空からおっさんが現れる。
赤い髪に、筋肉モリモリのマッチョマン。
キレてる、冷蔵庫、山がスゴイ!
「双方、止まれ!王の御前であるぞ!我が名は征服王イスカンダル、此度――」
「そうか、俺は兵藤一誠だ」
「――は、ライ……うむ、口上の間に口を挟むとは剛毅な奴だのぉ」
「ハハハ、ありがとな」
『褒めてないと思うぞ相棒』
頭をそのデカイ手で掻くイスカンダルさん。
それにしても、ナイスマッスルだな。
「まぁよい兵藤一誠よ。そして、ランサーとセイバーよ。少し出鼻を挫かれたが、ひとつ我が軍門に降り聖杯を余に譲る気はないか?さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を制する快悦を共に分かち合う所存である」
「えー、やだ」
「やだってお前……ちょっと、余にも扱いにくい人材じゃぞコイツ」
ドラゴンって言うのは何ていうか自由でないといかんのですよ、その辺が偉い人には分からんのですよ。
権力なんて飾りです、偉い人には分からんのですよ。
大事なことなので二回思いました。
「俺が聖杯を捧げるのは今生にて誓いを交わした新たなる君主ただ一人。断じて貴様ではない、ライダー」
「そもそも、そんな戯れ言を述べ立てるために貴様は私とランサーの勝負を邪魔立てしたと言うのか?」
「いや、邪魔をしていたのはソイツだと思うんだが」
サーヴァント達の視線が俺に集まる。
どうした、俺の顔に何かついているか?
「確かにそうだったな」
「マスター同士の喧嘩に横槍とか、騎士道舐めてんの?恥を知れ!」
「くっ、言わせておけば!」
悔しそうに顔を顰めるランサー、馬鹿め!人の邪魔をするからである。
そんな悔しそうなランサーとメンチを切っていると、何やら金色の粒子が電柱の上に集まってきた。
すげぇ、ホタルがいる。間違いない、ホタルだよアレ!
「我を差し置いて、王を称する不埒者が湧くとはな」
「ホタル……じゃなーい!」
「不愉快だ、死ね」
俺がホタルだと思っていたのは人であった。
どうやら空間系の神器を持っているらしい。
その応用か、背後に波紋が浮かんだと思ったら何やら武器の穂先が見える。
竜殺しとか神殺しのオーラがスゴイ、見ただけで吐き気を催すレベルだ。
『避けろ、相棒!』
「あぁ、行くぞラッセー!
『Boost!!Boost!!Boost!!』
射出される武器の数々、素人の俺でも高そうに見える。
まずは頭を貫こうとする槍を掴む。
続いて、足元に向かって飛んでくる剣をもう片方で掴む。
次、飛んでくる鈍器を口にくわえて防ぐ。
流石にそろそろ厳しくなってきたので、迫ってくる武器を無視して回避に専念する。
七個くらい武器が飛んできたが、だいたい奪えたので儲けた。
「貴様ァ!我が宝物に汚い手で触りおって!」
「これ捨てちゃうんですか?貰ってもいいですか?」
『セーフです』
「よっしゃぁ!」
「貴様ァ!許さんぞ、おのれ!」
足で道路灯をぶち壊す金ピカ、器物破損である。
そんな煽り耐性の低い金ピカの前で俺は手に入った神器らしき物を篭手にぶち込んでみた。
この篭手、収納だけでなくパワーアップにも使えるんだ。
「盗むだけでなく、取り込みおっただと!これだから、蛇や神は気に食わんのだ!」
「す、スゴイ!さっきの倍は出てきたぞ」
「虫ケラの如く死ぬが良い!」
あー、何?なんか使い捨て感あるからいらないと思ったんだがそんなに大事だったのか?
正直、スマンなぁ。まぁ、返したりしないんだがな。
「何が起きたんだ、さっぱり分からない」
「偉く芸達者な奴じゃな。迫りくる武器を奪っては後ろに回避したんだ」
ほぉ、あのマッスル俺の動きが見えたのか。
それなりの悪魔レベルってことだな。中級、いや上級って所か。
それはそれとして、なんか黒い靄が出たんだがアレって地下にあった気配じゃね?
「■■■■■■■■■■■■■■■!」
「バーサーカー!?」
アレ、バーサーカーって言うのか。
確かに狂戦士っぽいぞ。
「ええい、大きく出たな時臣!首を洗って待ってろよ、貴様ァ!」
「あ、帰った」
「アー……■■■■■■■■!」
消えていく金ピカを見ていたら、何か言いかけて黒いのが走ってきた。
理性を失ってる、つまりトレーナーの言うことを聞かない、ってことはゲットしても問題ないのではないか?
