変なのに愛されて悪夢しか見れない   作:蒼穹難民

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前回のあらすじ


私は貴方が(の真由)を見たのを見ました!


さんじゅうごにちめっ!

「フンフフン、フフンフーン♪」

 

今日は学校は休みで、私はお使いで喫茶『楽園』に向かっている。

 

お使いの理由は今日の夜から竜宮島が出航するので、先輩達は仕事でしばらく帰れない。

 

必然的にお留守番の私は、料理は出来るのだが火の元は先輩達に許されていないので、

こうして私の昼食と、家の夕飯にサンドイッチのお弁当を買いに行くのだ。

 

堂馬食堂でもいいのだが、お弁当や出前のご飯は冷めると微妙になる。

そこで洋食のサンドイッチなら、冷めてても問題ないので楽園に来たのだ。

 

私が上機嫌な理由も初めて楽園に行くのと、先輩達が家にいないので自由だからである。

記憶が戻ってからは、あのスキンシップは辛いんだよなぁ…

 

 

お風呂の時も……

 

 

ーー真由ー?お風呂入るわねー。ガラガラー

 

ーー祐未先輩!?何してるんですか!?

 

ーー何って、立って入ってたら疲れちゃうでしょ?真由一人じゃ溺れちゃうじゃない。

 

 

 

 

入っている時に突撃して来たり…遠回しに小さい言うし…

 

 

 

勉強している時も…

 

 

ーー僚先輩ー、問題とけました!

 

ーーどれどれ…よし!全問正解だ! ヒョイッ!

 

ーー先輩?ちょっとオーバーじゃないかと…

 

ーーそうか?いつもこうだったからな、まあ気をつける。 ナデリナデリ

 

ーー(やめるつもりは無いのか…)

 

 

 

褒める時は抱っこして頭撫でたり…事ある毎に頭なでるし…(大事な事なので2回言った)

 

 

 

夜寝る前にも…

 

 

ーー真由、ほら早くこっちに来い。ヒョイ!

 

ーー独りじゃ寂しいよ?寒いよ?トイレ行く時一緒に行けないわよ?ズルズル

 

ーーそう言いつつ、せっかく敷いた一人布団をはぎ取って片付けないで下さい!!

 

 

 

 

恥ずかしいから一人布団で寝ようとしたら、実力行使で片付けられるし…

 

 

 

いざ、本当に寝ようとしても…

 

 

ーー祐未…真由…ダキッ!

 

ーー僚…真由…サンドイッチ!

 

ーーギュウギュウ(苦しい…!息できないっ!)プハープハー

 

 

寝相で両方から抱きしめられて位置が悪いと息できないし…

 

 

 

 

(記憶喪失の時と違って中身は14歳だ!って言ってるのに…)

 

そう言うと決まって先輩達は悲しそうな顏をして、

ハイライトの消えた目で無言で私を抱きしめ続けるんだ。全くもう、

文句を言っても、抵抗しても、大人しく一時間以上そのままでいないと離してくれない。

無論、その後の私の扱いは何も変わらない。泣きたい。

 

誰かに相談したいなぁ…学校の先生は足がついちゃうし、クラスのみんなに相談してもなぁ…

 

祐未先輩は諜報で耳が良いし、僚先輩にいたっては物理的に耳が良すぎな地獄耳だ。

二人とも実習生で学校にいるし、先生方の大体がアルヴィス職員だ。バレてしまう。

 

(アルヴィスで一人暮らしも許してくれないだろうし、戸籍が入れられているのはマズい…)

 

未成年の私の権限は、ほとんどが保護者の二人に握られているのだ。あれ?これ詰んでない?

 

ま…まあ成長すれば二人も私を自由にしてくれるだろう。

体が13歳になればアルヴィスで一人暮らし出来るだろうし、今は6歳程だから7年の我慢だ。

かなり長いけど、これくらい期間が有れば先輩達も根負けして一人暮らしを許してくれるかも。

 

そんな妄想をしながら店に着いたのでさっそく入ることにする。

だいたいの民家が和風だから洋風なこの店は、ちょっとテンションあがるかも。

 

カランッ…

「いらっしゃい!悪いけど今満席なのよ」ガヤガヤ

「ヘアッ!?」

 

 

見渡す限り人、人、人!!

