変なのに愛されて悪夢しか見れない   作:蒼穹難民

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前回のあらすじ


どうあがいても絶望


にじゅうさんにちめっ!

突然だが竜宮島には実は何人か人類軍側の工作員がいる。

 

 

皆城公蔵達アルヴィスの幹部はその存在に気づいてはいるが、

人類軍の動向を探るため、めぼしい人物はマークされている。

 

彼等工作員の処遇は溝口 恭介(みぞぐち きょうすけ)率いる特殊工作員が監視しつつ判断する。

 

しかし人類軍、アルヴィスの工作員両陣営は焦っていた。

 

ラハムを最重要機密として今までのセキュリティを強化し、

人類軍は情報を集められず、アルヴィスは人類軍の工作員が何をするかわからない現状に。

 

アルヴィス職員の中には情報を入手して人類軍にリークしている工作員もいるが、

人類軍の工作員はお粗末なもので一般人の工作員にもアルヴィスの情報を探らせようとしている。

 

ただの一般人がアルヴィス内に侵入出来るわけがないし、

複数人工作員がいるのに何故役割分担をして効率よく情報を入手しないのか?

 

それは現状の人類軍がなりふり構わずの状態で、

工作員の情報収集は工作員側からの発信機付きのボトムメールで送られ、

それが正しい情報か判断するのも会話をするのも出来ないので、

竜宮島付近に偵察機が飛ばされるだけである。

 

もちろん情報に竜宮島は擬装鏡面のカモフラージュされているとあるが、

島が確認されない限り、どれほど情報を送ったとしても信用できず、

人類軍の上層部達は工作員が竜宮島に毒されているか疑心暗鬼になるのも仕方ないだろう。

ほとんどの情報は信憑性が薄く、工作員の情報は工作員共々信じられていなかった。

 

そして追い討ちのようにアルヴィスのセキュリティ増強、

人類軍工作員はいつ爆発するか、アルヴィス工作員は戦々恐々とするしかなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『大衆食堂堂馬』ーー

 

 

「信じて送り出した甥っ子が嫁と弟の家庭築いて薬で病気完治して

運動にドハマリして幸せダブルピース家族引き連れて帰ってくるなんて…」

「だいたいあってるけど言葉を選んでくれません?」

 

「真由もピースすきだよっ、ほらっ!」ピース !

「ぐふぅ!?」

「撃沈してる…」「僚、真由は純粋過ぎたのよ」

 

「あざとい、なにこの子あざとい、どこで拾ってきたの?」ヒソヒソ

「…空から降ってきたんだ、フェストゥムに乗って」ヒソヒソ

 

「へっ?」「まあ…そうなるよな…」

 

佐喜は情報規制の為に、真由は日本から来たとしか知らされていなかったので

真由がどこから来たのかは知らなかった、

まさか休暇の原因のフェストゥムとは夢にも思うまい。

 

「僚くん、甥に先を越されて彼氏もいないあたしの身にもなってよ…」

「まあまあ佐喜ちゃん、ドンマイっ!」

 

「舞ちゃんは陣内さんがいるからそんなこといえるのよ、

あーあー…私もいい人いないかなぁ〜…」

 

佐喜は親友の堂馬 舞(どうま まい)に励まされたが舞には陣内 貢(じんない みつぐ)という彼氏がいるため、焼け石に水だった。

 

今日僚たちが昼食を堂馬食堂にしたのも、

2人が親友なのでせっかくの休日だから合わせたかったのだ。

もっとも、いつも夜になると晩酌に来るので変わらなかっただろうが。

 

「とりあえずは美味しいご飯食べて元気出しましょう。

佐喜さんならきっといい人見つけられますよ」

「うん、そうだね。舞ちゃん?レバニラ定食お願い」

 

「さっき彼氏欲しいって言ったばかりなのに…」

「気にしないであげて、佐喜ちゃんああいう子なの…」

「いいじゃん、元気つけるんだし、たまの休暇だから食べたって!」

 

その女子力顔負けの漢気が原因だな、と僚は思った。

 

「真由、ここのおすすめは生姜焼き…ハッ⁉︎」

「僚どうしたの?」「おにいちゃん?」

 

 

(生姜焼きの中に…玉ねぎが、あるっ⁉︎)

 

 

僚はここの生姜焼きは好きだったが、プクと同化してからネギや香菜などの

匂いがきついものが苦手になり、堂馬食堂のだいたいのメニューには

その全部が入っていた。

 

(落ち着け、別に味が嫌いなわけじゃないんだ、

俺の中のプクが苦手意識があるだけなんだ!)「クゥーン…」「!?」

 

「?今犬の声がしなかった?」

「き、気のせいですよ、あははは…」

 

(僚くん!気をつけてよ!)

