拝啓、ランサーが死んだ人でなし!敬具。
いつの間にかランサーが死んだ。
いや、死んでないかもしれないけど、すぐに戦うことは出来ないだろう。
「これからどうするか」
「Arrrr……thurrr……」
「朝?おいおい、朝まで戦わないのは無しだぜ」
まったく碌な意見も出せないなんて考えが足らないな。
あっ、コイツってバーサーカーだった。
じゃあどうするか、時臣って奴でも殴りに行くか。
それがいいな、そうしよう。
「行くのか」
「あぁ、俺のバーサーカーは最強なんだ!」
『嫌な予感しかしないんだが』
うるせぇ、行くぞ!
という訳でカリヤのおっさんに住所を聞いて殴り込みに行くことにした。
よし、張り切って令呪使っちゃうぞぉ……。
「令呪を持って命じる。余裕があったら、武器を奪うこと」
「グルルルル……」
「日本語喋れんのか貴様」
まぁ高速で頷いてるので分かったのだろう。
心なしか黒い靄が増えてる気がする。
や、闇のパワーを感じるスゴイ。
時臣って奴の家に向かう途中、小動物の気配が集まってきた。
ふむ、使い魔って奴だろうか。
どうやら時臣って奴は人を監視するのが好きなインドア派なようだ。
「ここが時臣の家か」
『本物はやっぱ違うなぁ、文化財みたいだ』
「なんだこの家、インターホンがないんだが」
相当昔からあるのだろう、ここを拠点にするなんて大丈夫か?
なんか結界とかあるけど、悪魔のに比べたら貧弱だな。
悪魔の方がもしかしたら魔術師より強いのかもしれない。
「よし入るか、あっ?」
扉を開けて中に入ったら、なんか庭に置いてあった宝石がたくさん割れた。
言い訳をさせて欲しい、俺は何もしていない。
こ、こんな所で精神攻撃とはやるじゃないか。
「痴れ者が!一度ならず、二度までも我が面貌を仰ぎ見るとは不敬であるぞ!」
「痴れ者が!一度ならず、二度までも俺を見下ろすとは不敬であるぞ!」
「貴様ぁぁぁぁぁ!」
時臣の家に行ったら、野生の金ピカが現れたので煽り返したら顔真っ赤になっていた。
この金ピカやっぱおもしれぇわ、煽り耐性がなさすぎる。
きっと、コイツは時臣の英霊なんだろう。
いいぜ、そっちがその気なら俺の最強でお前の最強を打ち砕く!
「行けぇ、バーサーカー!君に決めた!」
「■■■■■■■!」
「狂犬が!主従揃って、不快にさせる!せめて散り際で我を興じさせろ、犬ゥ!」
金ピカの背後に波紋が現れる。
金ピカの宝具攻撃だ!
俺は仁王立ちのまま、マスターらしく指示を出す。
「バーサーカー!避けながら武器を奪い取るんだ!」
「■■■■■■■!」
バーサーカーは俺の言葉を無視して、金ピカに突っ込む。
く、クソったれぇ!やっぱりジム戦とかしてなかったから、なつき度とか低かったか。
だが、金ピカは遠距離攻撃しか出来ないのか宝具攻撃を繰り出してくる。
自然と、バーサーカーは俺の指示に従うように武器を奪い取った。
「いいぞ、そのまま攻撃だ!」
「■■■■■■■!」
「違う、俺じゃない!あっちだ、混乱してるのか?」
まさか、あの金ピカの後ろから出る光にはそんな効果がッ!
俺は飛んでくる宝具を左手で掴み、返す動きで次に飛んでくる宝具を今手にした宝具で破壊する。
更に飛んできた宝具を二つ回収し、三個目は掴めないので片手にあるやつを金ピカに投げてからキャッチした。
宝具、ゲットだぜ!
