ルイズアドベンチャー~使い魔のガンマ~   作:三船

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やっとできました続きです。
書いててなんだかくどすぎるかなって思うときがあります。


ミッションー103:二つの月

この日―――試験を無事に終え、寮に戻ったルイズは上機嫌だった。

 

自分の運命を決めるとも言える召喚の儀式、そこで102回もの召喚魔法を唱え、やっと現れた謎のゴーレム ガンマ。 初めはこの弱そうな見た目のゴーレムに失望していたが、なんと自分でものを考え、言葉を喋ることができるというのだ。

しかもどういう仕組みなのか足の形状を変えることで高速で走ることができ、それによりいつも馬鹿にしてくる同級生達よりも先に学院に戻ることができてあいつらの鼻を明かしてくれたのだ、あいつらのあの時の顔は傑作だったとルイズは思い出すたびにほくそ笑みそうになる。

そして部屋に戻るためガンマをつれて歩いてる時も、やっぱりなのかガンマは目覚めた時と同じように不思議そうに周りを見回していた。

そんなにこの建物が珍しいのだろうか?一体どこの田舎から来たのだろう・・・

 

そう思っているルイズのことをつゆ知らず、ガンマは歩きながら自分がこれから暮らす場所のデータをインプットすることに専念していた。このトリステイン魔法学院という城はあまりにも大きいのだ、ただでさえデータがないのに万が一ルイズとはぐれてしまって迷子にでもなったら困ってしまうためだ。 なのでルイズと離れないようにデータを取りながらもしっかり付いていった。

 

そうこうしているうちにルイズの部屋の前に着き、ルイズは部屋の鍵を開け中に入ったが・・後ろから ガツッ となにか引っかかるような音がして振り向いてみれば、ガンマが少し大きかったせいか入り口の端に肩が引っかかっていたようだ。身長が2メイルもあるうえに幅も大きいからほとんど入り口のサイズとギリギリのようだ

 

「ちょっと気をつけなさいよ!傷が付いたらどうすんのよ!」

 

「謝罪スル・・」

 

ガンマは素直に謝りながら、なんとか体をひねったりしゃがんだりして入り口をくぐることで部屋の中に入ることができた。

ルイズは「まったく・・・」っといいながらも夜食用のパンを机に置き、そのまま目の前の豪華なベッドへダイブするように身を投げだす

 

「あぁ~~~疲れたぁ~~~・・・」

 

よほど疲れたのかベッドの上で仰向けになって体を伸ばしたりしてだらしなく寝そべる。100回以上も召喚魔法を使って体力も神経もすり減らしていればそれは疲れもするだろう。 そんなルイズを見ながら、ガンマは確認するように緑のカメラアイで部屋を見渡す

 

 

「綺麗ナ部屋・・」

 

ルイズの部屋の中を見渡しその感想を口にする。ステーションスクエアの海岸線に隣接するホテルの部屋も綺麗だったが、それなどとは比べ物にならないだろう。部屋の中は広く家具や床、日用品はどれもピカピカで装飾や材質などから高級品だというのがわかる、ここを通るときの通路もそうだったが、床の隅々まで掃除しているのか塵一つもないところからやはりここは貴族のための建物なのだと納得した。

その言葉を聴いてルイズは体を起こしてベッドに腰掛けるように座る。

 

「当然でしょう? いくら自我をもってるからって、本来なら平民どころかあんたみたいな田舎から来たようなへんてこなゴーレムには、一歩も入ることすら許されない場所なんだから」

 

ルイズはどうやらガンマのことを田舎から来たゴーレムと判断されたようだ、あれだけ周りのものをじろじろと見ればそう思われるだろう。

・・・もっともゴーレムに田舎もなにもないような気がするが。

 

「今日からこの部屋が貴方が暮らす所よ、もちろんここは私の部屋だから物を壊さないように気をつけなさいよね?

