変なのに愛されて悪夢しか見れない   作:蒼穹難民

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久しぶりの番外
気楽に書けるから楽しい


ばんがいっ!そのななっ!

「人類軍探索機発見!まもなく上空を通過します」

 

「予定通りだな。ファフナー発進!絶対にコックピットは当てるな。これは陽動だ」

 

「3番機、発進してください」

 

『Jawohl!ホークトルーペン、出撃します』

 

 

竜宮島近海にて、反乱軍は陽動に人類軍の探索機に威嚇攻撃を行っていた。

 

 

竜宮島の為とはいえ、人類に対して攻撃するのを見ているのは気が引けるが、

今の新国連に、ノートゥング・モデルの情報が渡っても無駄遣いにしかならないだろう。

 

ノートゥングモデルといえどもそこまで特殊な機体な訳ではない。

 

あれは私と羽佐間君と近藤君が設計した機体だ。

 

対フェストゥム兵器開発の第一人者である私と、

柔軟かつ綿密な計算、設計ができる開発担当の近藤君、

ファフナー開発スペシャリストで物理学天才の羽佐間君。

 

如何に私達の能力が優れていても、元々は海外から取り入れた技術だ。

 

新国連は烏合の衆などではない。だが余りにも上層部の謀略が張り巡らされている。

過度な戦力となる人型決戦兵器ファフナーは、彼等にとっては核よりも厄介なのだろう。

フェストゥムのコアをメインシステムに使うという事は。

 

反乱軍の諜報員によれば、コア型フェストゥムの入手に成功し、

オルフェノク型を2体、既に倒したらしい。

 

両方とも人類に友好的だったらしいが人類軍の一部の軍が暴走。

オルフェノク型の逆鱗に触れ、新国連は10分の1程の国土と軍を失った。

 

新国連は他のオルフェノク型を危惧した結果、最初のオルフェノク型暴走と同じ、

国民を人質にしてまでオルフェノク型の自害を強要、コアを入手した。

 

 

私は、最初の軍の暴走事件は何者かの陰謀だと睨んでいる。

へスター・ギャロップは人類至上主義といえど、この様な愚行を許す女ではない。

 

この事をヒトラーに話すと、彼は目から鱗だったらしく、すぐさま諜報員を動かした。

 

「フラウ・コウゾウ、君の言っていた通りだった」

「何かわかったのかヒトラー?それと、フラウはやめてくれ」

 

軽口を言い、彼の顔は無いからわからないが、上機嫌な雰囲気から笑っているのは理解出来る。

 

「人類軍の暴走、これは捏造された情報だ。正式に上層部からの指令があり行動している。

この部隊はへスター・ギャロップ傘下の軍ではなかった。別派閥の、フェストゥム支配派だ」

 

フェストゥムとの徹底抗戦を予期していた私だが、フェストゥムの娘がいる私は眉を顰めた。

 

「フェストゥム支配派だと?」

「そうだ、今人類軍、引いては新国連は三分化している。

フェストゥム隠滅派、新国連事務総長・世界政府準備議会代表『へスター・ギャロップ』

フェストゥム支配派、新国連人類軍参謀総長・企業連合代表『ケイト・ピクトジン』

そして最近中立派から結成された、フェストゥム共存派、一年も経たずに()()まで登り詰めた。

【若きエース】【人類の希望】【現代に蘇った英雄】『リチャード・マサラ』

この3人が人類軍のTOPであり、小競り合いもしている不仲の3人だ」

 

「ケイト・ピクトジン?偽名ではなく、か?」

「本名だ、狙ったかの様な名前だがな」

 

「リチャード・マサラ…大層な肩書きだな」

「オルフェノク型の自害を強要させられた彼だが、功績で准将になってから、

彼は侵攻されていたブラジル領土を半分近く取り戻した、どうやらデマやプロパガンダではない。

本物の力を持った英雄サマという訳だ」

 

「まるで生前の君のようだな」

「世辞は止してくれ、私は悪名の方が多いさ」

 

くっくっくっと、含み笑いをする彼は、生前の事になんの未練も無い様だった。

 

「私にとってはあれは最善だった。虐殺や迫害をしたのも多くの者が望み、国を繁栄させる為だ」

 

「時代が時代だ。批判する者はいても、実情を知る者などその場にいない限り、わからぬものさ」

 

ひとしきり笑い合うと、彼の雰囲気は鋭利さを帯び、私も真剣に向きあった。

 

「リチャード・マサラ…彼はわからんでも無い。間違い無く人間だ。

だが……ケイト・ピクトジン、彼女は危険だ。とても人間とは思えない」

「それはどの様な点で、だ?」

 

「全てだ、全てであり得ない。彼女の経歴は確かな物だが、

ここまで完璧な人間などいる筈がない。超人にもほどがある。

その能力、精神性、全てにおいてバケモノだ。人間とは思えない」

 

