レッドさんの華麗()なる珍道中 作:らとる
ヒョワアアアアアアアアア------!!!(一時ランキングに乗ったのを確認する)
ウオオオオオオオオオオオオ-------!!!!!(書きかけの小説を速攻で仕上げる)
皆様本当にありがとうございます。拙い点も多い中、面白いと言っていただけて感謝感激雨あられです。これからも頑張ります……!
というわけで、今回は固定値信者の回です。ナイトヘッドやちきゅうなげで何となく察した方もいられるかと思いますが、作者(&主人公)は紛れもない固定値信者です。むしろTRPGの民で固定値信者でない方なんていらっしゃるんだろうか。
というわけでやってきましたニビシティ!ひゅーひゅー!
ここまで来るのは初めてだからすごく新鮮な気持ちだ。こう、画面越しに見ていたのが現実になるとこうなるんだなあって改めて感動する。マサラやトキワは記憶を思い出す前から知っていたから実感が湧かなかったけど、こうして見るとほんとうにポケモンの世界に生きてるんだなあって感じがするよね!
…………うん、感動するよね。感動するんだけどさ。
「………………」
「ピカピ♪」
今は背を向けているトキワの森に黒こげのむしポケモンが大量発生しているなんてことがなければもっと素直に喜べたんだけどなあ。
避けられない悲劇だったんだ。誰も悪くなかったんだ。強いて言えば、そう、「このまんまニビシティに向かっちゃおうZE☆」なんていう私の短慮が諸悪の根源だっただけで。
「ピカ……チューッ!」
だってほら、誰も考えないだろ?まさかリザードのみならずピカチュウまでもがバトルジャンキーだなんて。
相手が逃げるか戦う意思がないかのどちらかばかりで鬱憤が溜まっていたんだろうか、森を抜ける直前、突然ピカチュウが腕から飛び出したと思ったら広範囲に【でんきショック】連発。見敵必殺とばかりに通りすがりのむしポケモン達に全力の八つ当たりが襲い掛かった。
目の前にはゲームでいうHP1でまひ状態になり、黒コゲでぴくぴくしているむしポケモン×1、2、3、……うわ、7匹もいる。キャタピーもトランセルもビードルもコクーンもいるし、これなら確かに捕まえるのも簡単だけど。もしかしてキミわかっててやってる?だとしたら末恐ろしいなんてもんじゃないぞ。
えっへんと胸をはるピカチュウには悪いけど、正直やりすぎ感が否めない。いや一応法的には問題ないけどそういうもんじゃないだろう。野生の世界とはかくも厳しいものなのか。
とはいえ、こうなってしまったものは仕方ない。心の中で謝り倒しながら、一匹一匹ボールに入れては再び放していく。うちのピカチュウがすみません、でもこの数はさすがにポケセンには連れて行けません。
とかやってる間にも背後で更なる犠牲者が量産されていく。いかにも楽しんでますみたいなピカチュウの鳴き声がもはやホラーでしかない。
いくらなんだってこれ以上はまずい。こう、いずれ戻ってきた時とかにお礼参りされそうで怖いやつだ。さすがに視界いっぱいのむしポケモンからの猛攻なんてことになったら私は泣く。
「……ピカチュウ、あんまりやりすぎるとボールに入れるよ」
「チャアッ!?」
とまあ、そういうわけで図鑑は埋まりました。やったぜ。犠牲はあまりにも大きかったけどな!哀れな被害者であるむしポケモン達に合掌。
ちなみに、トレーナーとは戦っておりません。目が合ったらバトル?ならば話しかける隙もないように目の前を走り去ればいいのさHAHAHA!私ってば天才。
1つひっかかる点があるとすれば、むしポケモン達の尊い犠牲によりピカチュウのレベルが上がった際、何故か【かげぶんしん】を覚えたことだろうか。だからこの世界は赤緑じゃないのか。ピカチュウ版である可能性は考えないものとする。だってもしそうならほら、御三家が揃っちゃうじゃん……原点にして頂点フラグビンビンじゃん……。やめて、私はシロガネ山にはこもらないよ。
まあ、覚えてしまったものは仕方ない。ニビジムにおいての切り札といっても過言ではないし、ジムに挑戦する前にちゃんと使いこなせるように練習しないと。さっきはピカチュウが自分で動いてたから、まずはトレーナーとの共闘に慣れないといけないしね。
トキワの森はさっきの悲劇の二の舞になりかねないので、ニビシティの前にちょっとだけある草むらが次の鍛錬場所。ここならトレーナーもいないし、何より戦い慣れたポッポとコラッタしかいないので安心して戦えるというものだ。……いや、このピカチュウみたいな個体がいたらまた別だけど、そうそうないだろう。多分。
何はともあれ、まずは回復だ。いくらレベル差でワンパンKOだったと言っても、あれだけの数の戦闘をこなせば疲労は溜まる。この世界ではPPという概念がないから数値として出ない分、トレーナーがきちんと見ていてあげないと。PPが存在しないのに回復アイテムの名前がピーピーエイドとか、開発者は何か電波でも受信してたに違いない。
