傲慢の罪(偽)   作:アンパンくん

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発現

 

 

 4年が経った。

 

 やはり、僕は転生していたらしい。

 そして、僕を産んでくれた母親らしき綺麗な女性は亡くなってしまった。

 

 が、新しい母親が出来た。

 その人はシングルマザーで僕を産んだ母が亡くなって以来ずっと落ち込んでいた父だと思われる人物を献身的に支えていたらしい。

 その行動に立ち直った父は深い感謝を覚えシングルマザーでは大変だろうと思い結婚したみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 ……そのおかげで僕は毎日、新しい母と僕より3歳年上で兄にあたる子供に虐待を受ける日々だが。

 

 どうやら新しい母親は父の『ヒーロー』と呼ばれる職業の社会的地位の恩恵を受けるため、そして自分の息子の今後を考えて、結婚する為に色々計画をしていたらしい。

 

 まだ話を理解出来ないだろうと思い僕がボコボコにされて倒れている時に協力者らしき人物に気分良く話していたのを覚えている。

 

 

 

 そして、この世界についても色々分かって来た。

 

 まず、この世界の殆どの人に『個性』という魔法みたいな力が備わっているということがわかった。

 現に、新しい母親はいつも僕を痛めつけた後、最後はぬいぐるみを持ってきて、僕とぬいぐるみを同時に触るのだ。するとぬいぐるみに僕と全く同じ傷ができ、僕の傷は痛みを伴いながら強制的に治る。

 

 おそらく、あれは『個性』を使用しているのだろう。

 

 他にも、この世界の犯罪者に『(ヴィラン)』と呼ばれる者が多かったり、僕の父もやっている『ヒーロー』と呼ばれる職業が有名だったりと僕が自分を俺と呼称していた前世とは全く違う世の中だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは都内のとある一軒家。

 

 そしてそこは今話題のヒーロー『オールマイト』や一年の事件解決数最多を記録した燃焼系ヒーロー『エンデヴァー』など若手のヒーローが台頭する中で今も根強い人気を誇る天候系ヒーロー『ウェザーマスク』が住む家でもあった。

 

 ウェザーマスクには息子がいた。

 自分の最も愛する者が残した息子だ。

 彼は愛する者が残していった息子を何より可愛がった。

 当然といえば当然だろう。自分の愛する者が残していった贈り物なのだから。

 

 だが、彼は義理深かった。

 自分が絶望の淵に立たされていた時、支えてくれた女性が苦しんでいるのを見てられなかったのだ。

 だから彼は結婚を申し込んだ。

 君を一番に愛せないがと言って……

 その決断が自分の宝物を傷つけるとは知らずに……

 ここまで女性の計画通りだと知らずに……

 

 

 

 

 

「……生意気なんだよ。いつもいつも、あのスーパーヒーロー、ウェザーマスクに可愛がられやがって。」

 

 リビングで7歳とは思えぬほどがっちりとした少年が小さな少年に殴る、蹴るの暴行を繰り返していた。

 床には血の跡がつかない様にマットが引いてあり、外からは見えない様カーテンは閉めきっていた。

 少年の身体には既に至るところに痣があり、ところどころ腫れ上がっていた。

 

「ヘッ、ママが居ないからって優しくやると思うなよ。いつも以上に痛めつけてやる。」

 

 ガタイのいい少年はポケットからメリケンサックの様な物を取り出すと自分の手にはめた。

 そのまま、痛みからかうずくまりながらベソをかいている少年に乗っかり、タコ殴りにする。

 傷は後で母が消してくれることを知ってるからか殴ることに全く遠慮も躊躇もない。ボコボコにしていく。

 

 

 

 流石に殴り疲れたのか少年は殴るのをやめ少年から降りる。

 荒くなった息を整えながら少年はうずくまった少年の胸ぐら掴むとそのまま顔を近づけさせる。

 

「おい、いいか。あの人はもう俺のパパなんだ。お前みたいな奴、この家にはいらないんだよ。」

 

 少年は更に言葉の追い討ちをかける。が痛めつけられた少年は意識が無いのか、聞こえてる素振りを見せない。

 それに腹が立った少年は『個性』を使って殴ろうと右手を振りかぶる。

 

「や…やめてよ。」

 

 すると、殴られていた少年は殴るのを辞めさせようと自分の胸ぐらを掴んでいる手を掴み返す。

 

「なんだ、逆らうのか⁉︎ 弟のくせに‼︎」

 

 少年はニヤリと笑いながら手を離す様言う。

 前に自分の母に反抗して酷い拷問紛いな事をされたのを忘れたのだろうか。

 自分が反抗してきたと言えばこいつは更に酷いめにあうというのに。

 が、腕を掴む力はドンドン強くなっていき離す気配もない。

 

「お…おい、離せよ。離せって言ってるだろ‼︎」

 

 痛みが強くなっていき焦りが出る。痛みに耐性がないのか目が涙目になっていく。しかし、いっこうに話す気配がないので殴って辞めさせようとする。

 

 ゴキッ

 

「ギヒャーーーーーッ‼︎」

 

 折れた。

 殴ろうとした少年の胸ぐらを掴んでいた腕が折れたのだ。いや、正確には胸ぐらを掴んでいた腕を掴んでいた少年が殴られる前に折ったのである。

 

「う…腕が……。ママーー、腕が〜〜」

 

 腕を折られた少年は助けを求める。が、誰も助けに来ない。

 当然だろう。この部屋で何が起こっているか外からは分からないのだから。

 

 殴られていた少年はダメージが全く無いかのように悠然と立ち上がった。そしてそのまま玄関へと歩いていく。

 

 彼がどこに行くかは分からない。

 だが、一つ言えるのは、彼は二度とこの家には戻って来なかったという事だ。




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