傲慢の罪(偽)   作:アンパンくん

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転生

 

 

……俺は死んだ。

 

 

それはなんて事ない何時もの休日だった。

休日に昼間から酒を飲むことが楽しみだった俺は午前中に家事を全て終わらせ、行きつけの居酒屋に向かっていた。

 

気が抜けていたのだろう。居酒屋へ向かう途中、突然向かいから歩いてくる男に、特有の刺激臭のする液体をかけられ火をつけられた。

液体は瞬く間に燃え上がり俺の身体を燃やして行く。

男は燃え盛る俺を見ながら気が狂った様に笑っていた。

 

燃え盛る俺は自分の人生の終わりを感じながら、最後に目に映ったのは、犯人の顔でも周りで悲鳴をあげてる歩行者でもなく、俺よりも熱く煌々と燃えている太陽だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついたらそこは真っ暗だった。水の中にいるような液体に包まれているような感じだった。

何故か息は苦しくない、というよりもまだ呼吸をした事が無い感じだ。

俺はここから抜け出すべく何故か殆ど動かない腕を動かし出口を手探りで探す。

目が見えてない割には存外早い時間で、通れるか分からないほど狭い出口を見つける事ができた。

 

俺はその出口に頭を突っ込んで出ようとする。が思ったより窮屈で思うように前に進む事が出来ない。

少しずつ、ほんとに少しずつ前に進み、ようやく片手が外気に触れる事が出来た。

そして、ラストスパートをかけ出ようとする。と、突然大きな手が俺に触れそこから引っ張り出してくれた。

 

ようやく全身を出す事が出来た。

引っ張りあげてくれた巨人が俺を抱き抱えている。

俺は声を出そうとする。が意識と違い俺の体は泣き声を上げることしか出来ない。

 

俺はそのまま別の人に抱き抱えられた。

その時ようやく微かだが目を開く事が出来、抱き抱えている人の顔を見る事が出来た。

 

 

 

その人は綺麗だった。

その人は泣いていた。

その人は笑っていた。

 

 

 

その時、直感的にわかった。

自分はこの人から産まれた赤ん坊だという事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分は今、生命がこの世界に誕生しようと頑張っている姿を目にしている。

この世界で自分が最も大切な人が最も大切になるだろう命を産もうとしているのだ。

手に力も篭るだろう。

こんな時に苦しみを分かち合えず声をかける事しか出来ない自分が恨めしい。

 

 

 

永遠とも思う時間をかけ、ようやく片手が出て来た。

思わず大声を上げそうになる。が慌てて抑える。

妻が頑張っているのだ。ここで狼狽えてどうする。

が、もうこれ以上は妻の命が危険だと判断され、機械と『個性』、それと医者の手により我が子が誕生した。

 

新しい生命はとても小さかった。

儚く直ぐに壊れそうな小さな身体でこれでもかという大きな泣き声を上げた。

この部屋いっぱいに響き渡る小さな生命の声を聞いて目から涙が零れた。

 

我が子を抱き抱えた先生が俺に抱く様に促すが、出産を終えても自分が産んだ大切な命を見るまで気が抜け無いという顔をしている妻に、先に抱かせるように言う。

 

妻が我が子を抱き顔を見た瞬間、泣きながら笑顔になった。

その顔は今までどんな顔も見て来た俺が妬ける程美しく綺麗だった。

 

そしてそれが妻の最後の笑顔だった。

俺に我が子を渡した時「幸せにしてね」と言い痙攣し始めたのだ。

医者はそれを見た瞬間、突如大声を上げ我が子を助産師に預けさせ俺を病室から出した。

 

廊下では仕事をしていたはずの相棒(サイドキック)達がおり、どうだったか俺に聞いてくる。が、突然の出来事に何を話せば良いか分からず言葉が出てこない。

 

聞いて来た相棒(サイドキック)達も何かを察したのか真剣な表情で病室の出入り口を見る。

 

 

……どのくらい時間が経ったのだろうか。

先程の幸福の時間がどれくらい前だったか思い出せない。

いつの間にか遠くにいるはずのウチの両親と妻の両親が駆けつけていた。

 

挨拶しなければと立ち上がろうとするが膝に力が入らない。が、代わりに両親達がこちらに来てくれた。

俺は挨拶をして先程のあった事を話す。

時間がたったからだろうか。自分でも思った以上に言葉がスラスラと出てくる。

 

最後まで話し終えた時にちょうど病室のドアが開き、先程の先生がマスクをとって出て来た。

 

 

そして俺はその先生から放たれた言葉を聞いた瞬間……膝から崩れ落ち泣き叫んだ。

 

 




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