なかなか作業が上手くいかず時間がかなりかかってしまいました。 調子によっては遅かったり早かったりと更新がはかどらなかったりすると思います。
ゴーーーンッ…ゴーーーンッ…
太陽がちょうど真上に位置した頃に心地よい鐘の音が魔法学院全体に響き渡る。 正午の時間帯であると同じにお昼の食事の時間であることを生徒や教師全体に告げるためのものだ。
今朝の朝食の時のようにアルヴィーズの食堂へ人が集まっては給仕がせっせと料理をテーブルに並べていき、厨房にいるコック達は忙しそうに料理を作っている。 そこへルイズとガンマがやっと教室の片付けが終わり、少し遅れながらもお昼の食事をするため向かっている最中なのだが、ルイズはどうも不機嫌な様子だ。
「マスター…マダ怒ッテル?」
「当たり前でしょ、よりにもよって人が一番気にしていることを、何が『破壊の才能がある』よ! 嬉しくもなんともないわ!」
「デモ・・・杖ヲ振ッタダケデ、人ヤ机ヲ吹キ飛バス事ガデキルノハ、スゴイ事ダト・・」
「それが嬉しくないって言ってるでしょうが!」
「申シ訳ナイ・・・」
フンッとルイズはそっぽ向いてしまい、ガンマはまた主人を怒らせてしまいションボリと落ち込む。 ガンマからしてみれば、ルイズの爆発を起こす魔法は戦闘に役立つと考えていた。ガンマが以前入手していた参式レーザー銃も銃弾が対象に当たったら対象の周りに広がるように爆発する仕組みになっていたが、ルイズほどの広範囲の爆発を起こせない。 だからルイズの失敗魔法を攻撃用として評価できると踏んだつもりだったのだが・・・ルイズはそれを快く思わなかったようだ。
その結果、罰としてガンマ一人だけで瓦礫の山を全部片付けることになってしまったが、さっきまで落ち込んでいたルイズが元気を取り戻してくれたならこの罰も苦ではなかった。
そうして再びアルヴィーズの食堂に到着して中へ入り、先に来ていた生徒達がすでに食事を始めている中、生徒達は罰で教室の片づけをさせられたルイズを見てはあざ笑うかのようにくすくす笑っている。ルイズはその生徒達を少し睨んだが…食事の時間がもったいないため相手にしないことにした。
ルイズが自分の座る席へ近づくと、ガンマはルイズに指示される前に動いて椅子を引きルイズが座れるようにする
「うん、今度はちゃんとできたようね」
「ルイズノ食事ガ終ワルマデ、コノママ傍デ待機…デ、イイノダロウカ?」
「そうそう、その調子でお願いね」
椅子に座るとルイズはガンマがちゃんと自分に指示される前に行動できたことで、すこし機嫌がよくなる。やっぱりこのゴーレムは学習能力が高いようだ。先の授業での先生の魔法の説明を理解したし、弱そうな見た目と少し抜けたような性格には難があるが・・・それでもこのガンマは真面目で優しいやつなのは確かだ。まだ完璧とは言えないが、このまま少しずつ学ばせていけば執事のようなゴーレムに育てられるかもしれないとルイズは思った。
「(待機中・・・暇・・・)」
ルイズが椅子に座って食事を始めるのを確認し、ガンマは今朝と同じようにルイズの傍に控えるように待機するが、今のところ話題もないし食事もできないガンマにとって、ただ黙ってじっとしているのはなんとも退屈なものである。 銀のトレイを持ってデザートのケーキを貴族達に配っているシエスタの姿があったため、軽く手を振るとあっちも気づいたのか、笑顔で返してくれた。
「(明日ノ洗濯任務ノ時、シエスタノ分モ手伝オウ・・)」
そう思いながら、次に周りをカメラアイで見回すと、食事中の生徒達にはお喋りなどをしてる者が結構いるためわいわいと食堂の中は賑やかだった。 その雑談の内容も様々で、今流行のものやら噂話だの、ステーションスクエアでもたまたま聞いた住人達の会話と似たものだった。
まだこの世界の国のことを知らないガンマにはあまり興味がなかったため聞き流していたが・・・カメラアイを回している時に、生徒達の中でかなり目立った格好をした生徒が視界に映った。