 

 

予想外の大混雑に私は驚いて呆然としてしまった。

 

 

「あら?将陵さんちの。ボク、一人?」

「はい、昼食にランチと夕飯のお弁当を買いに来ました。」

 

 

甲洋くんのお母さんが話しかけてくれたので要件を伝える。

 

それにしても何でこんなに人がいるんだ…

何時もは漁で釣った魚をその場で食べてる漁師の人までいる。

 

 

「何か肥料の新薬が出来たらしくて素材が良くてね、こんな状態なのよ。

繁盛するのはいいんだけど、お客さんにまともに接客出来なくて困るわ。

相席でよかったら好きなとこに座って。ハイッ!ケーキセットお待ちどう!」

 

あちゃぁ…どうやらこの前降らした、黒い雨で影響が出た農作物だろう。

魚にも影響が出たけれど、フェストゥムの戦闘で驚いた魚達は釣れなくなって、

こうして料理の美味しいお店で、新鮮な野菜のご飯を食べにくる人が多いようだ。

 

甲洋くんのお母さんはひっきりなしにウェイトレスとして注文を受け、

忙しくて新しく入ってくるお客の案内も出来ないようだった。

 

席が空いてるんだったら相席でもイイやと思ったのだがこの身長で見る限り、

どこもかしこも人だらけで空いている席はありそうにない。

 

仕方ない、お弁当だけ買って帰ろう。

 

 

「お〜い!ボウズ!こっちこっち!」

「あっ、溝口さん」

 

 

誰かが手招きして呼んでいたので顔を合わせると、カウンターの方から

僚先輩の叔母さんの上司であるアルヴィスの工作員の溝口さんがいた。

 

 

「ここ空いてるから座れよ。将陵参謀長から又甥の話しは聞いていたけど、

たまに挨拶する程度で直接本人とこうやって話したことはなかったからな」

「ありがとうございます。そうですね…それじゃあ遠慮なく」

 

 

席に座らせてもらい、さっそくメニューをみる。待てよ…先輩達がいないんなら…

 

 

「すいません!注文お願いします!」

「ハーイ!ちょっと待っててね」

 

普段頼めないようなものを頼んでしまおう。

なぁーに!誰が見てるわけでもない…ブッダも寝てるさ。ナムサン!(ゲス顔)

 

「すいません、サラダサンドとフルーツサンドお願いします!あとオレンジジュースも!」

「サラダサンドとフルーツサンド、オレンジジュースね」

 

 

やってしまった…もう引き返せない。

私は超えてはならない一線を超えてしまった…ウェヒヒ♪

 

 

「(後で生駒の嬢ちゃんにチクってやろ)昼メシか?

ここのメシは美味いんだが、今日はもっと格別に美味いぞ」

「はい!溝口さんは珍しいですね、ケーキセットだなんて」

 

「仕事だったんだけどな、人探ししてたんだが休憩だよ。

コーヒーを飲みながら、ケーキでゆっくりとな…」

「はぇー…」

 

カッコいいなぁ…前まではミルク入りの無糖くらい飲めたんだけど、

今じゃ砂糖も入れなきゃ飲めないんだよなぁ…

 

「前もよく来てたんだけど、雰囲気がよくなってからほぼ毎日来てんだ」

「雰囲気がいい?」

 

確かに賑わっていていいと思うけど、そんなにかな?

 

「それはだな…」(カランッ!「ただいまっ!」

「おっ?ウワサをすれば帰ってきたみたいだな」

 

店に入って来たのは、出前から帰ってきたオカモチを持った甲洋くんだった。

 

「次の出前は西尾さんちだ。わかるな」

「うんっ!お釣り補充してから行くよ」

 

甲洋くんのお父さんはそっけない返事だけど、甲洋くんは笑顔で応えている。

 

「最近ケンカってほどじゃないけど、ちと揉めてな。お互い腹割ったのか、

アレでも仲良くなったほうなんだ。見ろ、オヤジさんこっそり笑ってやがる」

「ほんとだ」

 

甲洋くんが後ろを向いた時だけ、嬉しそうに笑ってる。

 

「照れ隠しなのさ。揉めるそん時、息子がコーヒーの煎れ方と料理教えてくれって言ったら、

オヤジさん、機嫌悪かったから怒鳴りこんでな。そんときゃ店にいた俺も追い出されたよ」

「今じゃ嬉しいけど、それを見られたら恥ずかしいんでしょうね」「だな!」

 

 

「じゃあ、行ってきます。父さん」

「ああ……気をつけてな」

「うんっ!」

 

 

小声だけど甲洋くんのお父さんが注意すると、甲洋くんは顏いっぱいの笑顔で出前に行った。

 

 

「はい、サラダサンドとフルーツサンドにオレンジジュースお待ちどう」コトッ

「うわっ!おいしそう!!あの、お持ち帰りでクラブサンド三人前もお願いします!」

「ええ、クラブサンド三人前、お持ち帰りね」

 

「うまそうじゃねえか、俺にも一つくれないか?」

「いいですよ!一緒に食べましょう!」

 

 

溝口さんが言った通り今日の昼食は格別で、まさに()()だった。

 

 

 

(読みが外れたかね、まあ、問題が無くなったなら楽でいいんだがな)

「溝口さん、何か言いました?」「うんにゃ?なんにも?」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス・メディカルルーム』ーー

 

 

 

メディカルルームには僚と祐未、専門医の千鶴がただならぬ空気で真剣に向かい合い。

僚と祐未は野獣のような目つきで、千鶴は困った顏で悩んでいるようだった。

 

 

