こめっこがいなくなった。
大事件発生である、どうしてこうなった。
だがしかし、ラッセーも居ないということは大丈夫だろう。
「えっ、こめっこですか?見てないですけど、まさか……」
「おい、どうして俺を見る」
「分かってます、カズマ。だから、正直に言いましょう」
「ねぇ、カズマ。汝、罪を認めアクシズ教に入信するのです」
「悪いな、これも騎士の端くれ抵抗はするな」
「よぉーし分かった。戦争だ、この野郎!スティィィィル!」
ギルドで女性三名が下着を剥ぎ取られる事件が発生し、もれなくカズマ少年がご用となった。
スティールは運であり、あれは故意ではないなどと容疑者は意味不明な供述をしているが、そんなことよりこめっこである。
こめっこのことだ、ホイホイ飴に釣られて付いて行ってしまったのかもしれない。
全く、どこにいるのか。
「…………」
「額に指を当てて何してるのかしら?瞬間移動でもするのかしら?」
「行き先を考えてるんじゃないんですか?というかですね、こんなナリですがコレはドラゴンなんですよ」
「めぐみんは何を言ってるの?遂に、頭もおかしくなったの?」
「も?アクア、もってどういうことですか!おい、そもそも頭がおかしいとはどういうことですか!」
「ひゃーふぇーてー、ひっはらないでぇー!」
「なんですか、本当になんですかリスみたいなほっぺして!モチモチじゃないですか!」
「おいめぐみん、引っ張るなら私のにしてくれないか、いやマジで」
鬱陶しい!
女、三人よれば姦しいと言うが見聞色の覇気で探ってるんだから他所でやって欲しい。
精度を上げるというか、周囲から聞こえる音をいちいち判断してるんだからな。
声と気配から特定してるんだが、おかしいな街の中にいない?
もっと、範囲を広げ……いた。
「街の外、どういうことだ?」
「えっ、街の外ですか?」
「結構な距離だが、この方向は……」
そう言えば、この間めぐみんが爆裂魔法を放っていた城の方向じゃないか?
なるほど、めぐみんが魔法を使ったのを聞いて見たかったとか言ってたから先回りしたのだろう。
この間から姉ちゃんの魔法がすごいと言ってたからな。
事件の真相が分かったと思った瞬間だった。
新たな事件が発生した。
「ねぇ、なんだか透けてると思うの?」
「なっ、足元に魔法陣が!なんですか、何を今度はやらかしたんですか!」
「みんな後ろに隠れろ!しゃあきょい、しゅごいのがくりゅんだろうにゃ」
「ひえっ!」
「ダクネスひくわー、ひくわー」
鬱陶しい!
特に、メスの顔で期待する最近腹筋を気にしてるとラッセーにしてきされたクルセイダー!
俺にそんな趣味はない。
そんなことより、この魔方陣どこかで見た気がする。
あれ、これって、よばれてるのか?
気付けば、俺の視界は変わっていた。
「ひょ?」
「うん?」
そこは石造りの城の中だった。
目の前には首を持った騎士っぽい何か、後ろにはこめっこが床に両手を着けていた。
足元には、魔法陣の書かれた紙。
まるで意味が分からんぞ。
「誰だお前」
「こっちの台詞だ!誰だ貴様!」
「俺か、俺はドラゴンだァ……」
「頭おかしいんじゃないのか?」
ベルディアは困惑していた。
朝、侵入者の気配を感じて迎え撃つ準備をしてみたら、一向にくる気配がない。
昼、痺れを切らして自ら敵の前に出たと思えばそこには廊下で爆睡する幼女が居た。
そして今、目の前で小さいドラゴンが幼女を起こし、幼女が出たな魔王軍幹部と言って魔法陣を置いたら男が現れた。
まるで意味が分からなかった。
しかし、ベルディアも馬鹿ではない。
何の策もなく、単身で幼女が幹部の城に来るのはありえないことだ。
つまり、これは油断を誘い動揺させる何らかの作戦。
きっと、罠でも仕掛けてこの男を使ってテレポートで移動するつもりだろう。
とすれば、アレは召喚するとか呼び出すスクロールか。
いや、待てよ。そもそも、スクロールを使って逃げればいいじゃないか。