ニビジムが初心者の登竜門ということもあってか、トキワシティのそれよりも大きめなポケセンに入れば、空調の効いた快適空間が迎え入れてくれる。そしてそこら辺でたむろしている人たちをスルーしてジョーイさんの元へ向かったのだが、ここで問題がひとつ。
回復のためにはボールに入らなければならないというのに、ピカチュウが頑として入ってくれないのである。
「ピカチュウ、少しだけボールに戻って」
「ピカ……」
「……今夜のご飯は多めにしてあげるから」
「ピカチュ!」
そういう問題じゃない、といわんばかりにふるふると首を振ってボールから離れるピカチュウに、思わずといった様子でジョーイさんが苦笑する。うちのピカチュウがほんっとにすみません……。
「ボールのない傷ついたポケモンのための回復装置もありますし、そちらをご利用になりますか?」
「……お願いします」
ジョーイさんの慈愛スマイルがまぶしいほどに輝いて見えた。
そうしてジョーイさんのご厚意により回復もでき(他のポケセンにもありますよ、と丁寧に教えてくれた)、所変わって草むらのど真ん中。
腰のボールからリザードを出せば、相も変わらず頼もしい顔で周囲を警戒してくれる。
とりあえずピカチュウは定位置の腕の中だ。まずはリザードの戦闘を見てもらって、トレーナーのいるポケモンの戦い方がどういうものなのか覚えてもらう必要がある。私だって、ただ何も考えずにレベル差で野生のポケモンを撃退していたわけじゃないってことを証明しようじゃないか。
「リザード、【ひのこ】」
「ぎゃうっ」
草むらの一箇所にすぐに消えるくらい弱い火をつければ、それに反応したポッポが飛び出してくる。怒った様子で襲い掛かってくるポッポの動きは単調で、本来なら指示なんてなくてもリザードの判断だけで対処できる。
けど今回の目的はまた別だし、リザードに進化してからはポッポとの戦闘は初めてだから、ヒトカゲの時とのリーチの差に慣れるようにサポートしなければ。
「左」
ぎりぎりまで引き付けたところで、リザードがそのまま左に大きく跳躍する。ポッポの【かぜおこし】は遠距離からでも攻撃できる反面、翼を大きく動かすからわざを使った直後の硬直がどうしても長めになる。それはつまり、素早さが高い相手に対してはかなりの隙になり得るということだ。
当然、攻撃が空振ったポッポは瞬時に体勢を整えようとするけれど、それよりもリザードのほうが圧倒的に早い。そのまま宙に浮いているポッポの下へと駆けていき、その翼が畳まれる前に爪を構えて。
「上っ!」
私の指示をコンマ数秒で理解し実行する。振り上げられた腕は翼の付け根に直撃し、そのまま飛べなくなったポッポは地面に墜落する。目を回しているその姿は、誰が見たって戦闘不能だ。
「ぎゃう!」
「お疲れ様、リザード」
相変わらず見事なまでの腕前だ、おやとして鼻が高い。ピカチュウもそのスタイリッシュな戦闘に目を輝かせている。
……さて。今のがなんだったのか、という話だ。
ゲームにおけるポケモンでは、それなりの確率で「きゅうしょに あたった!」というフレーズを目にする。ゲーム内では確率に依存しているけれど、それが現実だったらどうだろう。
固体によって耐久に差こそあれど、生物としての構造は基本的に同じである以上、同じ種類のポケモンであれば急所にあたる部分にそう違いはない。であれば、そこを上手く狙いさえすれば確実に大ダメージを与えられるはず。
ただ、実際に戦っているポケモンは次々繰り出される攻撃を回避しながらダメージを与えなければならないわけで、よっぽど実力に差があるんでもない限り、急所を探している暇なんてない。そこでトレーナーの出番というわけだ。
急所に当たったのであれば普通にダメージを受けたときよりも大きく仰け反ったり、あるいは元からその場所に攻撃が当たらないように立ち回ったり、判断材料はいくらでもある。あとはぱっと見てわかる生物としての弱点だとか。
そういったもののうち、最も攻撃をあてやすい箇所をピックアップして指示を出せば、安定してダメージを与えられる。
例えばさっきのポッポで言えば、それは翼だったり、あるいは足だったりする。特に関節部分なんてのはほぼ全ての生物にあてはまる弱点だから分かりやすいだろう。翼が痛めば翼による攻撃ができなくなるか威力が弱まるし、足にダメージがいけば着地が厳しくなる。一撃で仕留めることができなくても、その後の戦略は一気に絞り込まれるから対策がしやすくなるなんてメリットもあるのだ。
難点があるとすれば、初見かつイシツブテみたいな無機物なんかがモデルになったポケモンだと急所がわかりづらいことか。そういう場合は戦闘中に分かり次第指示を下す形になってしまうから、最初のうちは厳しい戦いになる可能性もある。まあ、その程度で敗れるうちの子じゃありませんけどね!
