ルイズアドベンチャー~使い魔のガンマ~   作:三船

6 / 30
お待たせしました、今回はちょっと短いです。


ミッションー104:お洗濯

召喚の儀式を終えて一日目の朝――――あれほど輝いていた星空と二つの月は、朝日が顔を出していくのと同時にだんだんとその輝きを薄めていく。 起床するにはまだ早く、生徒達は未だにぐっすりと夢の中にいるが、その中で一人目覚めた者がいた。

 

 

 

 

ブウゥゥゥン…ッ

 

 

 

「(E-102γ(ガンマ)、起動…)」

 

ルイズの部屋の中、小さな起動音と共に折りたたんでいた手足を広げて立ち上がり、緑のカメラアイに光を点らせて目を覚ましたのはガンマだった。 彼は洗濯をするという使い魔の任務のために朝になるまで待機モードになっていたようだ。

体をぐりぐりと動かして調子を確認し、寝ているルイズに目をむける

 

「(ルイズハ、マダ寝テイルヨウダ…)」

 

ルイズの命令に朝に起こすよう言われているが、まだ日が完全に昇っていないところ、まだ起床する時間帯ではないだろう。 なら時間に余裕があるうちに洗濯を終わらせておいて、その後起こすのであれば問題ない。

ガンマは行動に移ろうとするが、一歩足を踏み出したところで止まり、ゆっくりと昨日のことを思い出すかのように窓のほうを見る

 

 

「・・・ホントニコマッタ・・・」

 

 

ガンマの無機質な声のトーンが下がり、まるで落ち込んだように呟きながら、吐けないはずのため息を吐く仕草をする

 

昨日の夜、ガンマは夜空に浮かぶ二つの月を見て、ここが自分が居た世界とは違う別の世界だということがわかった。 別の大陸に召喚されたものと思っていたが、まさか異世界だったとは・・・、これでは帰る方法がわからない限りエミーに再会するということが限りなく不可能だということだろう・・・。

 

 

 

きっとまた会えると、信じていたのに・・・

 

 

 

「(・・洗濯任務、続行・・・)」

 

だが今はそのことで落ち込んでいる場合ではない。今の自分はルイズの使い魔としてのガンマなのだ。 それにまだこの世界についての情報も収集していないのに諦めるのは間違っている、今は使い魔の仕事をこなすのが最重要任務だ。

 

そう自分に言い聞かせ、隅のほうに置いてあった洗濯物を拾い上げ、ルイズを起こさないよう音を立てずに部屋から出て行った。

 

 

 

 

「洗濯・・・洗濯・・・」

 

昨日インプットしておいた廊下のマップを確認しながら、ガンマは洗濯物をもって歩いていく。傍から見ると見たことのないロボットが女性の下着をもってうろついてる状況は不審としか言いようがない。

 

だが暫く歩いていくうちに廊下の真ん中で急にピタリッと止まり、ガンマはあることに気づいた。

 

 

 

「洗濯場・・・・ドコ?」

 

 

 

なんとルイズに洗濯場がどこにあるのかを聞き忘れていたのだ。これではここらの場所のデータをインプットした意味がない。

だが今更わざわざルイズの部屋に戻って聞きにいくわけにもいかず、どうしたものかと悩んでいたら・・・前方に前が見えないくらいに大量の洗濯物をカゴいっぱいに載せ、重たそうに運んでいるメイド服を着た黒い髪の女性が歩いていた。

きっとこの学院で働いている使用人なのだろう、かつてガンマが乗っていたエッグキャリアにも似たようなメイドロボット達がいたことをガンマは思い出していた。

 

その後姿から、メイドの女性はガンマに気づいていないのか、せっせと洗濯物を運んでいる。きっと自分と同じように洗濯場へ向かおうとしているのだろう、彼女なら洗濯場への場所を教えてくれるかもしれないと思い、ガンマはそのメイドに声をかけた。

 

 

「オハヨウゴザイマス、少シヨロシイデショウカ…」

 

「は、はい、なんでしょ・・っ!?」

 

そのメイドは聞いたことのない無機質な声に戸惑いながらも振り返り、ガンマを見た瞬間ビクッ!と体が跳ね洗濯物を落としそうになる。 振り返った先に2メイルもあるゴーレムのようなものが目の前にいたらそれは驚くのも無理はない。

 

 

「驚カシテ申シ訳ゴザイマセン、大丈夫デスカ?」

 

「あ・・い、いえ、こちらこそ驚いたりしてすみませんでした! ・・・あの、もしかしてあなたは、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう・・・」