(すいません!つい出ちゃって。)

「?」

 

僚がプクと同化した事はアルヴィス以外では機密であり、

一般人である舞や公の場で正体を晒すのはご法度である。

真由にも秘密にするよう言ってあるが真由には秘密の理由がわからなかった。

 

「えーと…トンカツ定食で。」

「真由ねっ、たまごどんっ!」

 

「私は生姜焼き定食で、僚、後でわけっこしよう?」

「祐未…」「真由もっ、真由もわけっこする!」

 

「じゃあ皆でわけっこしようか。」「うん!」

 

「舞ちゃんごめん、追加でブラックコーヒーもお願い…苦いやつ」

「ど、ドンマイ?」

 

 

佐喜はほのぼのとした光景に、口から砂糖が出そうになっていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「聞いてますか溝口さん?私もうほんと辛いんですよ〜…」

「いいじゃねぇか、俺はずっと仕事中だったんだぜ?

平和なんだ、若いのぐらい笑って見てやれ」

 

 

あの後僚たちと夕方まで町を周り、堂馬食堂に飲みに戻ってから

上司の溝口らアルヴィスの職員たちに愚痴を言っていた。

 

「仕事ってずっと楽園にいたんですか?」

「いや、途中で外から監視してさ、ありゃ客に対する態度じゃないよ」

 

喫茶『楽園』の春日井夫妻は島での不審な行動が多く、

島を守るアルヴィスにも不遜な態度を隠さず、島を他人事のような物言いをするので

アルヴィスの工作員にマークされていた。

 

「何かあったんですか?」

「それが店ん中でずっと怒鳴りっぱなしでな?

アルヴィスの文句ばっか垂れてるし、帰ってきた息子を家から追い出してたんだぜ?

流石に気になって見てたら喧嘩までふっかけてきやがった」「うわぁ…」

 

「隠す気あるんですかね?」

「だな、多分スパイの囮だろ、じゃなきゃもっと演技が上手い奴送るさ」

 

溝口は他にいるであろう人類軍の工作員にため息を吐いた。

 

「お前んとこはどうだ?陣内」

「おやっさんとこほどじゃないですけど皆ピリピリしてます。

フェストゥムの実験を参加してるのとしてないのではっきりわかりますよ」

 

「何がわかるって?」

「喜びすぎなのと不機嫌になるの、両方共スパイですね」

「あちゃー」

 

溝口はこれから忙しくなるであろう未来に辟易とした。

 

「どうかしたんですか?舞々おつまみセットお待ちどうさま」

「いや将陵参謀長殿の愚痴が長かっただけだよ」

「ぶり返さないでください!」

 

今日は飲んで気分転換しよう、食堂の客たちはそう思った。

 

「それにしてもニラ臭いな、誰かレバニラ食ったのか?」

「……………」

 

 

女子力を鍛えようと佐喜は心の中で誓った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス本部・地下即席格納庫』ーー

 

 

 

 

「ふーん…フェストゥムにも変なのがいるんだ」

((それラハムさんが言っていいの?))

 

「えっと…ボクのはほらっ!真由に変えてもらったというか…」

((へぇ…私も会えば変わるのかな?))

 

「だっ、ダメだよ!真由は今は小さいから」

((なら大人になったら来てもらおうかな?))

 

「そ、それは…」

((どうかしたの?ラハムさんも真由に会えるよ?))

「そうだけど…」

 

ラハムは今までにあった事のない無邪気な相手に、

計算して有利な会話に出来ない事に困惑しながら会話していた。

 

(柄鎖に交換条件として、非常事態になったら真由をボクに合わせる約束は早まったかな?)

 

ラハムは本島にくる代わりに非常事に真由と合わせる約束をこぎつけた。

 

(非常事なんていつ来るかわかんないし、もっと有益なのを掲示すればよかった…」

((ラハムさん声に出てるよ))

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「アッハッハ!仕事終わりっ!」

 

柄鎖は定時ではないがいつもより早く帰れる事に歓喜していた。

 

アルヴィスの幹部達が思っているより柄鎖はラハムに気に入られており、

3日の猶予をもらい予定よりも早く帰れるし他の仕事も、もう少ししたら落ち着くだろう。

 

(辛い時に仕事を代わってもらい、ありがとうございます真壁代理!)

 

スキップしそうな雰囲気のままこのまま家に帰ろうとしていた。

 

(夕飯はどうしようか?他の皆も堂馬食堂にいるからそこで食べようかな)ウィーン

 

「随分と楽しそうじゃないか早乙女君。司令代理の私を差し置いて…!」

「ゲェーッ!?真壁代理!?」

 

そこにはいるはずのない真壁史彦の姿があった。

 

「な、何故…?」

「指紋認証などが必要なデータがあってね、まだ家に帰ってなくてよかった」

 

「い、いやだ!私は今日はもう家に帰るんだ…!」

「ほう?なら明日は大丈夫だな」

「あ"っ…」

 

柄鎖は自分の失言で3日あった猶予が消え去ったのを理解した。

 

「一体いつから────今日するのだと錯覚していた?」

「ウゥゥゥ!?」(柄鎖の怯える声)

 

「では明日、迎えに来よう」

「嘘だァ─────ッ!?」

 

 

…柄鎖の慟哭が響いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーそのひ、わたしはおうちにかえれない

かわいそうなおにいさんのあくむをみました。ーー

 

 

おうちにかえれないのはみんないやだもん。

 

 

 

 




ラハムさんの好感度
真由>超えられない壁>森田=TSXパイロット>L計画参加者>>
>>竜宮島の住民>次元すら超えられない壁>島のミール=乙姫

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