俺はドラゴンである~異世界編~   作:nyasu

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よく分からんが、分かった

我が名はイッセー!無限にして夢幻の龍神である。

そんな俺は伝統的猟方に取り組んでいた。

 

「すごーい、食べ物がいっぱいだね」

「ジャイアント……すまないアメリカ語はさっぱりなんだ」

『ジャイアントトードな』

「……つまりでっかいカエルだな」

 

草原、そこで俺は籠手から鎖を発射しカエルを捕らえる。

捕らえたら適度に叩きつけ弱らせる。

そして、ナイフを持たせてこめっこの背中を軽く押す。

 

「よし、やれ」

「えっ、もう刺しちゃった」

「早いな、将来有望だ」

「ご飯がいっぱいだね、やったねご飯が増えるよ!」

 

そう、それは養殖と呼ばれる経験値取得の紅魔族式の狩りである。

適度に弱らせ、それを狩らせることで経験値を与えていくという方法だ。

血塗れになりながら、こめっこが良い笑顔でカエルの心臓を取り出す。

レバーは旨いもんな、でも生で食べようとするのはやめようか。

 

「よし、討伐依頼を済ましたら唐揚げにしよう」

「食べちゃダメ?」

「唐揚げの方が旨いぞ?」

「そっか」

 

血塗れになりながらも良い笑顔でこめっこはカエルの心臓をしまった。

カバンに入れる際に、すごく物欲しそうに見ていたのは食いしん坊だからだと思いたかった。

さて、どうして俺達が冒険しているかというと出稼ぎだからではある。

まぁ、この場にいるはずのめぐみん達がいないのは不思議だと思われかねないがそれには理由があった。

何回か一緒に狩りをして、毎度の如く食事を共にしていたこめっこの一言が原因である。

 

「はむはむ、はむはむ、はむ!がるるるる!」

「ちょ、私のお皿から取らないでよ!まだ、自分のお皿に残ってるでしょ」

『お前らよく食うなぁ、特に胸が小さい方!痛てぇ!?』

 

食事中、フォークを投げられたラッセー。

それを投げためぐみんは満足そうに食事を再開しようとする。

その時、こめっこが何気なく言ったのだ。

 

「こめっこ知ってるよ、他人のお金でよく食べる人のことをニートって言うんだよね!」

「こめっこちゃん!?」

「だから、姉ちゃんは脛かじりの穀潰しの役立たずなニートだね!合ってるでしょ!」

「…………」

 

カラン、と皿の上にフォークとナイフが落ちた音がした。

見れば、めぐみんの食事の手が止まっている。

その顔には冷や汗のような物が滲み出しており、プルプルと何やら震えている。

 

「ニ、ニート……この私が、ニートだと……」

「ぶっころりーと一緒だね!」

「うわぁぁぁぁ!」

「めぐみん!待って、どこに行くの!めぐみん、めぐみぃぃぃぃん!」

 

そして、ギルドを飛び出しためぐみんとゆんゆん。

それから俺達はめぐみんには会っていない。

なお、こめっこはその後トイレかなと首を傾げたまま食事を続けた。

 

 

 

さて、慣れた方法で依頼料の幾らかを紅魔族の実家へと仕送りするこめっこ。

残ったお金で俺達は昼ごはんを取ることにした。

因みに、慣れた方法とは涙目上目遣いで今日もお願いしますとギルドの受付嬢にお願いするだけである。

後は手配から運搬料まで受付嬢がやってくれる。

その後、ケロッとしているのであのウルウルした涙目は演技であるのだがギルドの受付嬢は気付いては居ない。

こめっこ、恐ろしい子。

 

「唐揚げいっぱいだね」

「あぁ」

「でも、げんかを考えると高すぎるんだって……悲しいね、安かったらもっと食べれるのにね」

「そうか、こめっこは詳しいな……どうした定員?なに、この唐揚げはサービス?」

 

何やらこめっこが悲しそうな顔をしたら、定員が慌ててもう一品追加した。

サービスなら仕方ない。

テーブルに置かれた唐揚げに罪はないのだ。

お代はプライスレス、こめっこがありがとうと言えば定員は喜んで業務に戻る。

本人が嬉しいなら別に良いんだろう、それが定員のポケットマネーだとしてもな。

 

「そういえば、ポイントは溜まったのか」

「うん」

「上級魔法を取るのか」

「うん」

 

めぐみんから、変なことにポイントを使わせないように言われている。

魔法を取らせるのは問題になるかもしれんからな、子供が魔法を使えるのは危険だ。

 