 

「ボクヲ、知ッテイルノデスカ?」

 

「ええ、なんでも召喚の魔法で見たこともない喋るゴーレムを呼んだって噂になっていますわ」

 

なんと、もう自分のことが噂になっていたのか…たしかに自分みたいな姿のゴーレムというものはここでは珍しいらしいから、噂が広がるのは仕方がないのだろう。

 

「アナタモ、メイジノヨウニ魔法ガ使エルノデスカ?」

 

「いえ、私はただの平民でございます。貴族様のように魔法などは使えないんです」

 

「・・? 平民ダカラ、使エナイト・・?」

 

 

ガンマはこのメイドの言葉に首を傾げそうになる。 どういうことだろう? まるで魔法は貴族にしか使えないような言い方だ。

 

 

「はい、私達のような魔法を使えない者は平民として扱われ、魔法が使える者は貴族として扱われているんですよ」

 

 

なるほど・・、っとガンマは納得したようにそのメイドを見る。 つまり魔法が使えるか使えないかで上下関係が決まってしまっているということなのだ、昨日の夜ルイズがステーションスクエアのことを「平民しかいない国」といっていたが、"平民"とはそのことを表していたのか・・。だが、何故同じ人間であるはずなのに魔法の有無の差で階級が決まるのだろうか?

思ったよりもこの魔法に関する情報は複雑なのかもしれないと改めて思い直した

 

 

「あの・・・ところで私に何か御用では?」

 

「! ソウデシタ、実ハマスターニ、洗濯ノ任務ヲ受ケタノデスガ…洗濯場ノ場所ガ不明ノタメ、場所ヲ教エテ頂ケナイカト・・」

 

「ああ、それでしたら私もちょうどそこへ行くところでしたので、どうせなら一緒に行きませんか?」

 

「アリガトウゴザイマス」

 

やっぱりこのメイドも洗濯場へ行くところだったようで、案内どころか同行してくれるようだ。 

 

 

「そういえば自己紹介がまだでしたね、私はシエスタと申します。このトリステインで貴族の方々をお世話するために、ここでご奉公させていただいているメイドです。」

 

「ボクノ名前ハE-102γ(ガンマ)。 マスター・ルイズノ使イ魔ノ任ヲ受ケルコトニナリマシタ。 ヨロシク、ミス・シエスタ」

 

「ミ、ミスだなんて、お止しください!私はただの平民なんですから、どうぞ普通にシエスタと呼んでください、えっと・・イー・・イーイチゼロニ・ガンマさん」

 

黒髪のメイド、シエスタは顔を赤くさせ両手を前に出してぶんぶんと振る、ガンマはその姿を見てなんで焦ったようにしてるのかわからなかったが、本人が嫌がっているならやめておくべきだろうと判断した。

 

 

「デハ・・・ボクノコトモ、普通ニ"ガンマ"ト呼ンデ欲シイ…改メテヨロシク、シエスタ」

 

「は、はい!よろしくガンマさん!」

 

ガンマは敬語口調をやめ、改めてシエスタと自己紹介をした。シエスタの様子から、貴族と違って敬語で話すより、普通に接したほうが話しやすいのかもしれないと判断したためだ。 シエスタもこのガンマというゴーレムが思ったよりも人間のように話すため内心驚いていたが、ここまで丁寧に接してくれるガンマに好感を持てたようだ。

 

 

ガンマは彼女のこの愛嬌のある笑顔を見て、ガンマは友達のエミーの笑顔を連想させていた。

 

「(エミーモ・・・アンナ風ニ優シク笑ッテイタナ・・・)」

 

そう懐かしむように、ガンマはシエスタと共に歩んでいった・・・

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

「デハ、洗濯場ヘ案内ヲシテクレル間、シエスタノ分ハボクガ持トウ」

 

「え、で、でも悪いですよ!それにそんな量の洗濯物をいくらゴーレムのガンマさんでも・・」

 

「問題ナイ、コノ程度ノ量ハ十分二運ブ事ガ可能。 トコロデ、ココノ洗濯機ハ、洗イ終ワルマデ、ドノクライ時間ガ掛カカルダロウカ?」

 

「・・・・あの、"センタクキ"って・・なんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・エ?」

 

 

 

 

 

―――この後ガンマがシエスタに教わりながら片手しか使えずの洗濯に苦戦したり、何度か下着を破ってしまったのは言うまでもない




ゲームの中でもガンマはロボット特有の天然系なキャラだと思います

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。