令呪は残り二つだが、俺は急いで使った。
「令呪を持って命じる。バーサーカー、一瞬で俺の鎖を宝具化して解除しろ!」
「なッ!?」
相対していたバーサーカーが霞の如く消え去り、俺の背後に転移する。
バーサーカーはイヤイヤと首を振っていたが身体は正直で、俺の鎖を宝具化して無力化していく。
悔しい、でも宝具化しちゃうって奴だ。
そして、再び使われると困るので宝具化してる間に俺の篭手の中に収納していく。
残念だったな、お前の鎖頂くよ!
「我が宝物に飽き足らず、天の鎖までとは万死に値する!」
「そういうの良いから、喰らえ天の鎖!」
道具に意思はなく、そして宝具化して取り込んだ鎖は今や同化している。
俺の篭手から出る鎖、それは真っ赤な色に変色していた。
その真っ赤な鎖は金ピカを拘束する。
「おのれ、おのれ、おのれぇぇぇぇ!」
「お前、もしかして神性高い感じですか?えっ、マジ神性高いのが許されるのって小学生までだよねぇ~!」
「貴様ぁぁぁぁぁ!」
最高にスカッとしたので、そのままバーサーカーの剣を奪って首を薙ぐ。
えっ、それ俺の剣って感じでバーサーカーがこっちを無言で見てきたけど、お前の物は俺の物ってことで借りる。
返すとは言ってない、これもしまっちゃうぜ。
『しまっちゃうおじさんかよ、いやドラゴンか』
「なんか、コレクター趣味に目覚めたかもしれん」
『ドラゴン度が高くなってるんだろ。俺もよく銅像をフィギュアみたいに集めてた』
ラッセーの過去に、そんなオタク趣味があったことが分かったがそれはおいておく。
やったぜ、英霊バトルに勝利した。
金ピカは、粒子になって消えていった。
お前、消えるのか?
ラッセーが言うには聖杯に焚べられたらしい。
へぇ、よく分かんねぇけど人妻が動けなくなるらしい。
そうなんだ、大変だな。
アイツは並の英霊じゃないから、三倍くらいスゴイやつだったそうだ。
レア英霊だったのか、確かにキラキラしてたもんな。
「朝か、帰ろう」
『■■■■■■■■!』
「もう帰るって言っただろ!まだ混乱してるのか!それとも反抗期?。令呪を使うぞ!バーサーカー、正気に戻れ!」
『■■■■■……あっ?えっ、あっ』
俺の令呪が効いたのか、バーサーカーの頭部がパカっと割れた。
それ、キャストオフするんかいワレェ!
バーサーカーは俺を見て、自分の手を見て、そして頭を掻き毟りながら地面に頭を叩きつけた。
「うわぁ」
『こういう奴見たことあるぜ、鬱の気が強えんだ』
「慣れないことするから、バカ」
取り敢えず、道の邪魔だったので頭を軽く蹴り飛ばす。
バーサーカーは、ぐげぇと言いながら電柱まで吹っ飛びぶつかった。
よし、立ったな。どうした、なんだプルプルして……。
「き、貴様!貴様という奴は、マスターでありながら」
「何だお前、正気に戻っても反抗するのか?」
「私は、私は狂っていたかったのに!どうして、どうしてこんなことした言え!」
「お前が反抗するからだろ、文句があるなら来いよ」
バーサーカーは腰に手をやり、そして思い出したと悲しそうな顔をして、そして怒りを胸に此方を睨んだ。
そう言えば、お前の剣奪ってたな。
もう自棄だと言わんばかりに殴りかかってくるバーサーカー、その腕を弾いてやる。
仰け反り、胴体がガラ空きになった所に無言で腹パン。
だいたい、これで大人しくなる。
『パリィだ、ダメージはデカイ』
「俺は主人、お前は部下だ分かったな」
「わ、私の主はアーサー王ただ一人だ」
『なお、そのアーサー王の奥さん寝取って、国を崩壊に導いた模様、その名も何スロットさんなんだ!』
君の名は?とか聞いて置きたかったんだが、突然ガチ凹みし始めた。
情緒不安定だな、何だコイツ。
つうか、円卓の騎士って奴だったんだな知らなかったよ。
「おい、ゲロってるサラリーマンにしか見えねぇから帰るぞ、後は髪を切れ」
「私は……私は……」
「おい、聞いてるのか?後、髪を切れ」
『また髪の話してる』
男がロン毛なんかやめろ、ロン毛は強い奴しかなっちゃダメなんだぞ。
落ち込むランスロットと名前を聞き出した俺はカリヤのオッサンの所に行った。
オッサンは身体を病気でボロボロにしてるから、見舞いに来たのだ。