「でも、まだダメだぞ」

「……魔法」

「仕方ないな、じゃあ上級魔法を取っていいぞ」

 

なんかあっても何とかなるだろう、大丈夫だ。

死にかけたら治せばいいしな、聖杯の力で魔法は得意になったんだ。

たまに、失敗してしまうが性格が変わるだけだし殴れば治る。

大体の物は叩けば治るからな。

 

カードに触れると、こめっこに目立った変化は現れなかった。

だが、よく見れば気配がちょっと変わった。

ふむ、こういう仕組みか。

世界が存在を塗り替える、みたいな物かな。

 

「さっそく魔法使いたいね」

「ここはダメだぞ、飯が出なくなる」

「そっか、イッセーだっこ」

「うむ」

 

こめっこを担ぎ上げ、肩にでも乗せてクエストを一枚取ってくる。

ゴブリンか、勝手に増えるし別に倒してしまっても構わんのだろう。

というわけでゴブリンの討伐に行くとしよう。

森まで走って、ゴブリンの気配が見つかった当たりで止まった。

 

「あっちから来るぞ。ゴブリンは食べれないので存分に撃つと良い」

「じごくの炎にだかれて消えろ……いんふぇるの~!」

「おぉ、カッコいい!」

『ちょ!?』

 

チリチリとした音がした。

数秒の静寂、まるで嵐の前の静けさに似ている。

だが、その魔法は炎、そして業火である。

 

「ゴブブ」

 

森からゴブリンが出て来て、此方を見たが既に遅かった。

次の瞬間、世界が紅く染まったのだ。

赤い壁が突如出現したかと思えば、それは一瞬で消えて……そして何もかもが消えた。

次に見えたのは黒い世界だ。

真っ黒な土が地平線に広がる。

一本の線を境界線に、森と焦土と森と区切られていた。

前方だけに炎がきっちりと行ったのだろう。

広がるはずの魔法を制御したことが垣間見える。

スゴい魔法の制御力である。

 

「今のはいんふぇるのではない、てぃんだーである」

『いや、インフェルノって言ってたよな!』

「言ってない!」

 

ぷるぷると首を振るが俺も聞こえた気がする。

ティンダーレベルではないだろうに、すぐバレる嘘を吐くとは姉妹そっくりである。

 

「あっ」

「燃え移ったな」

「食べ物燃えちゃう……」

 

確かに森が無くなるのは問題なので消すとする。

火とか消えろ消えろ……念じたら突風が吹き荒れて火が小さくなって消えた。

 

「何をしたんですか?」

「念じたのだ。つまり、気合いだ」

『聖杯を使って突風を出したんだ』

「つまり、気合いだ」

「左様かー」

 

こめっこは分かった風の顔をしていたが分かってないだろう。

大丈夫だ、俺も分からない。

ラッセーが分かってるし問題ないだろう。

さぁ、試し打ちも終わったしギルドに帰ろうと思ったら空の果てに巨大な気配を感じた。

 

「むっ」

「どうしたんですかイッセー、こめっこはお腹が空きました」

「さっき食べたではないか」

「過去は振り返らない、でも唐揚げまた食べたい」

『振り返ってんじゃん!』

 

相変わらずマイペースなこめっこ、そういえばあの神気は方向的にはアクセルか。

恐ろしいほどの神気……俺でなきゃ見逃しちゃうね。

調べたくはあるが、こめっこの腹がぐるぐる言ってるので保留にしよう。

方向的についでで調べられるだろ。

 

「帰るか」

「てれぽーと!」

「……おっ、場所が違う。転移か、スゴいな」

「ごっはんー、ごっはんー!」

 

ギルドに付けばあっという間に定員が大量の食事を持ってくる。

こめっこが満腹になったら俺が全部食べる流れが確立している。

 

「そろそろ満足しただろ、もう行っていいか?」

「どこに?」

「取り敢えず魔王かな、魔王とか戦いたい」

「じゃあ、イッセーが勝ったらあるじのこめっこは魔王だね」

「……ッ!?」

『待て待て待て、そこに気付くとは天才かみたいな顔はやめろ!』

 

いやだって……天才かよ。

 

「まぁ、そう言うことだ。何かあったらまた呼べば良いだろう」

「分かった。明日呼ぶ」

「明日か、一日じゃ魔王城まで行けないからな……」

『もうちょっと居とけ、魔王に挑むには幹部を倒さないといけないからな。あの神気、風が良くないものを運んで来やがったぜ』

「よく分からんが、分かった」

「分かった」

 

もう少し、こめっこの側にいることにした。


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