変なのに愛されて悪夢しか見れない   作:蒼穹難民

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前回のあらすじ

「みんなで泥遊びしようよ!」
「わーい!」「たーのしー!」

「「駄目だこの大人達…早くなんとかしないと…」」


にじゅうろくにちめっ!

 

 

「皆城司令、やはり泥には副作用が有る事が判明しました」

 

「攻を急ぎ過ぎたか…なまじ、私の研究気質が仇になった、

少しでも早くフェストゥムに対して有利になろうとしたツケだな」

 

 

公蔵はアルヴィスの医療責任者の千鶴と2人きりで会話していた。

 

前回の事件から、幹部達は研究データの流出をこれ以上させないよう全ての研究過程、

報告書を紙媒体にして各自で管理する事により情報の所在を司令を含めてわからないようにした。

 

研究報告でさえ司令と責任者のみが行い、第三者は絶対に入れないどころか、

報告がある部屋は複数用意して無人の部屋にも警備を置き、警備に不審人物が居た場合、

すぐさま工作員がマーク、その人物の潜入家宅捜査を実行、人類軍の証拠品が有れば差し押さえ、

逮捕の流れになった。無論関係者も洗いだして芋づる式で逮捕される事も多々あった。

 

意外にもこれに困ったのはアルヴィスで、人類軍の工作員の人数が多く、

調べた所、何と島の住民の十分の一近くが工作員であり、隠れている工作員も未知数である。

 

もし逮捕した大勢の人間を島外追放にする場合、アーカディアンプロジェクトの一環として

平和を維持する為に島外追放を情報操作して住民に説明をする理由を考えねばならず、

途方もない事後処理と、約2000人の島の労働者が約200人も減る事になる。

 

この措置として島の規制を緩和し、工作員とはいえ住民の喪失を防ぎ、

さらには人類軍工作員を島の味方に引き込み、労働力にする政策が導入される事になった。

 

軽度のモノなら保護処分し、厚生プログラムによる竜宮島生活矯正が施され社会復帰を許される。

不適格者、重度の罪を犯した者は島外追放になるが人類軍の穏和派に使いを通して保護させる。

 

以前と比べればあり得ない程の温情措置なのは幹部会に僚達も加わり、

僚の冷静な判断と祐未の聡明さから、島の刑罰を緩和する提案をして

島とアルヴィスの負担減らし、労働力の保持と人類軍の情報入手を目的に提案が受理された。

僚は何故か始終笑顔だったが…(アルカイックスマイル

 

 

(俺達家族の幸せを奪った人類軍め…!さんざん使い倒して、ボロ雑巾の様に見捨ててやるッ!)

(僚っ…!僚が優しく笑ってる、やっぱり僚は優しいままだったんだね!)

 

 

…そんな思惑はなかっただろう…多分、きっと、メイビー。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

「副作用があるのは覚悟の上だ、当然メリットのみで対価が無いのはあり得ない。

責任は取る、研究指示を出してデメリットを、私は度外視していたのだからな。これは必然だ」

「皆城司令…」

 

千鶴は最初から急ピッチでやらせなければいいのでは?と言いたかったがグッと飲み込んだ。

 

「副作用の方なのですがそこまで危険性がある物ではありません…生理現象程度のものです」

「………………」

 

公蔵は自分の早計に羞恥で顔を逸らした。

 

「被験者の羽佐間翔子さんは過度の運動で新陳代謝が急激に発生、

極度の成長痛を訴え、新陳代謝に消費した栄養分の食事が必要になったそうです」

「健康デヨカッタヨー、オジサン心配シタヨー」

 

「司令、真面目に聞いてください」

「すまん、最近心労が絶えんでな…」

「後で森田先生も含めてカウセリングをしましょう。

早乙女さんも真壁代理を通して森田先生のカウセリングを受けています」

「そうだろうねぇ」

 

日に日に2人の公蔵に向ける目が、もし視線で人を殺せるなら殺せれるレベルまで達していた。

公蔵は2人に対する申し訳なささと、いつ刺されるか解らない恐怖でストレスが溜まっていた。

 

「いつかお二人も解ってくれます、話しを戻しますが他の被験者も同じ症状で、

身体中に痛みを訴える被験者が後を絶ちません。無茶をしなければいいのですが…

泥のドーピングのような効果で、身体の限界が解っていても無茶する方が多いようです。

西尾先生も山登りをして先日、急激なリバウンドの様に白髪が全て黒髪になったそうです」

「なにそれこわい」

 

西尾行美は猫背は完全に治り、今の見た目は40代ほどである。

 

「虫歯が抜けて新しい歯が生えたり、抜いたはずの親知らずが直立して生えたり…

歯並びが治ったりするのですが急激な痛みを伴うので覚悟が必要です。

麻酔として使う事も出来ますが、それでは依存する恐れがあるので効果的ではありません。

健康には問題がないのですが使用制限をした方がいいのは間違いないです。医学的には」

 

「…私も飲めばストレスが減るかなぁ……」

「やめた方がいいですよ、麻酔は一時的にしか持ちませんし、

麻酔が切れたらその後のストレス性の症状は無くとも、痛みは残るのですから」

 

「不適格者の約30人以上が島外追放なんて事態、どうやったって誤魔化しきれん」ダバーッ

「そんなに居たんですね…統括班と人事班が根を上げるわけです」

 

