。

だが撫でるのは今ではない。そう思った。

 

 

・・・そしてO-02-40-Hの観測が終わった。

 

『おつかれさま。で、なにか収集はあったかい?』

「特には。言うとすればあのアノマリーは”大鳥”と言うべきでしょうね」

 

 資料を整えながら私は彼にそう応えた

『”大鳥”かあ・・・うん。いいんじゃないかな?外見がまさに”大鳥”だろうしね』

「えぇ。見たままを私は書いただけです」

 

『じゃ、それを管理人に提出して今日のお仕事は終わろうかぁ!』

「なんであなたの指示に従わなくてはいけないんですか・・・」

 

『指示じゃないよ~。ただの提案さ』

「・・・・わかりました。その話に乗りましょう」

『いいねぇ。後でお茶でもご一緒に』

「はいはい。分かりましたよ」

 

やっぱりあの人は何を考えているかわからない人だ。

余りにも行動が適当すぎる。あれでトップクラスのエージェントとは、呆れてしまう

 

 

・・・・管理人にO-02-40-H、通称”大鳥”の報告書を提出し、食堂へ向かう。

 

『あぁ~!業くぅん!こっちだよ~!』

ローランドさんは私を見つけると、イスから勢い良く立ち上がり、

大きく私に向かって手を振ってきた。

・・・それに驚いて複数人のエージェントが数秒彼を見た後、私の方に顔を向けた

 

「・・・・ハァ・・・」

『ほらほら座りなよ~!』

「やめてください。恥ずかしいです」

『まぁいいじゃないか。たまにはこういうのも』

「私は嫌です。特にあなたにされると」

『傷つく事を言ってくれるねぇ・・・本当』

「事実ですから」

『まぁ、一緒にスパゲッティでも食べようか!』

そう言ってローランドさんは私の分のスパゲッティを取りに行き、戻ってきた。

 

『じゃあ、いただきま~す!』

「・・・いただきます」

そして黙々とスパゲッティを食べている時に気付いた。

 

 

私が彼と会った時・・・数ヶ月前にはあったはずの右手の小指が、無くなっていることに

・・・なぜだ?

 

「・・・ローランドさん」

『ん?』

彼は美味しそうにスパゲッティを食べていたが、その手を止め私の方を見た。

「右手の小指がなくなっているようですが・・・何かあったのですか?」

 

そう私が言うと、彼は面白いものを見つけたかのようにニヤケ始めた

 

「・・・なんですかその顔」

『んん?いやぁ、無口な君が私に口を聞いてくれるなんてなぁ。と思ってね・・・ふふ』

「・・・いつも嫌というほど顔を合わせている人の外見が

    少しでも変わっていたら気になるのは当たり前でしょう」

『そう?そう思ってくれるのはありがたいねぇ』

「・・・雑談はいいです。質問に答えてください。なぜ小指がないんですか?」

『保険だよ保険。万が一のためにね』

「保険?」

『あぁ保険だよ。なぜなら私は・・・”死なないからね”』

「・・・死なない・・・?」

 

それを聞いた私は、ありえないと驚いてしまったが

 

 

”彼”が冗談で言っているようには見えなかった。

 

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