ちなみに大前提として動体視力がそれなりに良くないといけないけど、別にそんなのは大した障害じゃない。太鼓の○人やチュ○ニズムで培われた私の動体視力ナメんなオラァ!
ふっふっふ、いくらニビジムがいわタイプのジムだとしても急所を狙われ続け、かつ攻撃が当たらなければどうしようもない。ジムリーダーのタケシが繰り出すのはイシツブテとイワークのみ、イワークはともかくイシツブテなんてただの的、経験値に過ぎないッ!
……フラグじゃないってば。
何はともあれ、ピカチュウに今のリザードと同じくらいのことができるようになってもらわないと話が進まない。指示をいかにタイムラグなしに実行するかとか、自分の判断で回避がどれだけできるかとか。やるべきことは山積みだ。
とりあえずは【かげぶんしん】を使いこなせるようにならなければ。【でんきショック】は効果がないから、レベルアップして【でんこうせっか】を覚えてもらわないといけないし。これで【たたきつける】だったりしたら泣く。ピカチュウ版フラグ的な意味で泣く。
とはいえいきなり実戦というのもなんだし、まずは草むらからちょっと離れたところで準備運動。まずは指示に慣れるのが目標だ。
「じゃあ、私が指示した通りに動いてみて」
「ピカ!」
元気に小さな手を上げるピカチュウ。うーんキュート、さすがは私の前世からのアイドル。もう可愛さだけで世界が獲れる気がする。え?バトルで世界を獲れ?だからトレーナーじゃないですってば。
まずは右、左、前、後ろ。視界が封じられていたり、あるいは視界の外から攻撃が来たときなんかはトレーナーの指示が命綱といっても過言じゃないから、こういった基本的な指示でも馬鹿にしちゃいけない。
それができたら今度は伏せて、だとか跳んで、だとか。三十分もすれば、ほとんど時間をおかずに指示通りに動けるようになってきた。ここまで出来るようになればあとは実戦あるのみだ。本当はもっと複雑なこともできたほうがいいけど、出会って一日も経ってないのにそれをやれっていうのは無茶振りでしかない。もっと一緒に過ごしながらの課題ってことね。
というわけで。
「草むらに向けて【でんきショック】!」
「ピカッ!」
ポッポさんとコラッタさんには犠牲になっていただきましょう。
「ピカチュウ、【でんきショック】」
「ピカッチュ!」
「左から【でんこうせっか】!」
……。
「【かげぶんしん】!距離をとってもう一回!」
「ピ……カ!」
「今だ、跳んで!【たたきつける】!」
…………。
ふはははははははは、みたかうちの子の力を!
ピカチュウってばほんとすごいんだぞ、【でんこうせっか】も【たたきつける】も両方覚えてくれたんだぞ!ピカチュウ版フラグが折れなかったことなんて正直どうでもいいよ。【かげぶんしん】にもすぐに慣れてくれて、一回何故かポッポとの群れバトルが起こったときのトリッキーな動きで敵を攪乱するピカチュウパイセンのカッコよさといったら!あいりすぺくちゅー!
途中でピカチュウの休憩がてら交代したリザードもいつの間にか【りゅうのいかり】を覚えてたし。なんでか最初は図鑑には表示されてなくて、リザードがいきなり使ってポッポを吹き飛ばしたおかげでようやく気付いたけどな!……ここはいったい何版の世界なんだ。見間違いでなければ【えんまく】も使ってたよね?使った後に図鑑を見たらちゃんとわざが表示されてたし。あれか?ORASの世界におけるカントー地方はこんなんだったんか?
……ようし、深くは考えないようにしよう。覚えるから覚えたんだろ。それかアレだ、時代を先駆けて習得したんだよ。そりゃあいずれはそれを覚える時代が訪れるんだから、その最初の一匹がこの子でも何らおかしくはないわけだ、ないはずだ、ないんだよね?