厚生プログラムに問題はなかったが、そもそもそれを受ける様な人物は工作員でも

元からまともではない工作員や、工作員の囮として癖が多い者ばかりである。

 

200人中170人近く残せたのは厚生プログラムを考案した僚達と千鶴と森田、

優秀なアルヴィス職員のお陰だ。しかし30人以上の脱落は仕方がないだろう。

人事と統括には頑張って欲しいものである。胃潰瘍待ったなしだが。

 

「私は医院とアルベリヒド機関で関わっていないので森田先生には頭が上がりません、

本来ならカウセリングも全て私がやるべきなんですが…」

「流石に君一人に押し付けるわけにはいかん、ところで森田君はどうしている?」

 

アルベリヒド機関はまだ残っている日本列島にあり、

島の住民達の報告をしなければいけないので、千鶴は厚生プログラムとカウセリングには

参加して手伝う事が出来なかった事を千鶴は悔やんでいた。

 

「それが…真壁代理にもカウセリングが必要になって、その対応をしています」

「・・・・・・・・・」

 

 

公蔵は統括の報告には急いで行くと決めた。

 

しかし統括班には早すぎる時間にきたので、

担当責任者である史彦と柄鎖の公蔵へのヘイトは高まるばかりだった。

 

「お早いお着きですね、司令……!!」(#^ω^)ピキピキ

「本当だな、工作班の報告がまだ来てないので此方の報告が出来んというのに…!!」

 

 

(あるぇ〜〜〜〜!?)(´・ェ・`)アボーン

 

 

工作班が一日中見張っているので、人事判断と処理は必然的に深夜になり、

統括班は工作班の報告が来るまで家に帰れるのはアルヴィス最終になっている。

 

 

 

──────────────────

ーー『西尾商店』ーー

 

 

「僕はあまり来ていないな、カレー大会以来だ」

「そう?皆城くんも偶には来てみるといいよ、会話のタネになるし」

 

 

蔵前果林と皆城総士は西尾商店で買い物に来ていた。

 

「幼い頃はよく来ていたんだ、機会がなかっただけだ」

「真壁くんと仲を戻したんでしょ?一緒に来たらどう?」

「何故そこで一騎が出てくる、一騎は関係ない」

「またまたー」

 

総士がしばらくの間、遊学を建前にアルヴィスのCDCに研修に行く事となったので

必要な物を買い出しに来たのだ。

 

 

(CDCの研修…本当の目的は工作員が流出したデータの回収とファフナーの運用…

以前の作戦と比べれば堅実だ、後は父さんが落ち着いて考え直してくれれば…)

 

 

今回、偽装鏡面内ではあるが、ファフナーの模擬戦と運が良ければ、

人類軍工作員が流出したデータを回収するのが目的だ。

 

 

総士が遊学を建前にフェストゥムを呼び込み、果林に実戦させる予定もあったが、

L計画を生き残ったパイロット達がいるのでその計画は流す事にして、

果林育成の先輩パイロットと果林の模擬演習が計画されたのだ。

 

しかし皆城公蔵はフェストゥムとの徹底抗戦を視野に入れており、

総士は父がL計画の様な無謀な作戦を繰り返すのではないか不安であった。

 

(フェストゥムとの徹底抗戦…それでは人類軍と変わらない、このままでは…)

 

「?皆城くん、どうかしたの?」

「っ…何だ?」「いや、ぼーっとしてたから」

 

総士は自分が思っていたより熟孝していた事に気づいた。

 

「何でもない…何を買うか悩んでただけだ」

「ふーん…「ガララッ」んっ?」

 

「おっ、お前達も買い物か」

「奇遇だね、私達も買い物に来たんだ」

「こんにちはー!」

 

「こんにちは、先輩達もですか…運命を感じちゃいますね…」

「こんにちは僚先輩、…蔵前、何を考えている…」

 

(なに果林?祐未先輩が僚先輩と婚約して離さない?

果林 それは無理矢理引き離そうとするからなのよ

逆に考えるんだ「愛人でもいいさ」と考えるのよ)

 

あれから果林は甲洋の翔子に向けるアプローチにじれったさを感じ、

自分は妥協しないと僚の犬耳尻尾に誓い、僚の愛人を目指し、

あわよくば祐未も合わせたハーレムを築こうと考えていた。

 

別段彼女は同性愛者という訳では無いが、

別に嫌いでもないしむしろ尊敬している。可愛い弟分も出来るし、

あれっ?これって一粒で三度美味しいんじゃない?という結論に至った。

何でこんなになるまで放っておいたんだ!!

 

 

「あっ…ああ、別に普通じゃないか?みんな一緒に行くわけだし…」

「ええ!そうですね!()()()()()()()!行くんですから!」

 

「蔵前さん、なんだか凄い元気ね…」

「きょうの果林おねえちゃん、ちょっとこわい…」

「蔵前…」

 

果林は鼻息荒く、遊学と言う名のパイロット育成合宿を心待ちにしていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーそのひ、わたしはよくばりなおねえさんが

いろんなひとをつかまえてかぞくにしようとするあくむをみました。ーー

 

 

ーー…さびしいからおねえさんのきもちがちょっとわかりました。

 

 

 

 

 




お前も、家族だ。

リアルが忙しくて投稿遅れて申し訳ありません…
これから更新が遅くなります。
本当にごめんなさいm(_ _)m

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