彼女の経歴の書類を受け取り、目を通して見たがなるほど…これは…

 

「ありえん…な」

 

彼女の経歴は超人を絵に描いたように完璧だった。

ノーベル化学賞受賞、ウルフ賞化学部門受賞…他にも様々な賞を受賞している。

 

 

「細部まで調査した。けれど彼女の経歴には疑問が残る。

更に幼少期の知人が誰もいないのだ。誰もな。戦争とは時に便利なものだな」

「幼少期の経歴は偽りか、受賞も偽りだといいんだがな…」

 

幼少期ならフェストゥムと戦争している状態の今なら、

戦争被害で知人が死んだと幾らでも偽装出来る。戸籍も同様だ。

だがそれ以降は別だ。社会に出た状態なら能力は誤魔化せん。全て真実なのか?

 

 

こんな人間があり得るのか?

 

 

思考に耽ていると潜水艦の警報が鳴り響いた。

 

 

「何事だっ!」

 

「スフィンクス型です!このままでは人類軍の探索機が堕とされます!」

 

「ええいっ他の機体も出せっ!トリプルドッグだ!探索機を堕とさせるな!

…全く、これではなんの為に攻撃を仕掛けたかわからんな……」

 

 

陽動に人類軍に報告する探索機が堕とされたら元も子もない無いので、

攻撃していた探索機をフェストゥムから守る珍事が起こってしまった。

 

 

「すまん、どうやら竜宮島を追って来たフェストゥムのようだ」

「こんな事ならもう一泊すればよかった…」

 

 

それは勘弁してくれ、島を出る前に真壁に殺される。

 

 

 

 

 

ーーその日、私は牧師服を着た真壁に殺されかける悪夢を見た。ーー

 

 

吸血鬼?食屍鬼(グール)?何を言っているんだ真壁!?

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『ブラジル・とある街』ーー

 

 

──アイツといるとロクな事がない……

 

 

 

俺は一人で荒廃した街を歩いていた。

 

事の発端はケイトが「ちょっとボアッチに行こう!」

などと訳の分からぬ事をのたまい、SPを振り切り別れてしまった。

 

てっきり都会に向かうかと思えば、ケイトは「ご当地モノじゃなきゃヤダ」と言い、

バラックの多い生活能力が有る為、人類軍の援助を受けられない街に連れて来られた。

 

 

(…酷いものだな、活気は有るが良いものじゃない)

 

 

街はブラックマーケットでせめぎ合い、中には賭博、麻薬販売に人身売買も行われている。

 

新国連人類軍にも余裕がない状況では、援助をしていないこの街を取り仕切るのは無理だ。

 

 

それでもケイトの様に金持ちや上層部は国民の血税で裕福に暮らしている。

 

 

ハッキリ言って俺はケイトが苦手だ、何を考えているか解らないし欲望に忠実すぎる。

下品だし部下の見ていない部屋では何時も全裸で服を着ろと言っても下着しか着ない。

俺を男だと意識しないのかと聞けば「よっしゃ!バッチ来い!」なんて言い出す始末。

 

休みの日は呑んだくれているか、翌日仕事があるのに夜更かししてゲーム三昧。

目が充血してクマが出来ようが、御構い無しに反省しようともしない。

この前など限界で休日を丸一日寝て過ごしていた。典型的なダメ人間だ。

 

企業代表でもあるから人付き合いは悪くないし猫を被っているのだが、

内情を知っている自分からすれば詐欺もいいとこである。引く手数多なのもタチが悪い。

企業の重役や政治家、新国連の上層部男性達が不憫でならない。

パーティーで面倒な時に俺を男避けに使うな、俺はお前の様な鉄面皮じゃないんだぞ。

 

 

グウゥ…(腹が減ったな…都会まで遠いし何か買っていくか)

 

 

ホテルで食事を摂ろうとしていたので、昼は何も食べていなかったな…

 

屋台を見て回ったがとてもじゃないが食べれる店は少なかった。

 

諦めてホテルまで帰ろうとした時、足を引っ張られる感触がした。

 

 

「にいちゃん、腹減ってるのか?」

「?あっ…ああ…」

 

 

足元には小さくて気がつかなかったが子供がズボンを掴んでいた。

 

 

「だったらさ!俺の店のトウモロコシ買ってってくれよ!