いや、それにしても【りゅうのいかり】と【えんまく】は大変ありがたい。
なにせ【えんまく】を覚えたおかげでわざマシンを使わないと覚えられない【かげぶんしん】の代打を務められるわけだし。というかむしろダブルバトルなんかにおいてはこっちのほうが遥かに使えるわけでして。
そして何よりも【りゅうのいかり】だ。もはやこれは最初にヒトカゲを選んだ私の救世主といっても過言ではない。だって考えてもみろ、この序盤に相性無視の40固定ダメージだぜ?固 定 ダ メ ー ジだぜ!?固定値は裏切らないんだっ!固定値最高!固定値愛してる!それを覚えてくれたリザードもっと愛してる!!!
40もあればジムリーダーはともかくジムトレーナーの手持ちくらいなら一撃必殺でいけるだろうし、これならジムリーダーのタケシに挑むまでの消耗はあまり考えなくていいだろう。序盤の金欠な状態ではキズぐすりひとつだって惜しいので、お財布に優しいわざでもあるのだ。固定値万歳。
とまあ、そういうわけで。
二匹ともレベル20になったことだし、そろそろジムに挑戦するとしよう。今のリザードとピカチュウならタケシにも勝てる、断言できる。身内の贔屓目とかじゃなくて。
ただ、このままジムに行くには時間も遅いし、二匹とも疲れもたまってるだろうから明日の朝一あたりなんてどうだろうか。疲労は動きを鈍らせるし、ジムリーダーなんていう格上の相手と戦うなら万全の状態でないと。
……あとは、まあ。博士に色々と聞きたいこともあるし。ピカチュウはともかくリザードのことで。
ポケセンでリザードとピカチュウを預け(勿論ピカチュウはボールに入ってくれなかった)、その間にパソコンの方へ。ゲーム内ではひとつしかなかったけど、実際は利用者が多いこともあっていくつか並べられている。仕切り板でプライバシー保護もOKというわけだ。
で、このパソコン。ゲームをやった人間ならわかるだろうけど、何故か通話機能がある。さすがにテレビ電話みたいに映像を映すことはできないけど、そもそもこの時代にそれだけの機能を備えたパソコンが大量にあるって時点でいかにこの世界のテクノロジーが前世のそれに比べて発展しているかがよくわかるというものだろう。だからどうしてそれを他のことに生かせないんだよ。もっと色々あるじゃん?ゲーム機とかさ。
ゲーム内ではパソコンを通して博士に図鑑の評価をしてもらえるけど、今回の目的は似たようなものではあれどそうじゃない。ピカチュウの【でんこうせっか】と【たたきつける】はレベルアップの時点で図鑑に表示されたのに、どうしてリザードの【りゅうのいかり】と【えんまく】は使うまで表示されなかったのか、図鑑の開発者である博士に問い質s、もとい、尋ねなくては。
1コール、2コール、3コール。……出ない、お取込み中だろうか。もしかして私達がいなくなって監視の目が緩くなったからご飯抜いて研究してたりしないだろうな。ナナミさんがいるとはいえ、四六時中見てるわけにもいかないし。
だんだん不安になってきたぞ。いかんせん旅立ちが急だったから博士に注意することもできなかったし。ご飯三食食べてるかな、睡眠きちんとしてるかな、夏だからエアコンばっかの室内にこもって運動不足になってないかな、脱水症状おこしてないかな……。
うーん、ここは最終手段を使うべきか。
秘儀、“出てくれないと嫌いになっちゃうぞ”作戦。そう書いたメールを博士のパソコンに送り付ける。博士の研究にはほぼ必ずパソコンを使うし、仕事上のやりとりもメールが主だから、電話に出ることがなくてもこちらは確認するのだ。居留守をやられた時なんかには確実な手段。そして開いたが最後、相手のメンタルに大ダメージ。
…………やめよう。これはわりと自分のメンタルがきつい。過去何度か使ったので罪悪感のすごさは自分が一番よくわかっている。自爆いくない。
となるとこのままじっと待つしかないわけで。後ろに並んでいる人がいなくてよかった、これで行列ができてたりしたら顰蹙ものである。
もういっそ10コールごとにかけなおして履歴を私だけで埋めてやろうか、なんて考えだした頃、ようやく電話がつながる音が耳に届いた。
「もしもし?」
「こんばんは、博士。今時間ある?」
「その声はレッド君か?そうか、ポケモンセンターからかけておるのか。見慣れない番号だったから、てっきり間違い電話かと思っとったわい」
あ、やっぱり居留守だったんだ。というか図鑑について連絡したりする可能性を考慮しようぜ。ゲームでは普通に反応してたのにこれかよ。