なるほど、なら男を目の前に呼び出すのが目的なのだろう。
ギルドのことだ、時たま現れる異様に強い存在をぶつけに来たのだろう。
「分かっているぞ、貴様出来るな」
「何してんだ、こめっこ。こんな所に来るなんて」
「ふっ、油断させようとしたってそうは行かないぞ」
「かんぶを倒しにきました」
「…………あの、聞いてる?もしもーし」
「なるほど、それでこの魔方陣か。スゴイな」
「遂に背中見せちゃったよ。おい、斬っちゃうよ、斬っちゃうぞ!無視すんじゃねぇ!」
背後で何やら騎士が騒いでいた。
なんだコイツ、これだから騎士って奴は変なのしかいないんだから。
不倫野郎とか、ブッパ姉ちゃんとか、碌なのいないからな。
お前もビーム撃つんだろ、この野郎。
「ソード」
「むっ、ほぉ!さぞや名のある魔剣と見た」
「分かるか。アロンダイトという」
「分かる、分かるぞ!さぞやスゴイ能力があるのだろう。だが、剣の能力だけが強さだと思っていては俺には勝てぬぞ!我が名はベル――」
「あぁ、能力は壊れにくいだ」
「――ディア……えっ、それだけ?ちょ、名乗ってただろうが!今、言うことではないだろ!」
「うるせぇ!」
お前が聞いたんだろ、何だコイツ態度悪すぎるだろ。
無茶苦茶な奴だな。
「えー、もうやだ何なの、最近バカスカ魔法打ち込んでくるやつとかいるし、アクセルって頭がおかしい奴しかいないんじゃないか。寧ろ、頭がおかしい奴がいる街がアクセルなんじゃないのか?」
「なんだお前、やるのか」
「来い!我が、眷属よ」
魔法陣が奴の足元に浮かび、ヌルっと馬が出てきた。
馬が出てきた!?
「フフフ、絶望したか。デュラハンは馬に駆る者、その突撃力は強力だ」
「室内で、馬だと……」
「まだだ、まだまだ上がるぞ!うおぉぉぉぉ!」
ブオンと黒いオーラがデュラハンから発生する。
強そうだけど、それがなんなんだろうか。
「魔力を滾らせ、リミッターを解除した。アンデット特有の不死性を活かした生者には出来ない無茶な肉体の運用、これで俺の戦闘力は数倍に跳ね上がる。貴様は最初から本気で行かせてもらう!」
「なんだって」
戦うのならカエル相手でも全力だろ、コイツ相手によって手を抜いているのか。
つまり、それくらい強いということなのだろう。
俺も普通に戦おうとしたが、カエルのように手加減出来る相手ではないのだと理解した。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
「フンッ!」
俺はアロンダイトを馬に向かって投げ、上段から振り下ろされる剣を殴り飛ばす。
その際、腕を半竜状態に変えることで硬質化して剣自体を破壊しようと試みた。
「なっ、馬鹿な!何をしたと思ったら凄まじいパンチだと、それが奥の手だというのか!納得だな」
「そうか」
「だが、此方も奥の手を斬らせてもらう。死の宣告!お前は一週間後、死ぬだろう!」
ベルディアは俺の方を指差し、何かを放ってきた。
それは黒いオーラ、それが俺に着弾する。
「フフフ、俺の死の宣告は魔王軍を追い詰める勇者パーティーすら解呪することは出来ない」
「そんなスゴイ物だったのか」
「流石に驚いたか。さぁ、死の恐怖に……あれ?」
「悪いが、発動してないぞ」
「ファ!?」
ハリーポッターを読んだこと無いのか、ドラゴンは古の魔法により大抵の魔法は効かないと書いてあっただろ。
基本的に呪いとか自動でレジストしてしまうので意味はない。
「あ、ありえん……人間じゃねぇ!人間離れってレベルじゃねぇぞ!何だコイツ、人類のバグか何かか?」
「あの程度の呪いよりスゴイの飲み込んだからな。聖杯の泥の方が強かった」
「ば、化物かよ……」
まぁ、魔王の幹部もこんなものか。
馬に乗っても普通に走った俺の方が早いし、斬り掛かる剣術も普通に避けれたし、所詮はアンデッドだからそれほど強くなかった。デュラハンとか動くだけの死体だもんな。
まぁ、死体にしては強かったんじゃないか?