レッドさんの華麗()なる珍道中   作:らとる

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はじめまして、らとると申します。
いかんせんこうした小説を書くのは初めてなので至らない部分も多いかと思いますが、気長に付き合っていただけたらと思います。


0.【悲報】俺氏、前世の記憶が生える

 レッドは激怒した。必ず、かの天国とやらに存在するとされるクソッタレな神様を殴らねばならぬと決意した。レッドには神だの輪廻だのそういった宗教にまつわる話がわからぬ。

 

 ……いや、まあ、つまり何が言いたいのかというと。

 寝て起きたら何故か前世が生えていた。

 

「…………わけがわからないよ」

 

 思わず某白い悪魔のセリフが漏れてしまったのは悪くないはずだ。脳内で“【速報】俺氏、寝て起きたら前世が生える【悲報】”なんてテロップが踊っていたりもするのも仕方ない。……嘘です、ただの現実逃避です。

 

 手を開き、強く握る。慣れた感覚だ、紛れもなく自分の体である。間違っても「いつの間にか赤の他人になってましたーハッハー」なんて今時使い古された展開ではない。悲しいかな、つねったほっぺたは子供特有の柔らかさと痛みでもってこれが現実であると突き付けてきた。

 そうっと音を立てないように寝ていたベッドから起き上がって机から鏡を取り出してみれば、そこには茶色っぽいセミロングの子供の顔が映るのみ。飽きるほど見た自分の顔。……そして、自分のものではないはずの顔。

 

「……ないわー」

 

 不肖レッド、9歳。前世の記憶とやらを思い出しました。

 

 

 

 

 

 というわけでおはようございます。いや外はまだ日が昇っていないから厳密には早すぎるかもしれないけれどそれはそれ、様式美というヤツである。

 普通なら二度寝をかますところではあるが、脳内フルスロットルなこの状況で寝ようとするとかそれなんて無理ゲー。いくらお子様の体とはいえ限度があるのである。

 

 

 私の名前はレッド。マサラタウンに住む、ポケモンが好きなごく普通の9歳の女の子である。そしてこのたび前世とかいう頭おかしいんじゃないのかオメーみたいなことを経験する羽目になった哀れな子羊である。神様なんてものが存在するなら全力でその面にドロップキックをかます所存。

 

 前世における私は、これまたごく普通の女子高生だった。成績も偏差値55あたり、しいて言うなら数学が苦手で国語が得意、スポーツはそこそこ、時間さえあれば引きこもってゲームかネットでもしてるような彼氏なしのオタク。それこそ個性が欲しいと思われるレベルの人間である。

 で、まあそんな私は部活の練習から帰っていた夜、暗い道路で信号無視の車に思いっきり轢かれました。あぼん。むしろあれだけふっとばされて生きていたら化け物である。……スプラッタ思い出したらちょっと気持ち悪くなりましたね。ミンチでなかったことが救いである。

 

 

 というかなんで前世の記憶なんてものがあるのか。確かに時々そんなことを言う人がいたけれどまず信じたことはないし、そもそも六道輪廻とか云々の話によれば生まれ変わる時ってちゃんと記憶消すんじゃないの?いや知らんけど。

 救いがあるとすれば、0歳から記憶があるとかアホなことにならなかったことか。羞恥プレイは勘弁願いたいし、そもそも生まれたばかりの未発達の脳にそんな膨大な情報詰め込んでみろ、下手したら普通に第二の生が終わっていた。現実なんてそんなもんである。

 

 ま、いくらうだうだ考えたところで私に前世の記憶があるという現実は変わらない。この世界で9年間生きてきたせいでいささか実感のわかないこの記憶と付き合っていく他ないのである。ふぁっきん神様。信じてないけど。

 

 

 

 

 で、まあ、なんだ。ここで私の自己紹介の最初の一文をご覧いただきたい。

 

 私の名前は“レッド”。“マサラタウン”に住む、“ポケモン”が好きなごく普通の9歳の“女の子”である。

 

 せーの、わけがわからないよ!/人◕ ‿‿ ◕人\

 ……というのは冗談として。

 

 ポケットモンスター略してポケモン、日本に住むのなら一度は聞いたことのある名前だろう。かわいらしかったりかっこよかったりする動物……動物?と共にバトルをして頂点を目指すあれである。

 そのシンプルかつ面白いシステムから子どもも手を出しやすく、また個体値や努力値、その他多くのやりこみ要素から大人にも大人気、アニメも展開しているあのポケモンだ。

 

 そして、レッドといえばポケモンの原点、赤・緑における主人公のデフォルトネームの一つである。後々リメイクされたりした作品においてもこの名前が一番使われているし、金銀においてはその圧倒的な強さからチャンピオンを倒して有頂天になっていた数々のトレーナーのトラウマにもなったりしたあの原点にして頂点、忘れることなどできるはずもない。

 ……そして、レッドの出身地はマサラタウンである。ここまで言えばもうわかるだろう。

 

 私 が レ ッ ド で あ る。世の中クソだな。

 

 なんだ、私はあと少ししたら図鑑を受け取って旅に出なくちゃならないのか。そして各地でロケット団というテロ組織を相手取りながらチャンピオンになった挙句シロガネ山に居座ったりしなくちゃならんのか。それなんて地獄。

 先にも言ったが私はどちらかというと引きこもり体質である。ポケモンのことはこの世界で9年間も生きた以上大好きではあるが、それとこれとは話が別だ。そんな面倒ごとは幼馴染のグリーンにでも押し付けておけ。私はゲームがしたい。

 

 そして私はひらめいた。そもそもレッドが女、そう私は女なのである。この時点で原作ゲームから既に外れてしまっているのだから、私は主人公ではないのではなかろうか。具体的に言うとご近所にリーフなんて名前の女の子がいたりすれば万々歳である。

 アニポケの可能性?オーキド博士の孫がグリーンな時点でそのフラグはつぶれております。

 

 というわけで記憶を漁った。

 

 

 

 

 

 

 絶望した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……仕切り直して。

 

 まあ、世の中そううまくはいかないものである。そもそもポケモントレーナーになるのは強制ではないわけだし、自分がならないと意思表示をすればきっと旅に出なくてすむはずだ。おそらく。めいびー。

 仮に旅に出ることになったとしても別にチャンピオンを目指す必要性もなく、ロケット団だって遭遇しなければいいのである。

 

 目指すはそう、博士の助手なんてどうだろうか。赤緑の時代ならまだきのみに関することは判明していないはずだし、ポケモンの数も少ない。前世の知識を使えばそれなりに博士の研究もはかどるのではなかろうか。

 正当な理由でポケモンと一緒に暮らすことも可能だし、うん、悪くない。

 

 

 ロケット団に関してはグリーンが何とかしてくれるよ大丈夫いけるいけるお前ならできる。私流石に連中に喧嘩売るとかできません。チキンかつコミュ障にそんなことを求めないでいただきたい。

 

 とりあえず、当面は今までどおり平々凡々に暮らしていけばいい。それとなーくトレーナーにはならないといった風なことを口にしていればくみ取ってもらえるはずである。そう信じたい。

 

 

 というわけで。目指せ、脱・主人公フラグ!

 




レッドさんの外見はリメイクレッドがベースになっています。そのため茶髪です。

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