まあ防犯的な意味ではそのほうがいいのかな?よくよく考えれば私名乗ってないし、オレオレ詐欺みたいなことしてしまった感はある。ゲーム内と現実じゃ違うよな、次からはちゃんと気を付けよう。
「それで、こんな遅くになんの用じゃ?」
「ちょっと図鑑のことで聞きたいことがあって……」
かくかくしかじか。まるまるうまうま。いあいあくとぅるふ。
さらっとリザードの一件を伝える。どうやらこれは博士にとっても予想外だったらしく、一瞬黙り込んだ後、電話越しに何やらばたばたと慌てたような物音が聞こえてきた。
「……すまんが、レッド君。図鑑のデータをこちらに送ってくれ」
「うん。……どうやって?」
「ポケモンセンターのパソコンを使っとるなら、そこからケーブルが出とるじゃろう。それを図鑑にさしてくれれば、後はこちらから操作できるからの」
ケーブル……お、あったあった。ケーブルなんてUSBポートから伸びてるやつくらいだし、図鑑の充電器と同じ端子だから間違いないだろう。
そのまま差し込めば、博士が機械を弄っているらしい音と共に図鑑が勝手に動き出す。遠隔操作とか、科学の力ってすげー。だからどうしてその技術力を他のことにry。
「ふむ、この【りゅうのいかり】と【えんまく】のことじゃな?……なるほど、そういうことじゃったか」
「……?」
「ポケモンには未だ解明されていないことも多いからの。レッド君とグリーンに手渡した図鑑には現在解明されているほぼ全ての情報を詰め込んでおいたんじゃが、レッド君のリザードのように前例のない事態も十分有りうる。だから、そういった場合は図鑑内の情報で補完できる場合は自動で情報が更新されるようになっとるんじゃよ」
……お、おおう?
なんかさらっとすごいこと言われた気がするね?博士やっぱり天才だったんだ……普段のずぼらな私生活見てるととてもそうは思えないけど。いや、天才だからこそそっち方面に極振りになってしまったのか。
とにかく、これでなんとなく事情はわかった。【りゅうのいかり】と【えんまく】は本来初代においてリザードが覚えないわざだけど、他のポケモンが覚えるわざとしては存在する。だからそこから情報を割り出して、後から更新されたってことなんだろう。
……それ、つまり伝説のポケモンとか新種のポケモンには図鑑が反応しなかったりするんだろうか。さすがに図鑑内にない情報を更新するのは不可能だろうし。特にミュウとか、ゲーム内ではちゃんと一瞬で図鑑が埋められたけど現実においてそれを行うのはほぼ不可能に近いのでは?これが可能だったりしたらもう博士は天才どころじゃすまない気がする。
まあ、とりあえずは図鑑のシステムとしては問題がなかったとわかっただけ良しとしようじゃないか。これが超常現象だったりしたらやっぱりおうちかえる案件だったしね。ホラーというのは二次元だからこそゲラゲラ笑ってられるのであって、現実に存在してもロクなことがないのである。
……超能力者がユンゲラーになるとか死者がゴース系統になるとかいわれてる世界に生きてる人間の言うセリフじゃねえな!好きでこうなったわけじゃねえよ!
「レッド君?どうかしたのか?」
「…………別に」
すんませんアホなこと考えてました。思考が吹っ飛ぶのは私の悪い癖だ、反省反省。反省したところでどうにかなるわけじゃないけど。
まあ、図鑑については今後も気を付けておこう。また何かあったら博士に相談すればいいし。そういうのは文系には向いてないので丸投げでおk。
それはともかく。
「博士、ちゃんとご飯食べてる?」
「……うむ」
「ナナミさんに迷惑かけちゃだめだよ」
「…………」
「睡眠時間は最低6時間だから。5時間程度で妥協しないように」
「もはや疑問形ですらないんじゃのう……」
信用されてないんじゃなあ、なんていうぼやきは無視だ無視。信用されたいなら生活習慣を直してくれ。見てるこっちがハラハラするわ。
それからいくつか言葉の応酬をして、ひと段落したところで通話を切る。図鑑のデータについては博士の方でも研究してくれるというし、これで何の憂いもなくジム戦に挑めるというものだ。
さあて、初のトレーナー戦、初のジム挑戦だ。
パンと頬を軽く叩いて気持ちを入れ替える。ジョーイさんからリザードとピカチュウを引き取り次第、作戦会議と行こうじゃあないか!
Q.なんでオーキド博士はレッドのことを呼び捨てじゃないの?
A.レッドさんが女の子だからです。もし仮に男の子として生まれていたら呼び捨てだった模様。