俺のにいちゃんが作ったうまいトウモロコシなんだぜ!!」

「本当か?それは助かる」

 

 

腹は減っていたが、ホテルまでの繋ぎにトウモロコシもいいだろう。

俺は子供に店を案内してもらい、店に着いてから楽観視していた自分に後悔をした。

 

 

「ほらっ!ここが俺んとこの店だぜ!!」

「いらっしゃい!ルーカス、おかえり。お使いは出来たか?」

「ちゃんと買ってきたぜ!それよりにいちゃん、お客さんだ!!」

「おお、お前が連れて来たのか、偉いぞ」「へへっ」

 

 

その店に並べてあったトウモロコシは実があるか解らないほど細く、

虫が集っていて、実が見えたトウモロコシはかなりヘコんでいた。

 

 

「さあ、どれにしますか?」

「そうだな…その真ん中にあるやつを頼む」

「まいどっ!」

 

 

買わないのも悪いし、虫が集っていない真ん中のを一本買っていくことにした。

トウモロコシはホテルに帰ってから、外でアウトドア用の鍋に煮込んで食べるとしよう。

 

 

俺が金を払い、トウモロコシを受け取った瞬間、手元のトウモロコシが無くなった。

 

 

「ああっ!?それはこのにいちゃんが買ったトウモロコシだぞ!」

「ドロボー!!返しやがれ!!」

 

 

どうやらスリにあったらしく、トウモロコシは別の子供に盗まれてしまった。

 

店主の兄は店を離れる訳には行かず、弟の少年ではとてもじゃないが追えないだろう。

 

犯人の子供を見ると、嬉しそうな顏をした少女が、美味しそうに頬張って食べている。

 

胸が高鳴ると同時に空腹を思い出し、俺はトウモロコシをもう一度買うことにした。

 

 

「なあ、トウモロコシを後5本…いや6本くれないか?」

「へっ?にいちゃんそんなに食べるの?」

 

「ああ、あのドロボーを見たら、何だか腹が凄い減ってな」

「ははっ!お客さんには災難でしたが、儲かっちまいました」

 

 

俺は買ったトウモロコシをひとつ食べてみた。

 

 

とてもうまいものじゃないが、命の強さを感じた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺はあの少女を追い、人気のない路地裏まで来ていた。

 

何故かは解らないが、あの少女に惹かれ、いつの間にか追いかけてしまっていた。

 

(いたっ、あの子だ)

 

見つけた少女の側に何人かの子供がいた。

 

どうやらグループで窃盗をして、各自で盗んだ物を分けて食べているようだった。

しかし成果は著しいものではなく、あの子が盗んだトウモロコシを主に食べていた。

 

「なぁお前ら、ちょっといいか?」

「「「!!?」」」「「?」」

 

背後だったから気づかなかったやつと、一番小さいやつは皆が驚いているのに首を傾げている。

 

声をかけられて食べ物を後ろに隠すが、口元に食べカスがついていてちょっとマヌケだった。

 

「ククッ、お前ら、どうして盗んだ物を分けて食べているんだ?少ないのに」

 

都会のように遮蔽物の無い、路地裏では逃げ切れないと観念したのか、素直に質問に答えた。

 

「……私達は親がいない…仲間だから……」

「仲間…そうか、仲間なのか…」

 

てっきり家族や友達だと思っていたが、強い決意で集まった、()()だった。

こいつらは友達、なんて甘いものじゃなく、生き残る為に集まっていることがわかる。

 

 

「なら、俺の仲間になってくれないか?」ドサッ

「「「「「?」」」」」」

 

 

俺はトウモロコシを取り出し、座り込んで目線を合わせた。

 

 

「俺の友達が俺を見捨てて何処かに行っちゃってな。

街にいるのは解るんだが、独りぼっちは寂しくてな」

「!!うん、私も、独りでいるのは、もう嫌だもの」

 

「僕も、友達がいたんだけど…みんないなくなっちゃった…」

「オレも、母ちゃん仕事に行くってどこかに行っちゃって、

一か月も、もう戻ってこないんだ…」

 

 

トウモロコシを分けて食べ合い、俺にも他の食べ物を分けてくれ、

そのまま談話しながら子供達と食事をした。

 

 

「俺の名前はレイ、レイ・ザ・バレルだ」

「あのねっ?私はーーー……」

 

 

俺はその後子供達を引き連れ、盗んだ店や人に金を払い謝り、

ホテルまで連れ帰り、これからの面倒を見ることにした。

 

 

「うわぁ…レイ、そんな子供達をお持ち帰りだなんて引くわぁ…」

「何だ、帰ってたのかケイト」

「女の子達、ノンケしかいなかったよ…」

 

 

当たり前だろう。

 

 

俺は子供達と一緒に、ベッドで眠れないから床にシーツを敷いて眠った。

 

 

 

ーーその日、俺は夢で誰か解らないが、仲間が裏切る悪夢を見た。ーー

 

 

 

──お前らは…裏切らないでくれるよな…?

 

 

 

翌日、俺は腹を壊した。

やっぱり、慣れない物を生で食べるもんじゃないな…

 

 




公蔵さんが吸血鬼になると思ったか!
史彦さんもじゃ!!

レイくん孤独恐怖症or裏切られ恐怖症
笑顔に惹かれたのであってロリコンではない…はず…

たぶん、きっと、メイビー

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