それと、そこが貴方の寝場所だから」

 

 

ピッと指をさしたところに、使い魔が寝るためであろう藁の山があった

 

 

「・・・・・何故、藁?」

 

「・・・しょうがないでしょう、まさか貴方みたいなゴーレムが使い魔になるなんて思わなかったもの・・・・ひょっとしてダメだった?」

 

 

すこしばつが悪そうに言うが、ロボットであるガンマは睡眠を必要としないため自分の場所を用意してくれているだけでもよかったと思っていた。

 

「問題ナイ。逆ニ、ボクノ居場所ヲ用意シテクレタルイズニ感謝シテイル」

 

「そ、そう…それならよかったわ」

 

ホッとしたようにルイズは息を吐く。 まさか感謝されるとは思わなかったが・・それでもガンマが納得してくれたようで安心した。

 

 

「(それにしても・・・コイツってホントに変わった姿をしてるわよねぇ・・)」

 

改めてみてガンマのその姿を不思議そうに見る、一体どこのメイジがこのゴーレムを作ったのだろう? 自我を持ち、複雑な構造をした金属の体で、馬よりも早く移動が出来るゴーレムだなんて聞いたことがない。 ひょっとして高位のメイジがつくったのだろうか?だとしてもこのゴーレムがトリステインの建物を珍しそうに見るあたり、きっと田舎出の貴族なのだろう。

・・・だが不可解なのは、こんな自我をもった珍しいゴーレムをそんな田舎にいるようなメイジに作れるのだろうか?

まず気になるのは、このガンマのゴーレムらしくない姿だ。 ゴーレムとはその頑丈な巨体と腕力を持ち味としており、役割はそれぞれで巨大な石の扉を開けたり、大きな跳ね橋を動かすためだったり、岩の撤去や建物の建設に使われたり、さらに重要なのは主人を守るために時には体を盾として、時にはその怪力をもってして敵を粉砕するのがゴーレムの役目なのだ。

 

なのに…このガンマはその役目と程遠いほど細い手足をしている。右腕の鈍器(?)は護身用としても心許ないし、さきほど自分を軽々と持ち上げたが、ある程度の腕力はあるがだからといっても力持ちというわけではないだろう・・だとしたら何のために作られたのだろうか?

 

「…ねぇ、アンタはどこから来てどこのメイジに作られたの?見た感じじゃ普通のメイジにはアンタみたいなゴーレムは作れないと思うんだけど」

 

ルイズにそう訪ねられ、ガンマは少し迷った。 ルイズには自分のことを教えてもいいが、エッグマンのことについてはやめておいたほうがいいかもしれない。万が一、ここでもエッグマンことが知れ渡っているならばそのエッグマンのロボットである自分がこの地の住民達に敵対されてしまう恐れがあるためだ。

それに・・・自我を持ったとはいえ、戦闘用ロボットである自分自身も必要以上の情報を与えられておらず、無知に等しいのだ。 だからルイズに伝わるようなるべく言葉で表せられるように説明した。

 

「マズ、ルイズハ"ステーションスクエア" "ミスティックルーイン" "エンジェルアイランド" ト言ウ地名ヲ聞イタ事ガアルダロウカ?」

 

「ステーションスクエア? ミスティックルーイン? 全然聞いたことがないわね、どこの田舎なの?」

 

「田舎デハナイ、コノトリステイントハ違ウ、ココヨリモ遠イ遠イ国ノ中ニアル都市ノ名前。 ソシテ、ボクハアル科学者ニヨッテ製造サレタ。 ボクガ居タ所デハ大勢ノ人間ガ暮ラシ、魔法ト言ウモノガナク、コノトリステインノ人達ノヨウニ人間ガ空中ニ浮カブ事ハ出来ナイ」

 

「ま、魔法がない!? 平民しか居ない国ってこと!? そ、それじゃぁ・・アンタを作ったその"カガクシャ"っていうのはメイジじゃないの?」

 

「ボクヲ造ッタ科学者モ、メイジデハナイ。 ボクハ魔法トイウモノデ造ラレタノデハナク、科学ニヨッテ造ラレタ」

 

「科学・・?よくわかんないけど・・それと魔法とどう違うの?」

 

「・・・情報無シ。ダガ、科学ニヨッテソノ国ガ発展シテオリ、ルイズ達ガ使ッタ魔法トハ違ウ (ちから)ナノハ確カ」

 

「なによそれ、それじゃほとんどわかんないじゃない!」

 

 

ルイズは冷やかしを食らったように不機嫌になり、夜食のパンを頬張る

 

 

「それに信じられないわ、魔法も無しで国が発展してるだなんて。 そもそもその科学っていうので何が役立つのよ?」

 