その生徒は金髪でバラを胸ポケットに挿し、何故か服の胸元が大きく開いている。雰囲気も貴族らしく上品に見えるには見えるが・・・ステーションスクエアではあのようなタイプの人間は居なかったため、ガンマにはある意味未知の生物に見えていた。
キュルケのように胸が大きいわけでもないのに、なんで胸元を見せるように開けてるのだろうか?とガンマは疑問符を浮かべていると、その目立った生徒の周りにいる友人たちが、口々にその生徒を冷やかしている
「なあ、ギーシュ! お前今は誰と付き合っているんだよ!」
「誰が恋人なんだ? 教えろよギーシュ!」
その生徒はギーシュと言う名のようで、どうやら恋愛というものの話をしているようだ。 彼はすっと唇の前に指を立てた。
「付き合う? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
自分を薔薇と例えていると言う事は、彼は色んな人に好かれるような人物ということだろうか? だがどちらかと言うと色的には赤い髪のキュルケのほうが薔薇の色と相まって似合うような気もするが・・・っとガンマは恋愛の話をまったく理解していないようで、首をかしげながらギーシュたちの会話を離れたところか聞いていた。
ポトッ…
その時、ギーシュのポケットから何かが落ちた。 ガンマはそれに気づいてズームアップで見たところ、それはガラスでできた小さな小瓶のようで、中には鮮やかな紫色の液体が入っている。 それがなんなのかはわからないが、どうやらギーシュはそれが落ちているのに気づいていないようだ。
もしあの小瓶を誰かが踏んづけたりして割れたりしたら、きっとあのギーシュは困るのかもしれないと思い、ガンマは行動することにする
「マスター、ココヲ少シ離レテイル」
「え、ちょっとどこ行くのよ?」
「スグニ戻ル。」
そう言ってガンマはその小瓶のほうへ向かっていく
「もう、 いいけど問題は起こさないでよ?」
「了解」
ルイズはガンマがなんの理由で離れるのかわからなかったが、すぐに戻るのならば心配ないだろうと思いガンマの行動を許すことにした。
「小瓶、ゲット」
その落ちている小瓶の所まで着き、ガンマはそれを拾い上げると落とし主であるギーシュのほうへ持っていくが、まだ気づいていないのかギーシュは振り向きもせず雑談をしている。
「スミマセン、ミスタ・ギーシュ。落トシモノデス」
その小瓶をギーシュの前に見えるように持って行く。ギーシュはガンマを見て驚いたが、すぐに苦々しげにガンマを見つめると、その小瓶を持った細い手を軽く押しやった。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
「? シカシ、コノ小瓶ガ貴方ノポケットカラ落チタノヲ、視認シマシタガ・・・」
ガンマは首を傾げそうになりながらなんで自分のじゃないと否定するのか、不思議そうにギーシュを見つめる。
そしてガンマの言葉を聴き、その小瓶の出所に気づいたギーシュの友人達が、大声で騒ぎ始めた。
「おお? その香水は、もしやモンモランシーの香水じゃないのか?」
「そうだ! その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」
「そいつが、ギーシュ、そのゴーレムの言うとおりお前のポケットから落ちてきたってことは、つまりお前は今、モンモランシーと付き合っている!そうだな?」
「違う。いいかい? 彼女の名誉のために言っておくが・・・」
そうギーシュが何かを言いかけたとき、後ろのテーブルに座っていた茶色のマントの少女が立ち上がり、ギーシュの席に向かってコツコツと歩いてきた。
栗色の髪をした少女で、その少女が着ているマントがルイズ達のマントの色と違って茶色だった。たしかルイズから得た情報ではマントの色で学年が分かれているらしく、この茶色のマントの少女は一年生なのだろう。
「ギーシュさま・・・・」
その少女はボロボロと泣き始める。
「やはり、ミス・モンモランシーと・・・・」
「待ってくれ、彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは、君だけ・・・」
――バシィィンッ!!!