『どんどんパワーアップしてくな、相性が悪すぎる』
「死ぬが良い!」
金ピカが一本の剣を抜き取って、上から振り下ろすと同時にビームが出た。
なんだそりゃ、なんでビームが出てくるんだスゲェ。
「ビームですよ、ビーム!ビームですよぉ、スゴイなぁ!」
『喜んどる場合かぁ!』
「ドラゴン破ァァァァァ!」
確かに、と慌ててビームを俺も出す。
気を集めればこれくらい出来るのだ。
「無礼者、黙って食らうが良い!」
「無茶言うな、うお!?出力上がった」
剣からビームが出るとは非常識な、対抗するのも一苦労である。
なので、俺はもう片方の手からもビームを出す。
魔力と気によるビームが合わさり、威力が二倍に見える。
両手からビームを出す日が来るとは、中々やるな。
「抑えてくれだと!誅伐の余波程度で場打てするようでは、我の臣下には値せぬと知れ!」
「ほぉ、MP切れか」
どうやら連戦による連戦で魔力がないとか言い出していることが伺える。
まったく、魔力を作り出す気合いが足らないんだ。
と思ったら、何やら金ピカが飲み物を出して補給し始めた。
なにあれぇ……。
飲み物を片手にビームを撃つ金ピカ。
ま、まさか魔力をアレで回復してるのか。
「汚ねぇぞ、回復アイテムを使うなんて!」
「フハハハハ、見たがこれぞ我が財力のなせる技よ!」
「バーサーカー、もっと気合出せ!俺は手が放せない!」
自分の周囲を囲まれるようにして絶えず攻撃の嵐に晒されるバーサーカーに指示を出す。
掴んではぶつけて防いでいるようだが、それだけだ。
戦いは数とは言うが物量がスゴイ。
このままではジリ貧である。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
『Boost!!Boost!!Boost!!』
「何だと!?」
俺のビームが屋敷を飲み込むほどに大きくなる。
ふっ、忘れていた。俺の戦いはビームを出すことじゃない、倍加を使って戦うってことをな。
巨大なビーム、これは金ピカも防げまい。
驚いた顔で飲み込まれる金ピカ、やった聖杯戦争完!
「やったか!」
『どうしてそんなこと言った、言え!』
「フフフ、フハハハハ!甘いぞ、甘いぞ雑種!」
ブォンっと謎の音と共にビームが消え去って周囲に風が吹き荒れる。
よくわかんない方法で防ぎやがった。
圧倒的、圧倒的無傷!金ピカは仁王立ちしたままである。
おい、俺とポーズ被ってるぞ。
「興が乗った。我が直接、手を下そう」
「うるせぇ、死ね!グレートホーン!」
仁王立ちからの居合抜きの如きパンチ、相手は死――。
「その程度か」
「なぁ!?」
俺の抜き放った拳は、金ピカの片手に防がれていた。
何だと、俺の攻撃が防がれた。
「良いことを教えてやろう。我は脱いだ方が強い」
「ぐっ!?」
視界が変わる、衝撃と共に俺の身体が吹っ飛んでいく。
痛い、どうやら殴られたらしい。
甘く見すぎていたらしい。
「ほぉ、その姿が本気ということか?やはり、人ではなかったか」
「この姿になると加減は出来ない、だから記念に殴らせてやったのだ。決して油断していた訳ではない」
『言い訳にしか聞こえないよ』
煩いぞラッセー、細かいことは良いんだよ。
半壊した戸建ての中から、俺はドラゴン形態で前に出る。
キュピキュピと独特の音を鳴らす、太くて天然の鎧に覆われた足。
赤い鱗が棘棘しく、そして燃えるように輝いている。
爪は鋭く、牙は太い、そして尻尾がヌルリと瓦礫を振り払う。
褒めてやるぜ金ピカ、俺をちょっとだけ本気にさせたってな。
「うぉぉぉぉぉ!」
「所詮は獣よ」
「な、何ィィィ!?鎖だとォ!?」
よし殴るぞと思ったら、身体が鎖に包まれていた。
なんだこの鎖、全然壊れないんだが!
「その姿では神性が上がったと見える。所詮は獣、考えが足らぬな。さぁ、死に際で我を――」
大きく目を見開いて、金ピカが固まった。
一体どうしたというのか、苛立ち混じりに金ピカは振り返った。
「おのれ時臣ィ!臣下の勤めすら果たせぬとは、役立たずが!」
「あ、アイツは……」
屋敷の中から、黒い靄が現れる。
半壊し、炎上する屋敷、その中から奴は現れた。
その片手には、黒く染まったオッサン。
バーサーカーだ、バーサーカーが時臣を殺したのだ。
「■■■■■■■■!」
「邪魔だァ!」
黒く染まったオッサンが、金ピカに向かって投げ飛ばされる。
それを金ピカは片手を振るうことで波紋から武器を発射して防いだ。
下から上へと飛んでいく剣群により、死体は細切れになる。
ミンチよりひでぇや。
「我にゴミを投げつけるとは、先に死にたいらしいな狂犬!」
『死体に鞭打つとはこのことだよぉ』