俺の波紋を使って治療してやらないといけないからな。
「オッサンも波紋を覚えろよ」
「お前の言ってた呼吸法は、現代人じゃ出来ないんだよ!」
「やる前から諦めんなよ」
オッサンの家を間借りさせてもらって、ついでに結界とか張り巡らせる。
時臣が出来て俺がやらないのは、なんか負けた気がするからだ。
俺が結界を張ったら、カリヤのオッサンがそんなインテリっぽいことがと驚いていた。
魔法はイメージ、つまり不可能はないのだ。
「頭おかしいくらいの密度で魔力を固めただけですよね、これ」
「細かいことは良いんだよ」
「マーリンに見せたら、こんなの魔術じゃないって言いますよ」
しばらく落ち込んだお陰か、ランスロットはすっかり正気に戻った。
どうでもいいが女好きならしく、オッサンが桜ちゃんが危ないとか言っていた。
流石にないだろうと聞けば、まだ狙う訳無いでしょうと言われた。
当然だよな、ロリコンじゃあるまいし……まだ?細かいことは気にしないでおこう。
「それで今後の作戦ですが、あとアロンダイト返してください」
「敵を探す、見つける、倒すだ」
「分かった、このマスター馬鹿だな!ハハハ、あとアロンダイト返せ!」
「うるせぇ!」
お前の者は俺の物だろと、物理で説得する。
コイツ、殴っても反抗するとか正気かよ、バーサーカーだな正気じゃない。
結局、桜ちゃんに家が壊れるからやめてと言われるまで説得は続いた。
夜、インターホンを鳴らすバカが来た。
誰だよ、子供は寝てる時間だぞ。
「よぉ、久しぶりだな。バーサーカーのマスターよ」
「お前は、イスカンダル!」
「今日は酒宴を開こうと思ってな、当然来るよなぁ?」
酒か、酒はいい。
酒は人類の作った良い文明だ。
ドラゴン的に俺も酒は好きなので、行くことにした。
なんでもイスカンダルのオッサンは、聖杯って言っても話し合いで解決できるならそれで良くねみたいな事を言っていた。
確認したら、格をどうのと言ってたが最終的にそれでいいって言ってたから多分あっている。
つまり、誰が相応しいか偉いやつを決める会合である。
「よし、バーサーカー!上手くやれよ」
「マスター、戦いに行くわけではないですよ」
「おい、バーサーカーって言ったか?アレがコレか?喋ってるぞ」
「進化したんだ、姿形が変わるなんて良くあることだろ」
「んな訳あるかっー!うわわ、やめろ頭を掴むな」
ハハハこやつめ、愉快なライダーのマスターである。
気に入った、最後にお前は殴ってやろう。
空の旅を楽しみ、城に向かって突撃を敢行するとフル装備のセイバーさんが出てきた。
おっ、金髪姉ちゃんセイバーさんじゃないか。
「ら、ランスロット卿!?」
「あぁ、あぁぁぁぁ、■■■■■!」
「やめろ、バカ」
「あぐっ、はっ!?私は、いったい」
もう、隙あらばすぐに発狂しようとするんだからランスロットには困ったものである。
イスカンダルのオッサンはどうやらアポなしだったらしく、でもお前の家って広いから使わせろとのことだった。
まぁ、積もる話もあるだろうしそうすべきだと俺は思う。
「ら、ランスロット卿……貴方が、バーサーカーだなんて」
「金ピカの奴も誘おうと思ったがな、お主らが倒してしまうとは思わんかったわ。まったく、剛毅な輩よ。どこの英霊が目星がついていた分、いまだに信じられん」
「聞いているのですかランスロット卿!どうして、どうしてこっちを見てくれないんですか!」
「なぁ、坊主。コイツら、何かあったのか?」
俺とイスカンダルがワイン樽を開けてる横で騒いでる奴らを見ながら聞いてくる。
なんか上司の奥さんと不倫したんだってよ。
「桜ちゃんが言っていた、これが昼ドラって奴だってな」
「そりゃどっちも悪いな」
「そんなことより、酒だ!」
「肉もあるしな、所でなんの肉だ?」
「うん?俺の尻尾だが」
その瞬間、イスカンダルが伸ばしていた手を引っ込ませた。
どうした、美味しいのに。
「今夜は月をつまみに酒だけでよいな」
「おい、どうした食えよ」
「えー、嫌だわそんなの」
「テメェ、俺の尻尾が食えねぇってか!」
「食えるか!この征服王、そんな得体の知れない物を食うほど落ちぶれてないわ!」