よし、バーサーカーゲットだぜ。
「オラァ!」
「■■■■■■■■!」
「日本語しゃべれぇ!」
俺の拳がバーサーカーの顔面に入る、するとバーサーカーは殴られてるにも関わらずパンチを繰り出す。
お互いの顔面を殴り、お互いに吹っ飛ぶと今度はバーサーカーが電灯を引き抜いた。
器物破損の次は道路の破壊である、冬木市の財政がヤバイ。
「うわ、気持ち悪」
『気を付けろイッセー、奴はなんでも宝具にしちゃう宝具お化けだ』
「よく分からんが、あの赤い血管みたいなのがヤバイってことだな」
武器を持ったほうが強いんだと、強気なバーサーカーに俺も武器を使うことにした。
新必殺技の開帳である。
『Blade!』
「な、何だあれ……まさか、何らかの魔術なのか?」
「というか、生身で英霊と殴り合えるもんなのか?」
外野が何か言ってるが無視してバーサーカーを相手取る。
おい、さっきから何を余所見してんだよ!お前、なんだパツキンの姉ちゃんが好きなのか!こっち見ろや!
「■■■■■■■■!」
「叫んでちゃ分かんねぇんだよ、この野郎!喰らえ、エクスカリバー!」
「なっ、エクスカリバー!?」
俺の中の気を集中して飛ばす斬撃である。
お前は、身体の中に宇宙を感じたことがあるか、俺はある!
飛ぶ斬撃をバーサーカーは持っていた鉄柱で防ごうとするがいくら宝具化していても防ぐことは出来なかった。
そして、斬撃はそのまま切断してバーサーカーにぶつかる。
もう少し頭使えば持たないことくらい分かっただろうに、分かったコイツ俺より馬鹿だな。
「■■■……」
「よし、弱ったぞ。チャンスだ」
『消えかかってるんですが』
えっ、そんな馬鹿な。
気配はあるが、見えなくなっていく。
つまり、ゴーストタイプだった訳だな。
実体化が解除していると、把握した。
撤退するバーサーカー、仕方ない追跡するか。
「痛っ、なんだ……銃弾?」
「ば、化物だ!?」
バーサーカーを追おうとしていたら、頭に何かぶつかった。
見れば銃弾であり、狙撃されたらしい。
おい、ファンタジー舐めんなよ地球人、俺はドラゴンだぞ。
狙撃手は逃げていく気配が伝わったので、追わないでおいてやる。
気配は覚えたのでいつか殴る。
そんなことより今はバーサーカーである。
「おう、じゃあな」
「うむ、嵐のような男だったわ」
イスカンダルさんに挨拶して、バーサーカーを追うことにした。
今度、他の奴らの名前も聞かないといけないな。
バーサーカーを追っていたら下水道の方にやってきていた。
なんか臭い、そしてそんな臭い所に年寄りがいた。
「大丈夫か?」
「くっ」
「なんだ、若白髪か。おい、マジで大丈夫か」
「ガハッ……」
心配していたら、年寄りじゃなくておっさんだった。
しかし、ストレス社会の影響か若白髪で嘔吐なんかしやがる。
目の前で嘔吐したら、何やら口の中からミミズみたいなのがウネウネ出てきた。
生きてる、気持ち悪い。
「バー、バーサーカー……」
「何、お前バーサーカーのマスターなのか?」
「くそ、出ろ!出ろよバーサーカー!」
何度もバーサーカーを呼ぶおっさん、おっさん多分レベル不足だから英霊は言うことを聞かないんだ。
バッジを手に入れると言うことを聞くようになるぞ。
「なぁ、おっさん。俺にバーサーカーくれよ」
「なっ、ダメだ!俺は、時臣を殺さないと、桜ちゃんを救わないといけないんだ」
「分かった。時臣って奴をぶっ殺して、桜ちゃんを救えばいいんだな。そしたらくれるんだな」
「な、何を言ってるんだ?ひょっとして……本気で言ってるのか?」
時臣って奴はきっとブラック会社の社長何だろう、桜ちゃんは同僚かな。
取り敢えず詳しい話を聞いとくか。
「まぁ、座れよ」
「お前、頭おかしいんじゃないか?」
「なんだと!」
「す、すまん。本当に言ってると思ってなかったからな」
俺はその後、メチャクチャ話をした。
「つまり、虫大好きお爺ちゃんの性癖に付き合わされてる桜ちゃんと、児童虐待に加担した時臣を殴ればいいんだな」
「あれだけの説明をそんな簡単に纏めるのか!?」
「殴れば良いんだろ、分かってる」
「もっと、俺の人生とか間桐の闇とか魔術師についてとかも言ったよな!」
「ハハハ、元気だなおっちゃん。何か良いことでもあったのか?」
まぁ、殴ればバーサーカー貰えることだけは確かだった。