「インプットサレテイルデータニヨレバ、人ヲ乗セテ空ヲ飛ブ乗リ物ヤ、地面ヲ走ル乗リ物、遠クニ居ル人物ト会話ガ出来ル機械、自動デ開クドア 等様々ナモノガアル」

 

「それってどんなマジックアイテムなの? 本当ならすごいかもしれないけど、もうわけわかんないわ・・・とりあえずわかったのはあんたが魔法もしらないくらい辺境から来たってことくらいね・・」

 

わかりにくい情報の上に疲れも相まってうんざりしたように頬杖をついてため息を吐く。ガンマも主人であるルイズに納得できる情報が伝えられなくて申し訳なさそうな顔(?)をしている。

 

 

「・・・マスター・ルイズ、最後ニ質問ヲシテモイイダロウカ?」

 

ルイズが顔をあげ、ガンマの事を見るがどこか気だるげだ

 

「ん?いいわよ、言ってみなさい」

 

「コレカラ、ルイズノ元デ暮ラス上デ 重要ナ内容・・・・使イ魔 トハ、何ヲスレバイイノダロウカ?」

 

ガンマがもっとも気になっていた情報"使い魔" 、ルイズをマスターとして使い魔の任を受けると決めたが、そもそも使い魔とはどういうことをするのかがわからないため、主人であるルイズに直接聞こうと決めていた。

 

「ああ・・そういえばまだ説明してなかったわね。じゃぁいいわ、このルイズ様が使い魔の心得を説明してあげるわ」

 

ルイズはベッドの上に立ち上がってガンマの目線が合うように立つ。貴族として行儀が悪いがガンマを見上げながら説明するのが癪なのだろう。

 

「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。つまり感覚の共有よ、アンタが目で見たもの耳で聞いたものが主人の私にも見えたり聞こえたりすることね」

 

なんとも便利な能力だ、とガンマは思う、つまり自分の視界を通じて離れた場所から使い魔を通じてその場所の情報が得られるということなのだ。これなら偵察任務の際に役に立つ。

 

 

「何カ、見エルカ?」

 

「・・・ダメね、何にも見えないわ。 ひょっとしてゴーレムとじゃ相性が悪くて共有ができないのかしらね。」

 

「ソウカ・・・」

いきなり使い魔として使えない要素となるとは・・・

 

 

「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とか」

 

「秘薬ニツイテハ情報無シ、ダガ探索任務ナラ経験アリ。過去ニ、前ノ主人カラカエル捕獲任務ヲ受ケタ事ガアル」

 

「か、カエ・・ッ!! …ま、まぁいいわ、つまりそうゆう探し物ができるってことよね?」

 

「? 特定ノ情報サエアレバ、探索ハ可能」

 

ルイズがカエルというワードに何故か敏感に反応したが、どうしてだろう?

 

 

「そして、これが一番なんだけど・・・、使い魔は、主人を守る存在であるのよ!その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目!だけど・・・見た感じじゃアンタじゃ無理そうね」

 

普通のゴーレムだったならば期待できただろうが、いくら特殊な移動手段を持ってるからといってもガンマは見た目どおりこの細い手足では敵の攻撃を防げそうには見えない。

 

「ソノ心配ハナイ、ボクハ戦闘用トシテ造ラレテイル」

 

ジャキッ、と右腕の銃を左手で持つように構える。

 

「アンタが・・・戦闘用? とてもそうには見えないけどねぇ・・」

 

「信ジテクレナクテモイイ…デモ、マスターデアル君ハ必ズ守ル」

 

ルイズは思わず笑いそうになったが、ガンマのその真剣そうな姿に笑うことができなかった。

ガンマは、ルイズを自分のマスターであることと同時に、一度壊れてしまった自分を直してくれた恩人であるルイズを守ると決めたのだ。 それが今ガンマのできる唯一の恩返しなのだ

 

「・・そう、じゃぁもしもって時は、使い魔らしいところを見せて守って頂戴ね?」

 

ルイズはそう微笑み、ガンマのその言葉を嬉しく思っていた。戦闘用だと言うのは信じられないが、きっとこの使い魔は自分の身を呈してでも敵から主人を守ろうとするだろう。何となくだが、彼のそんな意志のようなものが感じられた。

 