しかし、ケティと呼ばれた少女は、思いっきりギーシュの頬を引っぱたいた。ガンマは突然の出来事に硬直する。
「その香水があなたのポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ! さようなら!」
ケティという少女は泣きながらその場を走り去っていき、ギーシュは叩かれた頬をさすった。
――ガタッ
すると、遠くの席から一人の見事な巻き髪の少女が立ち上がった。 その子はガンマの記憶には新しく、教室でルイズが起した爆発で吹っ飛んだ黄色いカエルの主人だった少女だ。 話の流れからして、恐らくはあの少女がモンモランシーという子なのだろう。
そのモンモランシーはいかめしい顔つきで、かつかつとギーシュの席までやってきた。
「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただいっしょにラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで・・・」
ギーシュは首を振りながら言った。 冷静な態度を装っていたが、冷や汗が一滴頬を伝っている。
「やっぱり、あの一年生に…手を出していたのね?」
「お願いだよ。『香水』のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔を、その怒りでゆがませないでくれよ。僕まで悲しくなるじゃないか!」
モンモランシーはテーブルに置かれたワインの瓶を掴むと、中身をどぼどぼとギーシュの頭の上からかけた。ギーシュの金色の髪がワインの色で染まっていく
そして・・・
「うそつき!!」
とモンモランシーは怒鳴って食堂を去っていった。
沈黙が流れ、ガンマはただただこの出来事に緑のカメラアイをパチクリと点滅させ唖然としている。 ギーシュはハンカチを取り出すと、ゆっくりと顔を拭いた。 そして首を振りながら、芝居がかった仕草で言った。
「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
・・ただ落ちた小瓶を届けにきただけのつもりが、まさかこんな事態になるとはガンマに予想などできようものだろうか。 ルイズには問題を起すなと言われてはいるが、話の内容からするとこれはギーシュに問題があったのだろうと判断し、これ以上は関わっても仕方がないのでガンマは拾った香水の小瓶をテーブルに置き
「小瓶ハ、ココニ置イテオキマス」
と一言告げてルイズの元へ戻ろうとしたところを、ギーシュが呼び止めた。
「待ちたまえ、ゴーレムくん」
「ナンデショウ?」
ギーシュは椅子の上で体を回転させると、すさっ! と足を組んでガンマを見上げる。
「君が軽率に、香水の瓶なんかを拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。 どうしてくれるんだね?」
ガンマはそのギーシュの言葉に疑問を持った
「ドウイウ事デショウカ? ボクハ、貴方ガ落トシタ小瓶ヲ拾ッテ届ケタダケデ、関係性ハアリマセン。 ソレニ、ボクカラ見テモ ミス・ケティトミス・モンモランシーノ名誉ヲ傷ツケタノハ、貴方ナノデハ?」
ギーシュの友人たちが、どっと笑った。
「このゴーレムの言うとおりだギーシュ! 二股をしたお前が悪い!」
「ははははっ!『土』系統のお前がゴーレムに言われちゃあお仕舞いだな!」
ギーシュの顔に、さっと赤みが差した。
「いいかい? ゴーレムくん。君がただのゴーレムと違って自我を持っているのは知っているし、貴族に対する態度も悪くはない。 だが、僕は君が香水の瓶を見せたとき、知らないフリをしたじゃないか。 人並みの知性があるのなら話を合わせるぐらいの機転があってもよいだろう?」
このギーシュは一体何を言ってるのだろう? どう考えてもこれはギーシュがあの二人と二股?で関係をもって騙していたことがそもそもの原因なのではないだろうか? そもそも自分は人間ではなくてロボットなのだから、そのロボットに責任を求められても困る。
「オ聞キシマスガ、僕ノ推測デハ、コノ香水ハミス・モンモランシーガ貴方ノタメニ送ラレタ大事ナモノデアルト判断。 ソレヲ落トシタ上ニ自分ノモノデハナイト発言シタト言ウ事ハ、ミス・モンモランシーノ事ヲ騙シテイイ存在ト考エテイタノデスカ?」
ガンマはテーブルに置いた香水の小瓶を持ち、ギーシュに見せ付ける
「な、何を・・!!」