「先生お願いします。真由をどうにか出来ないでしょうか」

「俺達にとって真由は大事な弟なんです!何か解決策を!」

「そう言われても……」

 

祐未は質問こそしているが疑問符がなく何かある筈とプレッシャーを放ち、

僚は感情がモロに表に出しており、二人に挟まれて千鶴は困惑するしかなかった。

 

「ごめんなさい。私ではどうにも出来ないわ」

「っ!?ウソ!先生なら必ず解決策がある筈です!」

「先生ならわかる筈です!俺達のこの気持ちがっ!!」

 

祐未は平静を保っていたが千鶴の答えに取り乱して平静を振り払い、

真由の事になると、普段は冷静で頼りがいがある僚も冷静ではいられなかった。

 

 

 

「そのぉ………ねっ?

 

 

 

 

 

 

……さすがに14歳の記憶があるのにその扱いじゃ誰でも反発するかと………」

 

 

 

「真由はただ反抗期なだけなんです!!

あの甘えん坊な子が一人で居たいなんて言う筈がないんです!!」

 

「風呂に一緒に入るのも…抱き上げて頭撫でるのも…一緒の布団で寝るのも…

前はあんなに喜んでいたのにどうしてしまったんだ!?子育ての経験がある先生なら何か…」

 

「ありません!記憶が戻ったのにその扱いなら誰だってそうなります!」

 

 

二人は本当にわからないらしくキョトンとした顏で、千鶴はため息をはいた。

 

 

「ハァ…。家族で、朝、起きたら?」

 

 

「「?おはようのキス」」

 

 

「送り物のプレゼントを貰ったら?」

 

 

「「抱きしめてキス」」

 

 

「夜、寝る前には?」

 

 

「「おやすみのキス」」

 

 

 

「ギルティ」「「そんなっ!?」」

 

 

 

有罪判決を受けた二人は目を見開いて驚いている。

 

 

「怖いわよ!?どれだけキスをすれば気がすむの!?

いい?あなた達、自分が真由くんの立場になって考えてみなさい!」

 

 

「「…えっと、何か問題ありますか?」」

 

 

「なんてこと…既に手遅れだったわ、この夫婦…」

 

「「いやぁ…まだ結婚してないですよ」」テレッ

 

 

そこじゃないわよ、と千鶴は本気でこの二人に何があったのか検討をする。

 

僚と患者と担当医の関係で付き合いの長い千鶴は、いくらなんでもおかしいと思い。

もしかしたら真由の方に問題があるのではないかと思案する。

 

 

ウィーン!「そのキスの部分、もう少し詳しく!!」

「貴女は安静にしてなさい!なんてタイミングで意識を戻すの!?」

 

 

やべーやつが二人から三人に増え、意識不明の重症だった果林が目を覚ました。

全身包帯を巻いた状態のまま、興奮で傷が開き、血まみれの状態で。

 

彼女は爆破事故で致命傷を負っていたがラハムの泥でそんな事はなかった。

 

 

猛る野獣に二人は気圧され、先ほどの興奮が嘘のように怯えている。

 

 

「どこまで行ったんですか!?Bですか!?Cですか!?3Pですか!!?」

 

 

「どこまでって…それだけだけど?」ブルブル…

「果林さん?BとかCとかって何?」ビクビク…

 

 

「んもおおおぉぉぉ!?純粋ですか!?尊すぎでしょぉぉぉぉ!!?」

 

 

果林は鼻から身体中の血液が出てるのではないかと思うほど尊敬(鼻血)を出す。

そしてそのまま目の前の獲物(先輩達)を美味しく頂かんと迫るが、果林の背後には、

注射器を構えた千鶴が足音をたてずに回りこんでいる。ワザマエ!

 

 

「医務室ではお静かに」プスッ

「ひぐぅ!?」バタンッ!

 

 

「「ホッ…」」

 

 

変質者(果林)は千鶴に鎮静剤を打ち込まれて倒れた。

 

千鶴は果林の止血と包帯を変えて、二人に手伝ってもらいながらベッドに戻し、

野獣の覚醒で落ち着いた二人に真由の扱いを一言言っておく。

 

 

「また今度検査をしてみるわ。それまで真由くんの希望もなるべく聞いてあげてちょうだい…」

 

 

「「……()()()()ですね、なるべく。わかりました」」

(あっ、これダメなパターンだわ)

 

 

念押ししてなるべくを強調する二人に、千鶴は真由の冥福を祈った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーその日、私は眠れる野獣が目を起こした悪夢を見た。ーー

 

 

もし正夢なら果林さんのために、頑張って料理の勉強してた甲洋くんが不憫すぎる……




天然ボケショタ(普通の家はこうなのかなぁ…?)

童顔美魔女「惑わされないでと言っていますーー!!」


真由の家は一部を除いてドS(とブラコン)しかいなかったので世間知らずです。


学校の友達や先輩、後輩?ご近所?類は友を呼んでしまった…

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