「でも、別に今は襲ってくるような敵はいないから、代わりに他のことをしてもらうわ、掃除に洗濯。その他の雑用とかね。それが貴方の仕事よ」

 

「了解、マスター」

 

「さてと・・しゃべったら眠くなってきちゃったわ」

 

あくびをしたあとルイズはそう言うやいなや、いきなりガンマの前でブラウスのボタンを外していき、下着を露にする

 

 

その光景にガンマのカメラアイが何度かぱちくりと点滅する。

 

 

「・・・・アノ、マスター」

 

「なによ?」

 

「何故、服ヲ・・・?」

 

「着替えるために決まってるじゃない」

 

「イヤ、アノ・・本来ナラバ……人ノ前デ脱グモノデハナイノデハ…」

 

 

ルイズが平然としながら服を脱いでるのに、ガンマはらしくもなくおろおろしている。

 

ステーションスクエアのホテルにはビーチがあり、そこでは来場した客が泳ぐために更衣室で水着に着替えてるところから、女性(男性含め)は他人に着替えてるところを見られるのはダメなのだとガンマは思っていた。実際にカエルの探索中に更衣室に入ろうとしてホテルの従業員に注意されたことがあった

 

 

「人もなにも、アンタゴーレムじゃない。それに使い魔に見られたって、なんとも思わないわ」

 

「・・・・」

 

ほんとにそれでいいのだろうか・・?ガンマはまだルイズのことが理解できなかった

 

 

「はいこれ、明日になったら洗濯しといてね。それから朝になったらちゃんと起こすこと。頼んだわよ」

 

「・・了解」

 

ガンマにぱさぱさと洗濯物の服や下着を投げ渡し、眠たそうにベッドの中にもぐりこんだあと、パチンと指を鳴らした。

指の鳴らした音に反応したように、部屋を照らしていたランプの明かりが消え、ルイズの寝息とともに静かな暗闇が部屋を支配した。

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

暗闇の中、渡された洗濯物を藁の隅に置き、ガンマは寝ているルイズをじっと眺めた後、月明かりが照らす部屋の窓に目を向ける。

 

 

「・・・・エミー・・・」

 

ポツリ、とずっと会えることを願っている友達の名を呟いた。 エッグキャリアから脱出したあと、彼女は今頃どうしているだろうか・・。 エッグマンの追っ手である、E-100シリーズのプロトタイプであるE-100α(アルファ)…またの名を"ZERO"は、きっと脱出したあとも彼女を追い続けてるだろう、それがZEROに課せられた任務なのだから。 そのZEROから無事に逃げられればいいのだが・・・。

それに、ルイズのおかげでこうやって再び動ける体になったのだ、ここトリステインからステーションスクエアまでどれほどの距離があるかは不明だが、今すぐは無理でも、きっとまた彼女に会えるはずだ。 

 

今はまだ情報が不足している以上、下手に動き回るのは得策ではない。まだルイズのことがわからないが、彼女の傍で使い魔の任務を続ければ、自我を持った自分にとって人との関わりがどういうものなのかが分かるはずだ。それに魔法と言う不可思議な力や、自分の中の未知のエネルギーについても謎が多い。それらのことも調べる必要があるかもしれない。

 

 

そう思いながら、ガンマは窓に近づき夜空に浮かぶ月を見上げた。

 

 

 

「・・・・!?」

 

 

ガンマは月を見た瞬間、思考が一度とまり、そしてメモリー内の情報や感情、これまでの情報で推定した推測がメチャクチャに入り混じってクラッシュしてしまいそうになった

 

 

 

何故なら、ありえないのだ

 

 

ありえるはずがないのだ

 

 

 

 

 

一つしかないはずの月が――――二つあるのだ

 

 

 

 

「・・・マサカ・・・」

 

ガンマは、電子頭脳の片隅に、このデータにない場所で ある可能性を考えていた。 "ロボットを知らない" "魔法" "召還" "使い魔" "謎の単語" "人が空を飛ぶ" "未知のエネルギー" ・・・・それらの情報をもって、予測してしまったある可能性・・・それは

 

 

 

 

 

 

―――――「異世界」・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当ニ・・・・コマッタ」

 

 

 

 

ガンマの異世界の暮らしは、始まったばかりである




暑い・・・_(:зゝ∠)_
皆さんも体調に気をつけて

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