「ソレニ、ミス・ケティノアノ様子カラシテ、彼女ハミスタ・ギーシュノ事ヲトテモ信頼シテイタハズ。 ソノ二人ノ女性ヲ騙シテ、悲シマセル事ハ、貴族トシテノモットーニ反シテイルノデハ・・?」
「うっ・・そ、それはっ・・・・」
ギーシュはガンマの正論にぐうの音もでなかった。 周りにいた友人達やいつの間にか集まった野次馬の生徒達は「ギーシュがルイズのゴーレムに説教されてる」と笑い、ギーシュは顔をさらに赤くさせてギリッと奥歯を噛み締め自分が笑いものにされていることに怒りを覚えだした。
『土』系統を得意とする自分が、自我があるからってゴーレムごときにコケにされるなど屈辱だ!と。
ガンマはギーシュが何も言ってこないところを見て、自分の非を認めてくれたと判断しその場を去ろうとする。
「デハ、コレデ失礼致シマス」
「ふん・・・。 ああ、そういえば君は・・・」
ギーシュはガンマの事を見て何か思いだしたようで、バカにしたように鼻を鳴らした。
「君は、あの落ちこぼれのゼロのルイズが呼び出した使い魔のゴーレムだったな。 ガーゴイルと違って自我に目覚めたとあっても、無能なゼロのルイズの使い魔じゃぁこうも気が利かないんじゃ仕方がないな。そんなゴーレムごときなんかに貴族の機転を期待した僕が間違っていたよ、さっさと行きたまえ」
ピタリッ
とガンマが足を止め、ゆっくりと振り返り緑のカメラアイをギーシュに向け、無機質な声で問いかける
「ソレハ、ドウイウ意味デショウカ?」
「そのままの意味さ。四大系統の魔法の一つも使えない上に、何をやっても爆発、爆発、爆発・・・そんなメイジとして無能なやつに召喚されたような使い魔では、召喚したゼロのルイズ同様役立たずってことさ」
「・・・・・・・・」
ガシャッガシャッガシャッ…
無言のまま、ガンマはただまっすぐギーシュを見つめたまま、冷たい緑のカメラアイをじっと向けながらギーシュに近づく
ギーシュはそんなガンマに少したじろぐも、姿勢をくずさずガンマを見返す
「な、なんだね。何か言いたいことでも・・・ってうわぁあ!!?」
ムンズッと左手でギーシュの首根っこを掴んで持ち上げる。 2メイルもあるガンマよりも背が低いギーシュは、文字通り首根っこを掴まれた猫のように宙吊りになっている。
「な、何をするんだいきなり!? 無礼だぞ! 早く離したまえ!!」
「謝リナサイ」
「な、なんだと!?」
ジタバタと暴れるも背も腕も長いガンマにギーシュでは手が届かず触れることすらできない。 そんなギーシュを見つめたままガンマは言葉を続ける。
「貴方ガ傷ツケタミス・モンモランシート、ミス・ケティ。 ソシテ、ボクノマスターデアルルイズヲ侮辱シタコトヲ、謝リナサイ」
ガンマは別に自分が何を言われようと何とも思わない。 だが、ルイズは周りに馬鹿にされている理由はすでに理解しているが、それでも信じていたはずのモンモランシーとケティを騙すようなやつに、ましてや目の前でどうどうと恩人である主人のルイズを役立たずとバカにしたことがガンマには許せなかった。
―――"役立たずとして破棄された兄弟""友達を守ろうとしたエミー"
その記憶をもったガンマだからこそ、このギーシュの発言を無視することができなかった。
そしてそこへ・・・
「が、ガンマさんっ!」
「あんた、何やってるのよ!!」
騒ぎを聞きつけたのか、シエスタとルイズが野次馬の間を通ってその現場に現れる。ギーシュを摘みあげているガンマにシエスタは驚愕し、ルイズはズンズンとガンマのほうへ近づく
「このバカ使い魔っ!問題を起すなって言ったでしょ!? さっさとギーシュを離しなさい!」
「・・了解」
パッと手を離すと、ギーシュはドサッと床に落とされ尻餅をつく。 その姿を見て周りのギャラリーは腹を抱えて笑い出した。
「あ、あんたねぇ! もうちょっと降ろし方ってもんがあるでしょ!?」
「? デモ、"離セ"ト言ッテイタカラ、ソノトオリニ・・」
「だから、そう言う意味じゃないって言ってるでしょ! アンタはどうしてこう・・!! 早く謝りなさい!!」
ルイズは焦ったようにガンマを怒り出し、ガンマはルイズが怒っていることに首をかしげるだけだった
そしてギーシュのほうは・・・貴族である自分をここまでコケにしたことに、周りの笑いものにしたことに完全に怒りを露になりそうになりながらも抑えてプルプルと震えながら立ち上がり、目を光らせてガンマを睨む。
「ふ、ふふ・・君は・・・『土』系統である僕にとっても興味深いゴーレムと思っていたんだが・・・貴族に対して礼儀がなっていないようだ」
「ミスタ・ギーシュ、ソウイウ貴方モ、貴族トシテ立派デハナイト思ワレマスガ・・」
ガンマのその言葉が、引き金となった・・・
「よかろう・・・ちょうどいい腹ごなしだ。ゴーレムくん、君に決闘を申し込む!」
「・・決闘?」
ギーシュはキザったらしく格好をつけ、そう言い放つと、周りにいたギーシュの友人や野次馬がざわつき、面白いものが見れると騒ぎだす。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよギーシュ!決闘は禁止されているはずでしょ!?」
「ルイズ、禁止されているのは、貴族同士の決闘のみだよ。使い魔と貴族の間の決闘なんか、誰も禁止していない。ましてやゴーレムとならなおさらね」
「で、でも・・・だからって・・こいつはっ」
スッ…
とルイズが続けて言おうとしたところを、ガンマは左手で制す
「が、ガンマ・・?」
「ソノ決闘、オ受ケイタシマス。」
「ガンマ!?」
ギーシュはニヤリと笑い、くるりと体を翻して食堂の出口へ歩き出す
「ココデハ、ヤラナイノデスカ?」
「貴族の食卓を、ゴーレムの残骸で汚せるか。 ヴェストリ広場で待っている。 いつでも来たまえ。」
ギーシュの友人たちがわくわくした顔で立ち上がり、ギーシュの後を追った。 その中の一人はテーブルに残った、ガンマたちを逃がさないための見張りなのだろう。
だがそれよりも、騒がせてしまったことでシエスタの仕事の邪魔をしてしまったことに気づき、ガンマは謝ろうとシエスタのほうへ向く
「騒ガセテシマッテスマナイ、シエスタ。 ・・・シエスタ?」
シエスタがぶるぶると震えながら、ガンマを見つめている。 気分でも悪いのだろうか?
「大丈夫? シエスタ」
「あ、あなた、壊されちゃう・・・・」
「エ?」
「貴族を本気で怒らせたら・・・ゴーレムのあなたでも・・・・」
シエスタは顔を青くさせて、だーっと走って逃げてしまった。ガンマは突然逃げてしまったシエスタを首をかしげそうになりながら見つめた。 貴族との戦いはそんなに危険なのだろうか? たしかに魔法が使えないシエスタにとっては魔法が使える貴族は武器を所持した人間と同じなのだろう。 それなら恐れるのは仕方がない。
そう考えていると、後ろからルイズが怒鳴ってきた
「あんた! 何考えてんの!! 私の言うことを聞かないで、何で決闘を受けたのよ!!」
「メイジノチカラヲ知ル、イイ機会ダト思ッテ…」
「あんたは・・どこまでバカなのよ。 ギーシュをあそこまで怒らせちゃったら、もうあんただけが謝っても許してなんかくれないわ! 私も一緒に謝るから、決闘なんか止めなさい!」
「デモ・・」
「でもじゃない!! 聞いて・・・あのね?いくらあんたが金属で出来てても、絶対に勝てないし、運がよくても腕が取れるか、下手をすればバラバラにされちゃうのよ! あんたみたいな・・・普通のゴーレムなんかよりも貧弱なあんたじゃ勝負が見えてるわよ! その右腕なんかじゃ対抗すらできないわ!」
「・・・・」
「お願いだから、私の言うことを聞いて! もしアンタが壊れたりしたら・・!」
ピンクの髪を揺らしながら必死にガンマに言い続ける。
「・・・ルイズハ、ボクノ事ヲ、弱イト思ッテル?」
「当たり前でしょ! あんたはどう見たって戦闘向けには見えないし、第一その右腕だって武器にしちゃショボすぎるわよ! だいたい、あんたに勝てる見込みなんて・・・」
「ルイズ」
教室のときのようにルイズの頭に優しく手を乗せ、落ち着かせるようにそっと撫で…ルイズの目線に合うように足を曲げて視線を下げる。
ルイズは言葉を遮られ、ただじっとガンマの綺麗な緑の目を見つめた
「ボクヲ信ジテ」
「・・・!」
緑のカメラアイで見つめ、そうルイズに言うと立ちあがり、ルイズとガンマのやり取りを見ていたギーシュの友人の一人に近づく
「ヴェストリノ広場ハ、ドコデショウカ?」
「こっちだ、ゴーレム」
友人の一人は顎をしゃくって案内し、ゴーレムはその後をついていく
ルイズは立ち尽くしたままガンマが行ってしまうのを見送ると、すぐさま我に返り苛立たしげに頭を抱える
「・・・ああもう! 勝手にしなさいよ!!」
ルイズは止めるのを諦め、ガンマの後を追いかけた。
「・・・・安全装置。解除」
ジャコンッと右腕のレバーを引き、戦闘可能状態にする。
――――ガンマはこの世界で始めて、元の世界ではなかった、魔法を使うメイジとの戦いを経験することになる